新NISAの成長投資枠って知ってる?手堅く利益を得る投資スタイルを専門家が徹底解説
2024/08/24
新NISAの成長投資枠って知ってる?非課税で投資できるのがNISAのメリット。まだまだ便利な活用法がありました!投資信託で手堅く利益を得る投資スタイルについて専門家が解説します。
<教えてくれた人>: 家計再生コンサルタント ファイナンシャル・プランナー 横山光昭
これまでの相談件数は2万6000件超。自身も新NISAを活用して資産形成中。『はじめての人のための3000円...
- 成長投資枠では個別株より1.つみたて投資枠と同じ商品を買い増すか2.ETF(上場投資信託)にチャレンジしてみよう。
- タイプ1 成長投資枠でも、投資信託の積み立てをしよう
- タイプ2 成長投資枠で、ETF(上場投資信託)をタイミングを見て購入してみよう
- アメリカの証券市場に上場しているETFのVTIが注目だよ。
成長投資枠では個別株より1.つみたて投資枠と同じ商品を買い増すか2.ETF(上場投資信託)にチャレンジしてみよう。
個別株は、株主優待や配当金を目的にトライするのはOKですが、短期での売却益を狙ったり、成長投資枠を全て株式でうめるのはおすすめしません(理由は下記参照)。NISAのメリットは利益が非課税なこと。つまり損失を出したら、そもそもNISAを利用する意味がありません。1銘柄で分散投資できる投資信託で手堅く利益を得る投資スタイルが〇。
●初心者には個別株がイチ推しじゃない理由
□ 値上がり益を狙って当てるのは専門家でも至難の業
□ 多くの企業にリスク分散ができない
約30万円出しても1社の株式しか買えないことも
□ 株を売って枠が空いても、その枠を利用できるのは翌年
手持ちの株式を売ると、購入時の株価の金額分の枠が空きますが、それを使えるのは翌年から。年間投資可能額がすぐに復活するわけではないので、要注意
タイプ1 成長投資枠でも、投資信託の積み立てをしよう
つみたて投資枠と同じ銘柄の投資信託を成長投資枠でも買うことができます。積み立てでも、一括でも購入OK。「長期的には経済が伸びていくこと」を信じる人は、ある程度まとまったお金で一括投資するのもアリです。
●こんな人に!
・手堅く保守的に堅実にやりたい人
・投資期間を10年以上取れる人
タイプ2 成長投資枠で、ETF(上場投資信託)をタイミングを見て購入してみよう
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のこと。一般の投資信託は1日1回、基準価額が算出されますが、ETFは株式と同じように証券取引所が開いている時間内に、リアルタイムで価格が変動。価格が下がったときを狙って買えば、効率よくリターンを期待できます。
●こんな人に!
・余剰資金がある人
・投資信託以外も挑戦したい人
・投資期間があまりない人
アメリカの証券市場に上場しているETFのVTIが注目だよ。
【V】Vanguard(バンガード)
世界最大級の資産運用会社バンガード社がつくったETF。ちなみにバンガード社は、世界で初めて個人投資家向けのインデックス・ファンドを生み出した会社。
【T】Total Stock Market(トータル・ストック・マーケット)
米国株式市場全体に投資できる。
【I】Index Fund(インデックス・ファンド)
指数に連動した成果を目指す投資信託(ETF)。
バンガード社の運用資産総額は世界第2位。運用資産が多いということは、自分の資産運用を任せる投資家が多いということ。投資家からの信頼が厚いのです。同社は、低コストで優れた運用実績を上げるETFをいくつもつくっていて、VTIはその中でも特に知名度の高い商品。ちなみにVTIの正式名は「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」。
●投資先のイメージ図
VTIのいいところ
□ 米国市場全体に分散投資できる。
→ 銘柄数約3700社以上
□ 信託報酬が0.03%と低い!
→ これは年100万円投資すると運用コストが年間300円、1日0.82円ということ!
□ 純資産総額が約65.8兆円と大きい!
