「みりん(本みりん)」がないときの代用レシピを検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】

2023/04/02

レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。

でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!

今回ご紹介するのは「みりん」の代用アイデア。

「みりん」は煮物や照り焼きなどの和食には欠かせない基本調味料で、料理にやさしい甘さやコクを加えたり、テリやツヤ出し、肉や魚の臭み消し、煮崩れを防いだり、味の染みこみをよくしたりと幅広い効果を持っています。

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、「みりん」の代用アイデアをレシピつきで紹介してもらいます。

管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとして...

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「みりん」の原材料は?

「みりん」と呼ばれるものには「本みりん」「みりん風調味料」「発酵調味料」の3種類があります。

「本みりん」は、古くから使われてきたもので、もち米、米麹、焼酎や醸造アルコールなどを使って熟成させたものをしぼってつくられます。塩分は含まれず、40%以上のエキス分(糖度)と15%以下のアルコールが含まれています。米由来のブドウ糖やオリゴ糖が多く含まれ、まろやかな甘みが特徴。

「みりん風調味料」は、「本みりん」の調味効果を追求し、水あめなどの糖類、米、米麹、酸味料などを使ってつくられていて、アルコールはほとんど含んでいません(1%未満)。

「発酵調味料」は、みりんタイプ調味料や加塩みりんとも呼ばれ、「本みりん」に食塩を添加して飲用には向かないように調整されています。そのため、酒税がかからず安価で調理用として利用されています。アルコールは「本みりん」ほど高くないものもありますが、塩分は1.5%以上含まれています。


今回の記事では、上記3種類あるみりんの中から「本みりん」の代用レシピについて、検証していきます。

「本みりん」の代わりになる調味料は?

調理時の「みりん」の効果は、主に「アルコール」と「ブドウ糖やオリゴ糖などの糖類」によるものと考えられています。

そのため、「本みりん」の代わりにみりん風調味料を使うと、アルコールによる効果が期待できず、発酵調味料を使うと塩分が強くなってしまう、という可能性が……

「みりん風調味料」を使って「本みりん」のように料理を仕上げる場合は、日本酒などのアルコールを加える、「発酵調味料」を使う場合はほかの塩分を含む調味料の使用を減らす、などの工夫で代用することができるといえるでしょう。

何種類ものみりんを持ち合わせているご家庭は少ないと考えられるので、本記事ではほかの調味料による「本みりん」の代用について検証することにしました。

以下、筆者の自宅にあった調味料でつくれる代用レシピをご紹介します。

【1】日本酒+砂糖(上白糖)

【2】日本酒+蜂蜜

【3】日本酒+メープルシロップ

【4】日本酒+オリゴ糖シロップ

【5】白ワイン+砂糖(上白糖)

【6】白ワイン+蜂蜜

【7】白ワイン+メープルシロップ

【8】白ワイン+オリゴ糖シロップ

日本酒は料理用のものではなく特別本醸造という、アルコール15%の飲用のものを使用しています。それ以外でクセの少ないお酒として白ワインを選びました。

白ワインは、やや甘口でアルコール9%のもの。砂糖については、上白糖以外にも三温糖やグラニュー糖などもありましたが、いずれもショ糖が多く含まれているため、一般家庭で使われている可能性の高い上白糖に絞りました。

メープルシロップやオリゴ糖シロップは、あまり常備されていないかもしれませんが、オリゴ糖が含まれていることから比較対象として取り入れています。

つくり比べてみた結果……

今回の比較に使用した「本みりん」は、エキス分が14%含まれていました。エキス分は糖度の目安になりますが、糖の種類によって甘さの感じ方が異なるため、今回は調味料の濃度調整には参考としていません。

その代わり、砂糖や甘味料の置き換えの目安とされている数値を応用し、お酒と合わせる配分を調整しています。

上白糖1に対し、はちみつ0.8、メープルシロップ1.5、オリゴ糖1.2倍容量で合わせています。

画像左中央が「本みりん」、上段左から順に【1】~【4】、下段左から【5】~【8】の混ぜ合わせたものを並べてみました。

見た目では、蜂蜜やメープルシロップを使ったものが似たような褐色をしています。混ぜ合わせやすさは、オリゴ糖シロップ、メープルシロップ、蜂蜜、上白糖の順となっており、上白糖は常温のお酒に溶かす場合、粒が溶けにくく1分ほどかき混ぜる必要がありました。

味見をしたところ、舌に残る強い甘みから、クセのあるもの、あっさりとして口に残らないものなどの差が感じられました。


今回は、煮崩れやすさ・テリやツヤ・臭み消しなどの効果を比較するために、これらの「みりん」で「かぼちゃの煮物」と「豚肉のみりん漬け焼き」をつくることに!

