平成から令和へ。改元が家計に与える影響は?

2019/05/02

19年4月1日に新元号「令和」が発表され、ゴールデンウィークに突入するとともに、5月1日から新元号施行とイベントごとが続いて、さまざまなサービスやグッズも次々に登場しています。

お祭りムードに後押しされて、消費意欲が刺激されていませんか?元号が変わると景気や消費にも影響があるのでしょうか?節約アドバイザーの丸山晴美さんに解説してもらいました。

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て...

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みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。

お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。でも経済に関するお金の情報は、ちょっとむずかしいですよね。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。

今回のテーマは「改元と消費の関係」!

新天皇の即位でお祝いムードがさらに加速

5月1日、皇太子さまが天皇に即位され、いよいよ新元号「令和」の時代が始まりました。昭和生まれの私たちはなんと「昭和→平成→令和」と、3代の元号をまたぐことになりましたね!こういうことは明治生まれのおじいさん・おばあさんたちの話だと思っていたので、自分がなるなんて驚いてしまいます(笑)。

5月4日には新天皇即位を祝う一般参賀が開催され、10月には国内外の多数の賓客を招いての儀式「即位礼正殿(そくいれいせいでん)の儀」やパレード「祝賀御列(しゅくがおんれつ)の儀」も予定されています。これからさらに祝賀ムードが加速しそうです。新天皇がお好きな楽器演奏、登山、ジョギング、スキーなどを新しく始める人が増えるのではという声もあり、これらに便乗したイベントやサービスも出てきそうです。

日本全体がお祭りムードで、景気が良くなっているように思えますが、実際はどうなのでしょう?元号が変わると消費にはどのような影響があるのでしょうか?まずは昭和から平成に変わったときのことを振り返り、これからの変化について考えてみたいと思います。

平成は天皇崩御の自粛ムード→バブル崩壊

「平成」が始まったのは89年1月8日の日曜日。昭和天皇が崩御された翌日でした。

天皇崩御の記者会見から2日間、テレビCMが自粛となり、歌番組やドラマ、バラエティー番組などもすべて放送中止となりました。こうした自粛ムードが影響し、レンタルビデオ店ではふだんの4~5倍の貸し出しがあったとか。家計的には予定外の出費があったといえますね。

この年は「平成」が流行語を受賞するなど、新しい時代の到来に対する期待感が経済を後押しして、株式市場では情報通信システム業界や娯楽業界が好調となりました。このころはバブル経済のピークでもあり消費活動が進んだのですが、91年(平成3年)にバブルが崩壊すると長い不況に入ってしまいました。そのため、元号が変わったことによる大きな消費の転換はなかったといわれています。

ミレニアムに沸いた2000年は結婚や出産が急増

ビーチのウェディング
HIDEKO/gettyimages

今回の改元では、元号が変わる5月1日に入籍をする人や、令和元年結婚、元年出産をめざす人が増えるだろうといわれています。前回こうした盛り上がりを見せたのは、改元のタイミングではなく、西暦が2000年になる際の「ミレニアムブーム」のときでした。2000年の婚姻数は前年比4.7%増と過去二十数年間で最も大きく伸び、2001年には最高水準の多さになったのです。(※)

今年はそこまで増えるかどうかはわかりませんが、理想としては結婚が増え、子どもが増えてほしいと思っています。改元がそうしたことのきっかけの1つになる可能性はあると思います。

今年は祝賀ムードにお祭りムードがプラス

今回の改元は天皇崩御によるものではなく、「退位」するための前もった準備のなかで進められた点がこれまでと大きく異なります。自粛ムードはなく、逆に新天皇即位の祝賀ムードが強くなっています。

皇室行事が増えることもあり、今年は休日が土・日・祝日・正月三が日を合わせて123日と、昨年より4日多くなります。最大10連休のゴールデンウィークもありましたし、旅行・レジャーの需要はまだまだ増えると見込まれます。

