【管理栄養士が解説】「紅麹(べにこうじ)」とは?含まれている食品や安全性などについて解説
2024/03/28
小林製薬が販売している機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」による健康被害の報道が続いています。それに伴って、商品名にある「紅麹(べにこうじ)」原料への感心も高まっているようです。
この記事では、管理栄養士でライターのゆかりさんに、「紅麹」について詳しく解説してもらいます。
今回の健康被害に関して現時点でわかっていること
まず、今回の小林製薬の製品による健康被害について、メーカーのニュースリリースおよび、各種報道情報を元にまとめます。
■健康被害の状況
小林製薬が販売している機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に、腎疾患等の健康被害が発生。報道によれば、2024年3月28日11時現在、同食品を摂取していた人のうち4人の死亡と、100人以上の入院が確認されているとのことです。
■健康被害の原因
記事の中でも後述しますが、「紅麹」をつくる際に用いられる「ベニコウジカビ」には腎機能を低下させる「シトリニン」という毒素を生む種類のものがあり、欧州においては以前から「紅麹を由来とするサプリメント」の摂取に対する注意喚起が行われていました(※1)。
そのため、一般的に食品などで利用される紅麹には、人体に悪影響を及ぼす毒素をつくらない種類が選ばれて使われており、報道によれば今回の健康被害を起こした製品および使用されている小林製薬製造の紅麹原料からもシトリニンは検出されていません(※2)。
小林製薬はニュースリリースで「一部の紅麹原料に当社の意図しない成分が含まれている可能性が判明」したと説明していますが、2024年3月28日現在、健康被害を引き起こした直接の原因は明らかになっていません。
■自主回収対象商品
2024年3月28日時点で小林製薬が発表している自主回収対象製品は以下のとおり。
<小林製薬の通信販売を通じて購入>
紅麹コレステヘルプ 15日分・30日分
<ドラッグストアなどの店舗やECサイトにて購入>
紅麹コレステヘルプ 20日分
ナイシヘルプ+コレステロール 地区限定品(石川、富山、福井県) 28個販売済
製造番号:23508 ※製造番号は製品裏面の左下に記載
ナットウキナーゼ さらさら粒GOLD 地区限定品(広島、山口県) 41個販売済
製造番号:J301 ※製造番号は製品裏面の左下に記載
また、小林製薬製造の紅麹原料は同社以外でも扱われており、政府の発表では170社以上あることがわかっています。すでに一部の会社は小林製薬製造の紅麹原料を含む商品の自主回収を発表しており、今後も増えていくとことが予想されます。
「紅麹」とは?
紅麹とは、蒸した米などにベニコウジカビ(紅麹菌)が繁殖したものを指します。
紅麹は鮮やかな赤色をしているという特徴があり、日本ではおもに沖縄県の名産である「豆腐よう(別名:紅豆腐)」の原料に用いられてきた経緯があります。
豆腐ようは18世紀ごろから琉球王朝の上流階級で食されており、ねっとりとしたチーズを思わせるような食感やウニのような風味があり、現在では酒の肴やお茶請けとして地元の人に親しまれている食品です。
ちなみに、中国や台湾では紅麹をつかって酒類や調味料を製造したり、滋養食や薬膳料理としてもっと古くから食されてきたのだとか。16世紀に書かれた中国の書物には、すでに内臓などへの効果が記述されており、最近の研究からも紅麹がつくり出す成分に「血中脂質低減作用(※1)」、「血圧降下作用(※2)」などが報告されています。
そういったことから、食品のみならず機能性表示食品やサプリメントなどへも利用されるようになっていったのです。
先述のとおり、紅麹は長い間、食品として食べられてきました。しかし、食品添加物として利用される紅麹がそれとまったく同じかというと、そうではありません。
※1……モナコリンKという成分が関与(海外では別名ではあるものの、医薬品として認められている)。
※2……GABAが関与。
食品と食品添加物では成分の種類が異なることも
食品と食品添加物で使用される紅麹では、健康効果を期待して添加しているかどうかという点や、製造工程や原料にも違いがあるのです。
昔からの培養方法である紅麹菌を蒸した米に植え付けて繁殖させる「固体培養法」の場合、発酵期間が長くかかる反面、健康効果を期待できるさまざまな成分が得やすいという特徴があります。
それに対し「液体培養法」では、産業用の液体培地を利用して短期間で発酵を済ませることができます。ただし、「固体培養法」と比べると得られる成分の種類が限られてしまうのだとか。そのため、食品添加物として一部の成分のみを取り出すときに使われているようです。
このように、「紅麹」が含まれているといっても、まったく同じものではないことがわかります。
紅麹が含まれる商品の表示は?
そんな紅麹は、発酵する際にうま味もつくり出します。そのため、食品のおいしさを高める調味料の原料として使われることもあります。ただし、その場合、加工品の原材料名には「発酵調味料」とだけ記載され、紅麹が使用されているか判別はできません。
また、紅麹の鮮やかな色は加工中に失われにくく、菓子類や水産加工食品、食肉加工品、パン、麺などの色付けとしても幅広く利用されています。
なお、着色などの目的で添加物として食品に使用される場合、原材料表示欄には「/」のあとに続いて、つぎのように表示することが義務付けられています。
・ベニコウジ色素
・モナスカス色素
・着色料(ベニコウジ)
・着色料(紅麹)
・着色料(モナスカス)
いずれの表示であっても、紅麹が含まれていることを意味しているのです。
紅麹の安全性は?
紅麹を利用する際に問題となるのが、ベニコウジカビがつくり出す毒素について。ベニコウジカビの毒素として知られるものに、腎機能を低下させる「シトリニン」があります。
そのため、一般的には食品などに利用される紅麹には、人体に悪影響を及ぼす毒素をつくらない種類が選ばれて使われているのだそうです。
まとめ
今回問題となっているのは小林製薬が製造した紅麹原料であり、紅麹自体の危険性を決定づけるものではありません。
そのため、むやみにすべてを避ける必要はないと筆者は考えますが、一方で小林製薬製造の紅麹原料を扱った商品が広範にわたっている状況も明らかになっていますので、メーカー各社の発表には注視していく必要があるでしょう。