お菓子作りには欠かせないベーキングパウダー。久しぶりにお菓子を作ろうとしたけど開封後、時間が経ってしまっているけど大丈夫かな、他の材料で代用できないかな、と思ったことはありませんか。
今回は、ベーキングパウダーの役割、家にあるベーキングパウダーが使えるか調べる方法、代用品になりそうな食材を使ってマフィンを作り比較しました。

ベーキングパウダーの役割
ベーキングパウダーとは、膨らし粉(ふくらしこ)とも呼ばれ、パンや焼き菓子に使われる膨張剤の1つで、その役割は生地を膨らませることです。市販のベーキングパウダーは一般的に「ガス発生剤」「酸性剤」「遮断剤」が混合されています。
「ガス発生剤」が水分とふれたり熱を加えられることで発泡し、「酸性剤」がその反応を促進し、発生した二酸化炭素のガスによって空気を含んだふんわりとした食感に仕上げてくれるのです。「遮断剤」は保存中の反応を抑えたり、変質を抑える役割があります。
ベーキングパウダーは「重曹」で代用可能?
ベーキングパウダーのキモとなるのは「ガス発生剤」の炭酸水素ナトリウム。じつはコレ、単体で食品素材として販売されているのをご存じでしょうか?
山菜のあく抜きなどにも使われる「重曹」の成分こそ、炭酸水素ナトリウムなのです。では、ベーキングパウダーの代用には重曹を使えばいいのかというと、そんな簡単は話ではありません。
重曹単体でベーキングパウダーの代用をしようとすると、仕上がりに以下のような差が出てしまうのです。
・生地の色が黄色っぽくなる
・独特の苦味や塩味を強く感じることがある
・もっちりとした重い食感になる
代用するのであれば、やはり「酸性剤」も含まれた食材を選んで、よりベーキングパウダーの仕上がりに近づけたいところです。
ベーキングパウダーの賞味期限
ベーキングパウダーの賞味期限は未開封の場合、パッケージに表示されている通りですが、開封後は半年を目安に早めに使い切りましょう。
また保存する際は常温で保存します。冷蔵庫で保存すると、取り出す度に温度差で結露してベーキングパウダーに水分が反応してしまいます。水分に反応することで膨らませる力が弱くなってしまうので常温保存がおすすめです。
家にあるベーキングパウダーが使えるか調べる方法
開封後は早めに使い切りたいですが、あまり出番のないベーキングパウダー。実は、まだ使えるかどうかを調べる方法があります。
ボウルに大さじ3のお湯を用意します。そこに小さじ1/2のベーキングパウダーを入れシュワシュワと泡が立てば使用可能です。泡立たない場合は品質が劣化して使えないので、新しいものを用意しましょう。
ベーキングパウダーの代用になるものはコレ!
具体的にどんな食材(素材)がベーキングパウダーの代用に向いているのか見ていきましょう。
じつはベーキングパウダーが含まれている素材というものは意外とあります。たとえば、ホットケーキミックスや天ぷら粉。ただし、ホットケーキミックスには香料や砂糖が加えられていることが多いので、それを考慮して砂糖などの甘味料を調整する必要があります。
仕上がりがしょっぱくなっても問題ない料理であれば、お好み焼き粉や、たこ焼き粉で代用するのもおすすめ。「ケークサレ」や「チーズスコーン」などをつくるときに使ってみると、だしの香りが効いて一味違うおいしさも期待できます。こちらも、あらかじめ食塩が加えられているので、パッケージなどの栄養成分表示にある食塩量を確認して加える調味料の量を加減してくださいね。
ここからは実際に、代用食材として挙げたものでベーキングパウダーを代用した場合、どんな違いが現れるのかを「マフィン」を作って検証してみます。
<材料>
・卵…10g
・砂糖…10g
・油…10g
・ヨーグルト…10g
・ベーキングパウダーの代用候補…20g
<作り方>
卵はよくほぐし、砂糖、油、ヨーグルトといっしょに均一になるように混ぜ合わせる。
粉類を加え、粉っぽさがなくなったら耐熱カップに注ぐ。
中まで火がとおるよう、180℃14分間オーブンで焼く。
ベーキングパウダー
まずは、基準となるベーキングパウダーです。小麦粉に2%の割合で配合して焼き上げます。
膨らみ方
膨らみ方は5点中4です。程よく、きれいに、バランスよく膨らんでいることがわかります。
味
味は5点中5です。ふんわり柔らかい食感で、ベーキングパウダーが味の邪魔をしていないので、シンプルでとてもおいしいマフィンに仕上がります。
重層
次は重曹を使います。重曹も膨らませる役割をもっているので、薄力粉に対して1%の割合を配合して焼き上げます。重曹はお掃除にも使用しますが、膨らまし粉として使用する際は必ず食用を使用してください。
膨らみ方
膨らみ方は5点中4です。ベーキングパウダーの半分の重曹を使用したのですが、ベーキングパウダーと同じくらいよく膨らんでいます。ベーキングパウダーよりも一つ一つの気泡が大きく弾力があります。ほんのり黄色味がかっています。
味
香り、味もほとんどなく、5点中5点です。外はかりっと焼きあがり、外かりっ、中がふんわりが好きなかたは、重曹が好みかもしれません。
ドライイースト
