「甜麺醤(テンメンジャン)」がないときの代用レシピを検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】
2023/05/02
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、誰しも一度は経験があるでしょう。
でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「甜麺醤(テンメンジャン)」の代用アイデア。
甜麺醤は中華料理のレシピに使われることが多く、ホイコーロー、北京ダック、麻婆豆腐などの調味料として使われたり、薬味として生野菜に付けたりしている調味料の一種です。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、甜麺醤の代用アイデアをレシピ付きで紹介してもらいます。
「甜麺醤」の原材料は?
甜麺醤は「中華甘味噌」とも呼ばれる甘味のある調味料で、伝統的なものは小麦粉を使用した生地に麹を加えて発酵させてつくられます。国内で製造されるものは、大豆を原料としてつくられていることが多くなっているため、本場の甜麺醤と違いがあるといわれています。
実際に、筆者の手元にあった甜麺醤の原材料を確認してみると、
・中華大豆みそ
・砂糖
・ごまペースト
・醤油
などが主に使われていることがわかります。
なお、中華大豆みそとは大豆、小麦粉、食塩などを発酵させた食品で、黒っぽい色と塩辛さが特徴となっています。
このことから甜麺醤の味を決める要素には、「中華大豆みそ」「ごまペースト」「醤油」のコクやうま味、砂糖の「甘味」が欠かせないといえそうです。
「甜麺醤」の代用になる調味料は?
前述したように、中華大豆みそがあれば、甜麺醤の代用にする手間が少ないことがわかりますが、常備している家庭が少ないと考えられます。
色や塩辛さが近いものには、米麹や麦麹を使わず豆麹で作られる豆味噌や、名古屋のご当地料理に多用される八丁味噌があります。ただし、これも一般的に常備されているとはいいにくいでしょう。(2022年みその種類別出荷数量で豆味噌は5%未満)
では、そういったもの以外で甜麺醤をつくりたい場合はどうすればよいでしょうか?
甜麺醤の味を決める要素の「コク」、「うま味」、「甘さ」のある食材を組み合わせることができれば、理論上は甜麺醤の代用ができるはずです。
代用食材の候補はいくつもあるのですが、筆者の自宅にあった食材や調味料のなかで甜麺醤の代用となりそうな食材は、以下のとおりです。
・米味噌(淡色辛みそ)
・濃口醤油
・オイスターソース
・ねりごま
・ごま油
・ピーナッツクリーム
・砂糖(上白糖)
・黒砂糖
・はちみつ
・みりん
これらの組み合わせを変えて、どれがいちばん甜麺醤としておすすめできるのかを検証してみました。
代用食材の実力は?
ここからは実際に、代用食材として挙げたもので代用甜麺醤をつくって検証していきます。
今回は、次のような6種類の組み合わせを考案しました。括弧内の数値は、実際につくった際の分量(g)となっています。(ごま油を除く)
【A】米味噌:濃口醤油:砂糖:ごま油(2.5:0.3:2:1滴)
【B】米味噌:はちみつ:ごま油(2.5:2:1滴)
【C】米味噌:砂糖:オイスターソース(2:1.5:1)
【D】米味噌:砂糖:ねりごま(3:1.5:1)
【E】米味噌:砂糖:ピーナッツクリーム(3:1:1)
【F】米味噌:黒砂糖:みりん:ごま油(3:2:1:1滴)
手元にあった甜麺醤の栄養成分表示をもとに、いずれも炭水化物と塩分量が近くなるように割合を調整しています。
また、コクには香りも関わると考えられることから、食材の香りが弱いのではと予想したものには適宜ごま油を加えています。
これら【A】~【F】をそれぞれよく練り合わせ、生野菜につけたり、炒め物に使って違いを比較してみることにしました。
代用甜麺醤が完成!
