男の手のひらに書かれたストップ

にわかに増えている女性から男性へのDV被害。自身が“加害者”にならないために知っておくべきこと

2022/07/28

妻から夫に対するDV被害の実情について、「恋人・夫婦仲相談所」の所長である三松真由美さんに解説してもらいました。

会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、We...

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DV相談件数、男性の割合ともに増加傾向

「夫のモラハラ」を相談される妻の方々が増加傾向だとコラムや本に書いておりましたが、いや、逆の相談もコロナ禍からジワリと目についてきた実感があります。モラハラを通り越してメンタルDVじゃないかと思える報告もあります。

内閣府男女共同参画局の集計によると、配偶者からの暴力(DV)に関する警察への相談件数は年々増える傾向が続いています。特に2020年は前年の1.5倍近い相談が寄せられました。

相談が急増した原因としては、コロナ禍によって家にいる時間が増えたり、多くの人が経済的・心理的に厳しい状況に置かれたりして、それが弱い者への暴力につながったことなどが考えられます。また、2020年から従来の電話・来所の相談窓口に加え、チャットやメールでも相談を受け付ける「DV相談+」が開設されたことで、相談しやすい環境が整ったことも増加が目に見える一因かもしれません。

相談者の男女比については、警視庁が公開しているデータ「配偶者からの暴力事案の概況」にあるDV事案の分析の相談者の性別を参照すると、件数の上下はあるもの男性の比率は確実に増加傾向にあることがわかります。

女性から男性へのDVの場合は単純な暴力だけではなく、精神的なDVも多いのが特徴。妻にはそのつもりがないのに、実は夫はDVを受けていると感じていることも少なくありません。人の捉え方はそれぞれ。言葉ひとつがDVになり得ます。

自分自身が加害者にならないよう、妻から夫へのDVの特徴や気を付けるべきポイントについて知っておきましょう。

妻からのDVその1:精神的DV

takasuu/gettyimages

モラハラは夫から妻に対して行われるものという認識が強いですが、当然その逆もあります。そしてモラハラは精神的DVの入り口にあたるものでもあるのです。

例えば暴言を吐く、怒鳴る、人格を否定するような発言をする、本人の嫌がることをくり返し行う、理不尽に非難する、脅す、命令口調で話す、無視する、人前で恥をかかせる、他人の面前で馬鹿にしたり、貶めたりする、などがあります。

また、夫の私物を勝手に壊したり捨てたりする、自殺をほのめかして心理的な負担を与える、家族内で仲間はずれにする……なども精神的DVにあたります。

夫婦仲相談所で相談に来られる男性で「妻と子どもたちからの視線が冷たい。夕食の時間をわざとずらされる」という相談が少なくありません。これはまさに“家庭内仲間はずれ”のパターンです。

さらには子どもに対して「お父さんみたいに稼げない大人になっちゃダメ」「お父さんよりいい大学に行かないとね」などと父親の悪口を言ったり、子どもから父親に暴言を言わせたりするといった行為も、相手に精神的なダメージを与える立派な暴力です。

性行為の求めに応じないと不機嫌になったり、相手を言葉で責めたりする行為。「できないなんてEDじゃないの?病院で薬もらってきて」という言葉も相手に強烈な屈辱感を与える危険性があります。

妻からのDVその2:経済的DV

男の手を握り、空の財布を閉じます。金融危機、倒産、お金なし、悪い経済概念。
Suriyawut Suriya/gettyimages

家計を妻が管理している場合は、夫にお小遣いを渡さないことなどが該当します。「あなたの昼ごはん代、400円にするね」など、気軽に何度もランチ代減額を行っていませんか?

相手が拒否しているのに高価なプレゼントを要求する、借金をさせる、勝手に多額の買い物をする、自ら借金を重ねるなども経済的DVにあたります。

妻からのDVその3:社会的DV

好奇心旺盛な若い女の子は、彼女のボーイフレンドが電話でテキストメッセージを覗く方法
Prostock-Studio/gettyimages

相手の人間関係を絶たせて、社会的に隔離してしまう行為です。具体的には友人や親族などに会わせない、SNS禁止、連絡をとらせないなど交友関係を制限する。あるいは、メールの内容などを監視したり、外で何をしていたかを逐一質問したりする。さらに外出を禁止するなど行動に制限を掛ける場合も社会的DVに該当します。

筆者は「束縛妻」と呼んでいますが、「妬(や)いてくれるなんて、かわいい妻だ」というレベルではなく、モンスター級の監視を続けるので、夫は窮屈、恐怖を感じています。

DVは自身にも起こり得る……そして、自身も起こし得る問題

自分の言動を振り返ってみて、思い当たる点のある方はいらっしゃいませんか。

「夫が大切にしているコレクションを勝手に処分した」
「『稼ぎが悪い』といつも不満をぶつけている」
「外出中は行動を逐一報告するように求めている」

これらはみなDVにあたると思ってください。

では、DV加害者にならないためにどうしたらよいのでしょう?気を付けるべきポイントを4つ紹介します。

1.相手を自分の思う通りに変えようとしない
人にはそれぞれ個性があり、ひとりひとり違います。たとえパートナーであっても自分の思いどおりにはならないと認識しましょう。自分が変えられるのは夫ではなく、自分自身だけであることを肝に銘じてください。

2.相手も自分も大切にする
学歴が上、実家が裕福など、人は他者と比較して、自分を優位に置こうとしがちです。マウントを取りたがる生き物です。しかし、そんな行為は不毛です。まずは自分を褒めて自分自身を好きになることに努めましょう。

「私って節約料理うまい」「私って仕事を完璧にこなしてる」「私ってママ友多い」「私ってポイ活でやりくり上手」など身近な小さなことでいいのです。

それができると、相手のこともあるがまま受け入れて大切にする気持ちが生まれるでしょう。


3.相手に執着しない
「この人は私のもの。理想の夫でいてほしい。一生離婚なんかしない」など、過剰な思い入れがあると、言動を監視したり、支配したりしたくなります。でも、それは愛ではなく執着。勘違いしないことが大事です。

「うまくいかなければこのひとは去っていく、それはしょうがない」くらい、気持ちを楽に持っておくのがよいですね。


4.怒りの感情をコントロールすることを心掛ける

暴力は怒りの感情とともに生まれます。怒るな、というのは難しいかもしれませんが、怒りの感情を抱いたとしても、そこでちょっと立ち止まって冷静になる癖をつけましょう。

怒りの感情が湧いたら、深呼吸する、とりあえずその場から離れる、好きなアーティストの歌を聴く、お笑いの動画を観る、など自分なりに怒りの感情をコントロールする方法を見つけてください。


「DVなんてニュースでしか見かけない人ごと」と思わずに、自身にも起こり得る……そして、自身も起こし得る問題と捉えましょう。


◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

三松真由美さん最新刊「夫とだけ、感じません」発売中

出典:Amazon

 
 

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