□ 3月・6月・9月・12月に分配金がもらえる。
→ 分配金利回り1.42%(税込み)ひと口あたり0.9519ドル
ちなみに価格はひと口268.73ドル(約4万3104円)
10年間で市場価格が約2.5倍になるなど、長期で見ると伸び続けている。
VTIの注意点
□ 少額投資には向かない。
□ 分配金を再投資したい人は自分でやる必要がある。
□ 円⇔ドルを交換する際、通常、為替手数料が発生する。
□ 利益から米国の所得税が源泉徴収される(新NISA口座なら日本の課税は0円)
僕も、24年1月に新NISAの成長投資枠で50万円分のVTIを一括購入した結果価格が上昇し、約半年間で利益は約10万円になったよ。
VTIの買い方
step1【準備】日本円をドルに交換しておく
VTIは米国のETFなのでドルで購入します。購入時に「円で買う」※を選択してもいいですが、事前に円高の時に少しまとめてドルに両替しておく方法もあります。でも為替レートを気にしすぎて、購入を先延ばしにするのはNG。VTIへの投資を早く始めることが大事。
※VTIの購入時に「外貨決済」ではなく「円貨決済」を選択すれば、ドルへの交換を証券会社がやってくれて手間はないが、当日の為替レートでの取引となる
・為替リスクを下げる
・為替レートの数十銭の差を気にするより始めることが大事!
step2【観察】価格が直前の最高値から3~7%下がったかチェック
「価格が下がったら買う」が基本。目安は、現在の価格が直前の最高値より3~7%下がったら買い時と、私は判断しています。「もっと下がるのでは?」と買うのを先延ばしにするより、ある程度下がったタイミングで買った方が、長期的には利益が多くなると考えます。
・タイミングをはかる
step3【いざ購入】資金を小分けにして買ってみる
一括購入に踏み切れない場合は、小分けで買うのもアリ。例えば50万円分を、10万円ずつ5回に分けて買ってもOK。買うタイミングを分散させれば心理的ハードルが下がり、買うことにも慣れます。また注文の際は、低価格の「指値注文」だといつまでも買えないことが多いのでまずは「成行注文」でいいでしょう。またVTIは長期的な成長が期待できるので、価格が上がってもすぐに売らず、長く持ち続ける視点も大切。
・心理的ハードルを下げる
【成行注文】とは?
「いくらでもいいから買いたい」や「いくらでもいいから売りたい」といったとき、売買価格を指定しないで、その時々の価格で売買する注文方法のこと。
【指値注文】とは?
「A株式を500円で1000株買いたい」や「B株式を500円で1000株売りたい」など希望する売買価格(買いの場合は上限価格、売りの場合は下限価格)を指定した注文方法のこと。
POINT
□ 最初は2口ぐらい買って経験を積むのもOK
□ 余裕がある人は一括投資もおすすめ
□ VTIは右肩上がりで成長しているので長い目で見れば早く買った方が(今は高くても)「安く買えた」ことになることも
□ 買ったら投資信託と同様に長く持ち続けること
Q VTI以外のおすすめは?
A VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)
先進国と新興国を含む世界47カ国の株式市場に分散投資しているETF。VTIよりも分散性に優れ、eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー)のETF版といったところ。全世界の株価動向を表す指数「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」に連動。
●このETFにも注目してる!QQQ
アップル、マイクロソフトなどIT企業を中心に、時価総額が高い100銘柄ほどを組み入れている。米国の株価指数「NASDAQ(ナスダック)100」に連動することを目標としているETF。
Q アメリカ以外の国のETFはおすすめじゃないの?
A 純資産総額の規模が小さく、手数料が高いんだよね
米国以外の国のETFもあるけど、規模が小さくてメジャーなものがありません。規模が小さいということは、運用資産が少ないということ。利益もあまり期待できず、おすすめはしていません。
●まとめ
投資で大事なことはまず慣れること。興味を持ったらまずはVTIの値動きを見るだけでも始めてみてね。
※投資に元本保証はありません。損失のリスクも検討し、自己責任の上で行ってください。
※掲載された情報は、24年6月27日現在のものです。情報は変わることがあります。
<教えてくれた人>
ファイナンシャル・プランナー 横山光昭さん
家計再生コンサルタント。これまでの相談件数は2万6000件超。自身も新NISAを活用して資産形成中。『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)など著作は累計400万部を超える。
参照:『サンキュ!』2024年9月号「初心者にもわかる!新NISA」より。掲載している情報は2024年7月現在のものです。監修/横山光昭 イラスト/今井杏 取材・文/村越克子 編集/サンキュ!編集部