それぞれの代用甜麺醤ついて、見た目や味などを検証した結果は次のとおりです。
画像中央左が比較対象の「甜麺醤」、上段左から順に【A】【B】【C】、下段左から順に【D】【E】【F】となっています。
それぞれを味見した感想は、次の通りです。
【A】……見た目は茶色、味噌の風味をいちばんよく感じる、なじみのある味わい。
【B】……見た目は茶色、濃厚なコクや甘さが感じられる。
【C】……見た目は濃い茶色、強いうま味が感じられる。
【D】……見た目は甜麺醤に近い黒色、濃厚なコクが感じられる。
【E】……見た目は茶色、【D】とは異なった濃厚なコクと香りが感じられる。
【F】……見た目はやや濃い茶色、強いコクや甘さが感じられる。
いずれも分量を調整しただけあって、甘味や塩味はほぼ同じくらいでした。
生野菜につけて比較した結果……
今度は、生野菜(キャベツ)を食べやすい大きさに切り分け、代用甜麺醤を適量つけて食べ比べてみました。
基本的には、そのまま味見をしたときと同様の感想でしたが、筆者だけでなく家族も一緒に検証してみると個々のお気に入りが違うことがわかりました。
人気だったのは次の3種類。オイスターソースのうま味が強い【C】、ねりごまの濃厚なコクが感じられる【D】、黒砂糖の風味とコクが感じられる【F】という結果に。
代用甜麺醤をつくる際は、手元にある食材の組み合わせで選ぶのはもちろんですが、好みの食材に置き換えるとより個人としてのおいしさが増すのではないかと感じました。(例:【A】の砂糖を黒砂糖にする、【B】のごま油をねりごまにする、など)
また、商品ごとに味などが微妙に異なっていることからも、この記事で示した分量にこだわる必要はないといえます。ご自身で味見をしながら食材の量を増減し、お好みの代用甜麺醤をつくってみるのもいいと思います。
炒め物に使った結果……
つぎに、キャベツ、長ねぎ、豚肉を切ってにんにくとごま油で炒め、濃口醤油、酒、代用甜麺醤を混ぜ合わせて味付けするホイコーローをつくってみました。(一般的には豆板醤も使って辛味を加えますが、今回は家族全員で試食するため省いています)
すると、それまでとは違った結果に。
「どれもそれなりにおいしい」という感想しか出てこず、はっきりとした違いがわからなかったのです。
加熱したことによって代用甜麺醤の香りや風味が減少したからなのか、具材全体に絡まって舌で感じる濃度が薄まったからなのか……
(単に、具材に対しての使用量が少なかったということも考えられますが)
そもそも、甜麺醤をメインに味付けする料理は多くありません。基本的には、隠し味のように調味料の一部として使われ、甘味やコクを料理に加える役割がある甜麺醤。
今回のホイコーローにも、甜麺醤の原材料と同じ調味料が使われていたように、ほかの調味料と合わせて代用甜麺醤使う場合は【A】~【F】いずれも使用することができるといえそうです。
代用甜麺醤の結論
「コク」「うま味」「甘さ」のバランスがとれていれば、【A】~【F】のどの代用甜麺醤も使いやすいことがわかりました。
しいていえば、今回使ったねりごま。
筆者の手元にあったのは黒ごまだったのですが、色を近づけるためには効果的ではあったものの、白ごまに比べると少しごまの香りが強く感じられました。それに加え、白ごまのねりごまであれば、すっきりとした味わいが期待できるでしょう。(どちらも黒色色素成分のポリフェノール由来とされています)
そのため、こういった特徴を踏まえてねりごまの種類を選んでもいいかもしれません。
また、比較には用いませんでしたが、ご家庭に豆味噌や八丁味噌があれば、それを米味噌と置き換えることでより実際の甜麺醤に近い味わいを再現することが予想できます。
選べるのであれば、ぜひ代用甜麺醤はそれらでつくってみてほしいと思います。
代用甜麺醤の楽しみ方は?
市販の甜麺醤は密封して冷蔵庫で長期保存が可能ですが、代用甜麺醤の場合は長期保存に向かないため、早めに使い切ることが大切です。
代用甜麺醤を消費するには、中華料理全般に使うのはもちろん、通常の味噌としての使い方もあります。
たとえば、味噌汁に使う味噌の一部と置き換えたり、じゃがバタ―に添えるなど、おなじみの料理にコクやうま味をプラスすることも可能。(味噌汁2人分で甜麺醤は小さじ1/2~1が目安、だしに中華スープの素を使うのも◎)
いずれも甜麺醤の甘味が強く出過ぎない程度、あくまでも隠し味として使う方が最初はいいかもしれません。
使い慣れてきたら使用量を増やしたり、いつも作っているほかの料理にも少しずつ加えるようにし、味の変化を楽しむのがおすすめです。
ぜひ、さまざまな料理のおいしさアップに、代用甜麺醤を活用してみてくださいね!