孤立したパステルピンクの背景に乳がん意識と聴診器のピンクシルクリボンシンボルのトップビュー写真

【ピンクリボン月間】『35歳で乳がんに』今、伝えたいこと

2023/11/07

日本人の2人に1人ががんになる時代(※1)。すべてのがんのうち、日本女性にもっとも多いのが乳がん(※2)。いっぽうで、がんを早期に見つけ、治療を受けられれば、10人のうち9人は助かるとも言われています(※3)。30代でがんを経験した人にお話を聞きました。

(※1)国立がんセンター「がんの統計」2020年
(※2)国立がんセンター「がんの統計」2022年
(※3)日本対がん協会「全がん協加盟施設の生存率共同調査全がん協部位別臨床病期別5年相対生存率」2022年

ピンクリボン月間って?

ライトグレーの背景にピンクリボン、トップビュー。乳がん啓発コンセプト
Liudmila Chernetska/gettyimages

乳がんに関する正しい知識の普及や、検診を通じた早期発見・治療の啓発を目的とし毎年10月1~31日におこなわれる世界的キャンペーン。また毎月19日を「ピンク(19)の日」とし、月1回のセルフチェックを思い出すきっかけをつくる活動もしている。

35歳で乳がんになった

<教えてくれた人>
宝あり子さん(関東在住 38歳)
40歳の夫と小3・年長の女の子、猫1匹と暮らす。大学卒業後新卒で入社したIT企業で10年余り働き、がんがわかり休職→退社。今はパート社員として企業のweb運用を担当。マンガとアニメが大好きで、インスタとブログで子育てや乳がん体験を発信。ブログは「ひよっこ一家備忘録」。

HISTORY

• 2017年
2人目出産後に復職し、仕事と家事育児でテンパる
• 2020年
乳がん発覚(ステージⅡ。ホルモン陽性、HER2陽性。左脇リンパ転移あり)。術前抗がん剤治療開始
• 2021年
手術(左胸全摘、左脇リンパ節切除)→分子標的薬治療→ホルモン治療(今も継続)。IT企業を退職しパート社員に
• 2022年
ピンクリボンアドバイザー資格を取る。猫を飼い始める

乳がんがわかった人に寄り添いたいと考えピンクリボンアドバイザー(※)に。

あり子さんが学んだテキスト

※乳がんについて学んで認定試験を受け、早期発見のための検診の大切さなどを伝えるボランティアをおこなうための民間資格

「良性」と言われていたしこりが、たった半年でがんに変わっていた

趣味はマンガを描くことで、以前からブログやインスタグラムで子育てマンガを発信していたあり子さん。彼女が「良性ですが左胸に小さなしこりがあるので今後は毎月セルフチェックをしてください」と医師に言われたのは、当時勤めていた会社の人間ドックの再検査のあと。触診ではわからないしこりがエコーとマンモグラフィで見つかったのです。しかしその頃、世の中はコロナ一色。自分のことはすっかり後回しで、セルフチェックも忘れていました。そこに乳がん発覚。「ドクターの『いま治療すれば治ります。がんばりましょう!』という言葉に勇気をもらい、治療を始めました。それから3年。「抗がん剤の副作用や術後の痛みは覚悟していましたが、腕を動かせるようにするためのリハビリが思いのほかつらかったです」。そんな体験を含め、同じ病気の人の助けになりたい、と乳がん体験をマンガで発信し、「ピンクリボンアドバイザー」の資格もとりました。「乳がんは自分の働き方や生き方を見直すきっかけになりました。今が一番自分らしく生きられていると思います」。

育児・仕事、それからコロナでバッタバタセルフチェックを忘れていたら……

「半年ぶりのセルフチェックで気づいた左胸の2cm程度のしこりは『何かある?』けどしこりと自己判断できないくらいの小さな違和感で、検診の予約がなければ病院に行かなかったかもしれません。ここでがんを見つけられてよかったけど、毎月セルフチェックしていたらリンパには転移しなかったかも……。『まさか私が』『まだ若いから』と思わず、セルフチェックとがん検診はしてください」。

治療を優先し「妊よう性温存療法(※)」は受けず3人目の妊娠はむずかしいため、代わりに猫のはー君を迎えた(※)子どもを授かる可能性を残す目的で、がん治療の前に卵子などの凍結保存をおこなう治療

抗がん剤治療が始まる前の日、「ママはがんなの」と娘たちに伝えた

「子どもは大人が何かを隠していると敏感に察するので、私ががんであることを隠すのではなく正直に伝えることにしました。病院のソーシャルワーカーさんによると、子どもに伝えるときに大事なのは、誰のせいでもない(not Caused)、がんという言葉を使う(Cancer)、伝染はしない(not Catchy)の3つの“C”……とはいえ自分でも気持ちの整理がつかず、娘たちに言えたのは抗がん剤治療開始の前日でした」。

脱毛には落ち込んだけど、予想外の「イイこと」もあった

「抗がん剤の副作用でゴッソリ抜けた髪の束を見るたび落ち込んで泣きそうになりましたが、坊主生活に慣れると、面倒くさがりの私にはイイことも。頭は体と一緒に石けんで洗えるし、秒で乾く。手足のムダ毛も抜けてツルツルになって処理が不要に(治療が終わったら髪とともにまた生えてきましたが)。1つ5千円くらいで買ったウィッグは娘たちに大好評でした」。

元コスプレイヤーでウィッグ経験あり。気になっていたインナーカラーのウィッグも手に入れてテンション爆上がり

手術で左胸をとった。温泉に行くときは、さて、どうする?

「お風呂で胸を隠す入浴着を買おうと思ったのは周りの人を動揺させない配慮のつもりでしたが、手で隠せばいいんじゃ?と思えてきました。がんサバイバーが多い世の中、胸をとった人や傷がある人もいる。いろんな人がいるのが当たり前になったらいいと思うし、娘も「そのままでいい」と言ってくれるので今度温泉に行くときは何も着ないで入ってみます」。

参照:『サンキュ!』2023年11月号「乳がんになった私たちがいま、伝えたいこと」より。掲載している情報は2023年9月現在のものです。取材・文/宇野津暢子 まんが/宝あり子 編集/サンキュ!編集部

 
 

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