パン作りに欠かせない、ドライイースト。たしかに膨らませる役割は有りますが、発酵が必要だったり、イーストの香りだったり気になるところはありますが、ベーキングパウダーの代わりになるのでしょうか。ベーキングパウダーと同量の配合で焼き上げます。
膨らみ方
膨らみ方は5点中1です。発酵の時間をとっていないのでほとんど膨らまず、弾力のあるパンといった感じです。
味
味は5点中1です。見た目や香りだけでなく、味や食感もマフィンというよりあまり膨らまなかったパンに近い印象です。
ホットケーキミックス
ホットケーキミックスには、ベーキングパウダーやお砂糖、小麦粉も含まれているので、小麦粉の量で代用します。ホットケーキミックスを使用したお菓子のレシピも多いので参考にするといいでしょう。
膨らみ方
膨らみ方は5点中5でいちばん大きく膨らみました。ふんわりと、柔らかく、きれいに膨らみました。
味
味は5点中4です。ホットケーキミックスには、お砂糖も入っているので、甘さが加わり、いちばん甘いマフィンができ上がります。ホットケーキミックスをベーキングパウダーの代わりに使用する際はお砂糖の量を調整する必要があります。
薄力粉
薄力粉は、粘り気は出ますが、膨らませる性質はないので、ベーキングパウダーの代用というよりは、ベーキングパウダーと併せて使用していきたい材料です。ベーキングパウダーを入れないで焼いた場合、どうなるか見てみましょう。
膨らみ方
生地は全く膨らんでいないので0点です。やはり、生地を膨らましたい場合は、ベーキングパウダーやそれに代わる材料が必要です。ずっしり重くて甘い、塊ができ上がります。
味
味は5点中2点です。甘さがあっておいしいのですが、マフィンというより、膨らまなかったケーキという仕上がりになってしまいます。
ヨーグルト
ヨーグルトは、酸性なので重曹と併せるとベーキングパウダーの代わりとして使用できます。ただ、ここでは、小麦粉半分ヨーグルト半分を使用して焼き上げます。
膨らみ方
膨らみ方は5点中0点です。小麦粉同様、単独では膨らむ性質を持っていないので膨らみません。
味
味は5点中3点です。ヨーグルトの香りがするヨーグルトケーキが完成しました。ずっしり重く、マフィンではありませんがさっぱりしたヨーグルトケーキが仕上がります。
お好み焼き粉
お好み焼き粉には、小麦粉の他、ダシや塩、ベーキングパウダーが含まれているのでベーキングパウダーの代用というより、ホットケーキミックスと同様小麦粉の分量で代用して焼き上げます。
膨らみ方
膨らみ方は5点中5です。ホットケーキミックスと同様、焼き色もついて、ふんわりと大きく焼きあがっています。
味
味は5点中2です。ダシの香りがして、甘じょっぱい不思議なマフィンに仕上がりました。メーカーにより違いはあるかと思いますが少し塩辛いと感じたので、お惣菜マフィンやケークサレを作るときに使えそうです。
【×】炭酸水、泡立てた卵白、山芋は代用に不向き
WEBでベーキングパウダーの代用について調べると、炭酸水、泡立てた卵白、山芋などが取りあげられることもありますが、これらは正直どれもおすすめできません。
炭酸水の場合は、加熱によって炭酸が減少することはあっても増加することは考えにくく、泡立てた卵白や山芋は、そもそも違う作用でふんわりさせるため、炭酸ガスのようなはっきりした膨らみは期待できそうにありません(弱いふんわり感で問題なければ、代用しても◎)。
また、お好み焼きと原材料がよく似ているものにたこ焼き粉がありますが、ベーキングパウダーの割合はお好み焼き粉のほうが高いことがほとんどなので、もし両方お持ちの場合はお好み焼き粉で代用するのがおすすめです。
ベーキングパウダーの代用に余っている粉類を活用しよう!
ここまで、焼き料理をする場合のベーキングパウダーの代用に向いている食材を紹介しました。
今回は、あらかじめ重曹の性質がわかったうえで、デメリットを抑えるためにヨーグルトを使用しました。そのお陰で、黄色っぽくなったり、苦味・塩味が強いこともなく、食感のずっしり感も気にならない仕上がりとなりました。
このことから「重曹」を代用とする場合は、
・ヨーグルトなどの酸味や酢が入っている食材を少量加える(適量であれば酸味は残りません)
・食用の重曹を選ぶ(掃除用はNG)
・ベーキングパウダーの1/2量を目安に使用する
といった方法がおすすめです。
なお、ベーキングパウダーがあらかじめ含まれている「てんぷら粉」「ホットケーキミックス」「お好み焼き粉」などは、通常使用時よりもガスの発生が強くなる場合があるため、酸味や酢が入った調味料を加えるのは少なくしたほうがいいかもしれません。
今回のマフィンづくりにおいて、重曹を加えたものとホットケーキミックス・お好み焼き粉でそれぞれつくったものが同じ結果(焼き色、横割れの状態)になったのは、それが原因だと考えられます。メーカーによってベーキングパウダーの種類が違うため、必ずしも同じ結果になるわけではありませんが、レシピを選んだりアレンジする際の参考としてみてくださいね!
ご紹介した内容をもとに、ご家庭で余っている粉類を上手に活用してみてはいかがでしょうか?