ピンクの背景に世界乳がんデーのコンセプトとピンクのリボン

【ピンクリボン月間】『40歳で乳がんに』検診は「安心」をくれる

2023/11/10

40歳で乳がんになりました。乳がんを告知されたのは、6年ぶりの妊娠が確定した日のこと。治療をしながらの妊娠と出産、子どものお世話ができることの幸せなど、乗り越えた日々についてお話をうかがいました。

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<教えてくれた人>
棚田奈々江さん(長野県 44歳)
長野県出身。小学校時代の同級生の夫と小3の長女、3歳の長男と暮らす。服飾系の専門学校とヘアメイクの専門学校を卒業後、アパレル販売や結婚式場などで働いたのち結婚。子育てをしながら自宅でアイラッシュサロンを開いている。手仕事が好きで、今はソイキャンドル作りを勉強中。インスタは@nanae413_plume/

6年ぶりの妊娠が確定した日に乳がんを告げられた。最初の感想は「どうなっちゃうの?」

待望の第2子妊娠が確定し「おめでとうございます!」と産婦人科で言われた日の午後に、かかりつけの乳腺外科の医師から「実はよくない知らせがあって……」と電話を受けた奈々江さん。「私の母が44歳で乳がんになったこともあり、私は37歳から毎年、近所の乳腺クリニックで乳がん検診を受けていました。家でセルフチェックをしたとき、右胸の上の5ミリ程度のしこりに気づき、検診で医師に伝えましたが、まさかそれががんで、しかも同じ日の午前と午後に妊娠と乳がんを告げられるとは思いませんでした。がんを告知された瞬間は自分の体のことは頭になく、ただ赤ちゃんが心配でした」。
その後、治療しながらでも妊娠を継続できると医師に言われてからはふつふつとパワーが湧いてきて、「治療してママにもなる」と決意。自分と赤ちゃんと医療を信じ、赤ちゃんに不安が伝わらないように、闘病中も気持ちはできる限り“普通の妊婦”として過ごすようにしました。そして無事出産。「息子は今3歳。元気いっぱいに育ってくれています」。

HISTORY

•2020年
妊娠を告げられた日に乳がん発覚(ホルモン陽性、HER2陽性でステージはⅠかⅡ。リンパへの転移はおそらくなし。当時詳細がはっきりしなかったのは妊娠12週未満でCTとMRI検査を受けていなかったため)→手術(右胸全摘)→抗がん剤治療→出産→抗がん剤治療
•2021年
分子標的薬+ホルモン治療
•2023年
分子標的治療終了後、ホルモン治療をしながら経過観察中

コロナ禍での妊娠と乳がん宣告。いろんな感情が押し寄せたけれどとにかくひたすら大丈夫と信じた

「コロナの感染が拡大する中での闘病生活と妊婦生活は、振り返ってみれば人生の大事件が一気にやってきたような毎日でした。でも渦中にいるときは、医師の『治療しながら出産できる』という言葉をよりどころにしてひたすら『大丈夫』と思うようにしていました。ただ、平静を装っても体は正直。妊娠中の抗がん剤治療の後は緊張のせいか、お腹がカチカチに張ったこともありました」。

妊娠7カ月の奈々江さんと当時年長さんだった長女のまぁちゃん。

子どものお世話ができるって、すごく幸せなことなんだと思い知った

「出産後に再開した抗がん剤の副作用で強い倦怠感やむくみが出て、起き上がっているのがつらいときはありました。ですが、息子のお世話が大変だと思ったことはなく、むしろお世話ができる喜びをかみしめていました。まだ保育園の年長だった娘もミニお母さんのように手伝ってくれ、旦那さんも仕事が忙しい中、ずっと気にかけてくれました。家族みんなに『ありがとう』の気持ちでいっぱいです」。

少し小さく生まれてNICUに入っていた長男のじょーくんが無事退院し、初めて家に帰ってきた日の写真。出産の1カ月前から抗がん剤治療を休んでいた奈々江さんは、このあと間もなく抗がん剤治療を再開

出産とがん治療をやりきって、少し自分に自信がもてた

「かつては自分に自信がなく、人に合わせてばかりの私でしたが、妊娠・出産と治療を乗り越えたことで、少し自信が持てるようになりました。そして、『自分も大切にしよう。私がやりたいことにも挑戦しよう』という思いが芽生え、ずっと興味があったキャンドル作りの講習を受け始めました。近い将来、ネットで販売するのが目標です」。

学んでいるのは植物性の原料だけでつくる「ソイキャンドル」の製法。ゆったり揺れる炎とハーブの香りでホッとリラックスできる

がん検診が怖い気持ちはよくわかる。だけど、検診は「安心」をくれる

「怖いのはがん検診でがんが見つかることではなく、見つかったけれど発見が遅くて手遅れだったときだと思います。私自身、年に1回の術後検診のときは不安になりますが、検査することが安心につながると考えています。だから、勇気を出して検診に行ってください。それから私は入院特約付きのがん保険に入っていて、手術の際に保険金を70万円ほど受け取ったものの、通院保障はつけていませんでした。抗がん剤や分子標的薬の通院治療は高額で回数も多いので、これから保険に入る方や見直す方には、保障の内容をしっかりチェックすることをおすすめしたいです」。

ソファでくつろぎながら、胸に手を当ててセルフチェック。「胸や胸の周りに違和感がないか、いつも気にしています。異変は早く見つけるほどいい。さぁ、チェックするぞ!という感じではなく、ごく自然に手を当ててさすっています」

がん治療しながらの出産は可能?

いとう新検見川クリニック松本華英先生

妊娠中にがんがわかっても、妊娠の週数に配慮すれば治療しながら出産できます。ただし、放射線治療は胎児への影響を考えて行わず、手術と薬物療法も妊娠12週の“安定期”までは流産などのリスクがあるので行いません。乳がんの合併がある妊婦さんは過去のデータと比べると増加。それは乳がん自体の数が増えていること、女性の社会進出や生殖医療の発展により30~40代で妊娠・出産する女性が増えていることが影響していると考えられます。

参考資料:乳癌患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療ガイドライン 2021年版(日本がん・生殖医療学会 編)/金原出版

参照:『サンキュ!』2023年11月号「乳がんになった私たちがいま、伝えたいこと」より。掲載している情報は2023年9月現在のものです。撮影/西田香織 編集/サンキュ!編集部

 
 

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