「台風シーズン」はいつまで?なぜ冬は台風が来ないの?気象予報士が解説!
2023/08/30
秋は台風シーズンとよく言われますが、実際にところ「台風シーズン」とはいつのことで、何月になったら台風は来なくなるのでしょうか。
そもそも、毎年いつの間にか台風が来るようになっていて、いつの間にか台風のニュースを聞かなくなっているような気がしますが、冬に台風が来ないのはなぜ…?
今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、台風にまつわる素朴な疑問に答えてもらいます!
台風の接近・上陸最多シーズンは?
台風の「上陸」とは、本州・四国・九州・北海道のいずれかの海岸線に到達することです。
これらの海岸線に到達はしないものの日本のどこかにかなり近づいた、というときは「接近」と言います。
台風の接近数がもっとも多くなるのは8月と9月で、過去30年間の平均値で同率1位です。
上陸数は9月がもっとも多く、次いで8月、7月、10月と続きます。
接近でも上陸でも大きな影響が出ることになるので、8・9月がもっとも警戒すべき期間、そしておおむね10月までが「台風シーズン」と言えそうです。
真冬でも台風は発生する
じつは、「台風が発生し得ない月」というのはありません。
12月でも1月でも2月でも、過去に何度も台風が発生しています。
というのも、台風が発生するためには海水の温度がだいたい26~27℃以上であることが必要なのですが、台風の故郷である熱帯の海は1年を通してそのくらい温かいので、真冬でも発生することが可能なのです。
ではなぜ冬には日本へやって来ないのでしょうか。
それには、台風を運ぶ「風」が大きく関係しています。
台風が冬に来ないのは「自力で動けない」から
台風はもともと、自分自身で動くことができず、周りの風に流されて動きます。
まったく風のないところにいる台風はその場にとどまるか、あるいは地球の自転の影響で(メカニズムは難しいので割愛しますが)ちょこっと北に動くだけです。
夏から秋にかけて日本へよくやって来るのは、「ちょうどいい風が吹いている」から。
台風が発生しやすい熱帯の海では常に貿易風という東よりの風が吹いていて、発生直後しばらくその風に乗って動いていくと太平洋高気圧に近づくことになり、太平洋高気圧の周囲を吹いている時計回りの流れに乗ることになります。
そのまま時計回りに進むと、今度は偏西風という西風が吹いているところにたどり着いて、その偏西風に乗ると自然に日本へ到着する、という具合。
これが夏~秋の典型的な台風の進路です。
一方で、冬になると太平洋高気圧は勢力が衰えて、太平洋高気圧の輪郭は日本からかなり離れてしまいますし、偏西風も日本列島よりかなり南を吹くようになるので、列島へたどり着くことはなくなります。
そこへ追い打ちをかけるのが、海水の温度です。
熱帯では年中温かい海水が、日本のある温帯だと冬にはかなり冷たくなります。
台風は温かい海の上でしか勢力を維持できないので、たとえ風の条件が良かったとしても、台風としての勢力を保ったまま日本列島に近づくことはできません。
一番遅い上陸の記録は?
台風に警戒すべきシーズンはほとんどの年で10月までですが、まれに11月にも台風の被害が発生することがあります。
過去にもっとも遅い時期に上陸した台風は1990年の台風28号で、11月30日に和歌山県に上陸し、死者・行方不明者4名、家屋の全半壊162棟という被害を出しました。
自然の現象は、人間が勝手に決めた「〇月」という区切れ目に合わせてくれるわけではありません。
とはいえ私たちも1年中、台風に対して神経を張り詰めているわけにはいかないので、おうちの基本的な台風対策は8・9月に焦点を合わせつつ、それ以外の時期も日常的に天気の情報を入手できるようにしておきましょう。
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部