比較結果は、次の通りです。

「かぼちゃの煮物」をつくる場合

<材料>
・かぼちゃ… 50g
・みりん… 4g
・醤油… 4g
・だし汁… 30ml

<作り方>
かぼちゃを切り分ける。
鍋に全てを入れ、火にかける。
沸騰したら落し蓋をし、中火で5分煮たら火を消し、粗熱が取れるまでそのまま置く。

※少量調理のため、鍋に小さなアルミカップを並べて、それぞれを分けながら一斉に調理しました。

画像は、つくったうちの一部をそれぞれ取り出して並べています。

器へ盛りつける際に煮崩れが気になるものはありませんでした。見た目の違いも特に感じることはなし。味に関しては、わずかに甘さに違いが感じられました。

「本みりん」がほどよい甘さを感じるのに対し、【3】【4】【7】【8】は控えめな甘さのやさしい仕上がりになりました。そのほかは、「本みりん」に近いほどよい甘さとなっていました。

煮崩れを防ぐ効果は、アルコールの働きとされているので、今回はどの「みりん」も煮崩れが見られなかったのだと推測できます。また、甘さの違いについては、今回使用したメープルシロップやオリゴ糖シロップの甘味がやや少なめだった可能性が考えられます(※)。

※糖分の甘味は、強い順に、果糖、ショ糖、ブドウ糖、オリゴ糖となっています。オリゴ糖を多く含むほど、甘さの感じ方は弱くなるといえます。同じ名称で販売されていても、メーカーや製造方法によって成分に差があります。

「豚肉のみりん漬け焼き」をつくる場合

<材料>
・豚ロース薄切り肉… 7g
・みりん… 2g
・濃口醤油… 1g
・油… 1g

<作り方>
肉を切り分け、「みりん」、濃口醤油に1時間漬けておく。
熱したフライパンに油を広げ、汁気を切った肉を並べる。
肉の両面の色が変わるまで、裏返しながら焼く。

画像は、つくった全量を並べています。

テリやツヤはどれも同じくらいでしたが、【2】の焼き上がりが一番早く、短時間で取り出したにも関わらず焼き色が一番濃くなっていました。日本酒と蜂蜜の糖分が加熱によって褐変反応を強く起こしたのだと考えられます。豚肉の臭いについて気になるものはなかったので、どれもアルコールの働きによって臭みが抜けていたようです。

焼いた直後の温かいうちは、「本みりん」→【2】→【1】の順にやわらかいと感じましたが、冷えてからは【2】以外は硬さを感じました。【2】に含まれる蜂蜜には、タンパク質を分解する酵素が含まれているため、その働きによって肉の繊維がほぐれ、冷えてもやわらかさを維持していた可能性があります。また、【1】に含まれる上白糖(砂糖)には保水性を高めて加熱後のパサつきを抑える作用があることから、やわらかさに影響を与えたと考えられます。

日本酒と白ワインでは、日本酒の方が2倍ほど糖質を多く含み、アルコール度数も高いことから、白ワインを使ったものよりも肉をやわらかくする働きが強かった可能性があります。

なお、テリやツヤに関しては、本来「みりん」を料理の最後に加えることで効果が得られるため、今回の検証では再度「みりん」を加える必要があったといえます。そうすれば、はっきりと「みりん」との差が見られたかもしれません……

結論……本みりんの代用に最適な組み合わせは2パターンあり

アルコールと糖類の組み合わせによって、「本みりん」の代用とすることは可能。ただし、「本みりん」がつくられる過程で生まれる、米由来のアミノ酸、有機酸、香気成分などは代用みりんに含まれないため、本来の「本みりん」の効果を100%得られるものではありません。

代用とする場合は、できるだけ「本みりん」のアルコール度数に近いお酒(15%ほど)が望ましく、砂糖や蜂蜜といった一般家庭で使われている甘味のある調味料を組み合わせることでも、「本みりん」に近い効果を期待することができると考えられます。

以上を踏まえて、「本みりん」がすぐに手に入らない場合の代用としては

【1】日本酒+上白糖などの砂糖
【2】日本酒+蜂蜜

の組み合わせをおすすめします。

代用みりんの楽しみ方は?

「本みりん」は発酵させたものなので密封して長期保存が可能ですが、代用みりんの場合は長期保存に向かないため、早めに使い切る必要があります。

代用みりんの使い方としては、味噌汁の仕上げに少量を混ぜて風味を加えたり、わからないくらいほのかな甘味を加えることで味を複雑にしておいしさを足すことができます。

また、カレーやチリソースなどの辛味が強い料理に加えると、シャープな辛味を落ち着けてくれて、食べやすくすることもできるのだとか。和食に限らず、トマトとの相性がいいのでイタリア料理などの洋風料理とも組み合わせてみても◎。

そのほか、「本みりん」と同じように、アルコールを煮切ることでシロップとして使うことができるので、スイーツに応用してみるのもおすすめです。

代用みりんに使用した日本酒や白ワインも、もともとはそのままお酒として飲むことも可能。質の良い「みりん」も、リキュールとしてカクテルに使われることもあるので、炭酸水+柑橘類(レモンやオレンジなど)でサワーにしたり、お湯割りやロックでシンプルにアルコール飲料として楽しむこともできます。

ぜひ、新しい使い方も取り入れ、「みりん」を活用してみてはいかがでしょうか?


■記事監修/執筆・・・

管理栄養士・ゆかりさん

管理栄養士、食生活アドバイザー。4歳女児のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとしても活動。

参考サイト

 
 

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