シングルマザー家庭が受けられる控除・割引制度を解説
2019/02/19
シングルマザー(シングルファーザー 以下略)で子育てしている人のなかには、経済的な不安を抱えている人も少なくないでしょう。
そのようなひとり親世帯を支えるために、税金の控除やさまざまな割引制度があるのをご存知ですか?
具体的な制度と内容について、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに詳しく教えていただきました。
所得税・住民税の減免
シングルマザー家庭に対する所得税・住民税の減免措置として「寡婦控除(かふこうじょ)」があります。
条件によって「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に分けられ、それぞれ控除額が異なります。
■一般の寡婦
「一般の寡婦」とは、次の条件のいずれかに当てはまる人です。
①夫と死別または離婚後に再婚していない人で、扶養親族または生計を同じくする子ども(総所得金額等が38万円以下)がいる。
②夫と死別または離婚後に再婚していない人で、本人の合計所得金額が500万円以下。
「一般の寡婦」の場合、所得税は27万円、住民税は26万円の控除が受けられます。
■特別の寡婦
一般の寡婦に該当する人で次の3つの条件をすべて満たす場合は、「特別の寡婦」に該当します。
①夫と死別または離婚後に再婚していない人。
②扶養親族である子どもがいる人。
③合計所得金額が500万円以下の人。
「特別の寡婦」の場合、所得税は35万円、住民税は30万円の控除が受けられます。
国民年金の免除
経済的な理由で保険料を納めることがむずかしくなったら、未納のままにせず、免除の申請手続きを行いましょう。
免除される額は[全額][4分の3][半額][4分の1]に区分され、それぞれ免除を受けるための条件が異なります。
①全額免除
前年所得が次の計算式で計算された金額の範囲内であること。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
②4分の3免除
前年所得が次の計算式で計算された金額の範囲内であること。
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
③半額免除
前年所得が次の計算式で計算された金額の範囲内であること。
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
④4分の1免除
前年所得が次の計算式で計算された金額の範囲内であること。
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
申請をすると、免除期間中は保険料の納付が継続中と見なされます。ただし、保険料を全額納めた場合に比べて、将来受け取る年金額が少なくなるので注意しましょう。免除期間の年金については、10年以内であれば、さかのぼって保険料を納めることができます。
国民健康保険料の減額・免除
日本には国民皆保険制度があり、勤務先の社会保険に加入していない人は、国民健康保険に加入し保険料を納めなければなりません。
しかし、経済的に支払いがむずかしい場合、保険料の減額や免除を受けられることがあります。
【減額制度】
前年分(1月か12月)の所得金額に応じて7割、5割、2割の減額が自動的に適用されます。
【減免制度】
上の減額制度で適用された額でも支払いがむずかしい場合は、自治体ごとに定められている減免制度が受けることができます。
【全額免除】
生活保護を受けているなど、保険料を払うのが著しく困難な場合は、申請をすると全額免除されます。
公共交通機関の割引制度
電車やバスなど公共交通機関のなかには、「児童扶養手当」や「生活保護」を受給している家庭に対して、運賃の割引を行っているところがあります。
例えば、JRの通勤定期乗車券は通常の3割引に。そのほかにも市営バスや県営バスなどは割引制度を設けているところが多いので、利用する交通機関で確認してみてください。
保育料の減額・免除
自治体が運営を許可している「認可保育園」や「認定こども園」の保育料は、各世帯の住民税額によって決められます。
多くの自治体では、ひとり親世帯に対する保育料の負担軽減制度があり、その対象者や減免の範囲は自治体ごとに異なります。まずは役所の担当窓口などに問い合わせてみましょう。
まとめ
近年は離婚する夫婦も多く、シングルマザー家庭は年々増え続けています。
子育てしながら生活していくことは経済的にも大変だと思いますが、日本にはひとり親世帯を支援するための制度がたくさんあります。
今回ご紹介した税金の減免措置や割引制度もその一部。必要に応じて上手に利用してください。
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)