また、新元号にちなんだグッズだけでなく、平成終了にちなんだグッズや出版物もたくさん出ていて、記念にと購入する人も多いでしょう。新天皇即位や改元にちなんださまざまなイベントが行われたり、新元号スタートに合わせて新しい習慣(ダイエット、預金積み立てなど)づくりを誘うキャンペーンも活発化しそうです。

さらに、19年9月にラグビーW杯が、20年には東京五輪が日本で開催されますから、祝賀ムードにお祭りムードも加わって、しばらく盛り上がりは続きそうです。

こうしたことを総合的に考えると、今年は例年より消費が増える年になることが予想されます。

改元の陰で4月から食料品の値上がりも!

母と娘の乳製品を選択
sergeyryzhov/gettyimages

でも、こうしたイベントの陰に隠れて、私たちの生活や家計に直結したさまざまな変化がひそかに進行していることをご存じでしょうか?

新元号が発表された4月1日には、コカ・コーラが27年ぶりに価格改定をしたのをはじめ、牛乳やヨーグルト、塩など多くの商品が値上げされました。食料品の値上げは断続的に起こっていて、これからも続きそうです。

その一方で、原油安から航空券は値下がりに。日本航空と全日本空輸が国際線の旅客運賃に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を4月1日発券分から大幅に値下げしたので、夏に海外旅行に行かれるかたなどにはうれしい変化でしょう。

また、時間外労働(残業)の罰則つき上限規制や、年次有給休暇(年休)の年間5日の取得義務化などを盛り込んだ働き方改革関連法の一部も4月1日から施行されています。

外国人労働者の受け入れを拡大する新たな制度も始まり、これまで「高度な専門人材」に限定されていた就労目的の在留資格を、事実上の単純労働者にも認めることになりました。

税制面でも、親や祖父母から教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受ける場合、年間所得1,000万円超の子らは贈与税非課税措置の対象外になるなどの動きがありました。

そのほかにも電気、水道、ガス代は数年前から段階的に上がり続けていますし、19年10月には消費税増税がスタート。物価は上がり、収入は増えないのに、お祭りムードで消費だけは上がっている状況です。

改元を足もとを見直すきっかけの1つに

有料スタンプがすべて 3 請求書
travellinglight/gettyimages

現代は情報がとてもたくさんあり、それをどう取得し、自分のなかでどう活用していくかが大切になってきています。情報は、かつては与えられるものでしたが、これからは自分で取りに行く時代。情報を自分で取ることができない人は、損をしてしまうシーンが増えています。

一方で、間違った情報や詐欺まがいの情報を取ってしまうリスクももちろんあります。そのあたりをしっかり精査できる人にならないと、家計や貯蓄を守ることはできません。

まず大切なのは、新元号や改元にかこつけたセールやイベントに安易に乗らないこと。セールで安くなるからと大して必要でないものを買ってしまうのは、「得」ではなく「損」です。

それよりも、クレジットカードの契約内容を見直したり不要なカードの整理を行う、失効しそうなポイントを使い切ったり使い勝手のいいほかのポイントに替えるなど、お金や家計まわりことを見直し、整理するきっかけにしてみてはどうでしょう。

改元直後の今は世の中が盛り上がって景気がよさそうに見えますが、実体は伴っておらず、東京五輪がすぎた再来年からは景気が落ち込むことが懸念されています。だからこそ、ムードに流されないことが肝心。この記事を読んでくださっているかたがたは、むしろこういうときこそ足もとをよく見直してみてください。

教えてくれたのは・・・

丸山晴美さん

22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て2001年、節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザーなどの資格を取得。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどを、テレビやラジオ、雑誌、講演などで行なっている。著書は「定年後に必要なお金『新・基本のキ』」(宝島社)など多数。

※出典:Economic Trends「元年婚・元年ベイビーは増えるか ~新元号効果を考える~」(第一生命経済研究所)

取材・文/かきの木のりみ

 
 

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