新型コロナも対象に!? 病気、倒産、失業……イザという時に役立つ「届け出だけでお金がもらえる制度」5選
2020/03/26
新型コロナウイルスの影響で、企業や店舗の縮小や倒産が問題となっています。ウイルスが終息しても、こうしたトラブルがいつ我が身に降りかかるかわかりません。
「そういう時、簡単な届け出だけでお金がもらえる制度を知っておくと、急場をしのぐのに役立ちます」と節約アドバイザーの丸山晴美さん。万一の時に家計の助けとなるお金の制度5つを教えてもらいました。
なお、今回ご紹介する情報はすべて2020年3月時点の取材情報を元にしています。
監修: 節約アドバイザー 丸山晴美
22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て...
みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。
お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。でも経済に関するお金の情報は、ちょっとむずかしいですよね。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。
今回のテーマは「届け出だけでお金がもらえる制度」!
病気やケガで仕事ができない時にもらえる「労災」と「傷病手当金」
まずは、病気やケガで長期間会社を休まなければならない場合にもらえるお金について知っておきましょう。その病気やケガをいつ、どういう状況でしたかによって、適用される制度が異なります。
通勤中の事故や、業務に起因した病気やケガには、会社で加入している労災保険(以下労災)の「療養(補償)給付」が適用されます。労災保険は正式名称「労働者災害補償保険」、いわゆる「労災(ろうさい)」と呼ばれるものです。
一方、業務中以外の病気やケガで長期間働けなくなった場合は、会社で加入している健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
どちらにあたるかはしばしば混乱するところなので、両方の制度の内容を知っておきましょう。
もらえるお金1:業務中なら労災の「療養(補償)給付」で医療費が全額もどる
労災の「療養(補償)給付」は、労働者(契約社員やパート、学生アルバイト、派遣社員なども含む)が、通勤時や業務中にケガや病気をしてしまった時に受けられます(通勤中の寄り道での事故などは対象外の可能性もあり)。
病院の窓口で「通勤中や業務中の病気やケガ」である旨を伝え、労災指定の病院なら医療費を払わなくてOK。通勤時のケガの場合は原則200円の一部負担金が徴収されます。
労災指定病院以外の場合、健康保険証は提示せず、いったん窓口で医療費の全額を支払い、その後、会社を通じて労働基準監督署で手続きをすれば、労災保険から病院で支払った医療費全額がもどってきます。
労災かどうかの判断は、最終的には労働基準監督署が下すので、自分で判断がつかない場合は会社に相談しましょう。
詳しくは厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が公開している「労災保険 療養(補償)給付の請求手続」を参照してください。
もらえるお金2:新型コロナも対象!個人的な病気やケガで3日以上休んだら「傷病手当金」
個人的な病気やケガで仕事や会社を休んだ間も、安心して療養に専念できるように、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などの被保険者なら、申請をすれば傷病手当金が支給されます(国民健康保険は不可。ただし、後述する新型コロナへの対応については、新型コロナウイルス感染症に感染するなどした被用者に傷病手当金を支給する場合があります。市町村の条例によって対応は異なるので、加入している市町村に確認しましょう)。
会社を連続して3日以上休むと、4日目以降の休業日数に対する手当(平均日額給与の3分の2)が、最長で1年6カ月間受給可能です。
ちなみに、新型コロナウイルスに感染して休んだ場合も、上記被用者保険に加入していて要件を満たしていれば、傷病手当金が支給されます(※1)。
もらえるお金は
標準報酬日額8,000円で1カ月間(31日)会社を休んだ場合で
8,000円×2/3(5,333円)×(31日-3日間)=14万9,324円(※2)
請求手続きは、勤務先が加入している健康保険組合へ申請書類を提出します。 ただし、業務中や通勤途中のケガや病気は対象外になるので注意が必要です。
もらえるお金3:会社が給料を払わず倒産したら「未払賃金立替払制度」で取りもどす!
もしも会社が倒産し、給料が未払いのまま退職しなきゃいけない事態になった場合でも、泣き寝入りしてはダメ!
賃金や退職金など(ボーナスは含まない)が2万円以上未払いになった場合、最大で80%を「労働者健康福祉機構」が会社に代わって支払ってくれます。正社員だけでなく、パート勤務のかたも申請可能です。
退職日から6カ月前の賃金までさかのぼって請求することが可能。ただし、倒産から2年以内に申請する必要があります。また、立替払いの対象になる未払い賃金総額には上限があります。
請求手続きは、法律上の倒産と事実上の倒産で異なるので、まずは破産管財人等か労働基準監督署に、立替払いの証明や認定を申請します。申請に必要な書類は労働基準監督署でもらえます。
詳しくは、厚生労働省が公開している「未払賃金立替払制度の概要と実績」のページなどをご確認ください。
もらえるお金4:失業保険を全額もらう前に再就職したら「再就職手当」
会社などを辞めて失業保険を受給していたけど、支給される日数を一定以上残して再就職した。という場合にもらえるのが「再就職手当」です。給付の残日数が多いほど、もらえる額が多くなります。
手当を受けるには、1年を超えて勤務することが確実、雇用保険に加入している、などいくつかの要件があります。 また、自己都合で離職した人は、7日間の待期期間満了後の1カ月以内は、ハローワークや職業紹介事業者の紹介による就職に限られます。
請求手続きは、就職した日の翌日から1カ月月以内に、「再就職手当支給申請書」や「雇用保険受給資格者証」などの必要書類をハローワークに提出します。
詳しくは、厚生労働省「再就職手当のご案内」などをチェックしてみてください。
もらえるお金5:再就職先の賃金が前より安いと「就業促進定着手当」がもらえる!
再就職したものの前職より賃金が低い、という時にももらえるお金があります。それが「就業促進定着手当」です。
高額な手当を受け取れるわけではありませんが、給料が下がってしまった場合のサポートをしてくれるため、とてもありがたい制度です。
手当を受けるには、再就職手当の支給を受けている人で、再就職後6カ月間の賃金の1日分の額が離職前の賃金日額を下回る人など、いくつか要件があります。
請求手続きは、再就職した日から6カ月経過後、再就職手当を申請したハローワークで行います。再就職手当と同様、郵送による手続きも可能です。詳しくは厚生労働省「就業促進定着手当」に関するページなどをご確認ください。
これらの制度は手続きが比較的簡単で便利なのに、聞いたことも使ったこともないという人がたくさんいます。知らなかったがゆえに、もらえるはずのお金を受け取り損ねているかたも少なくないでしょう。
今はどんなに安定して見える仕事先でも、いつ、何があるかわからない時代です。これらの制度を頭の隅に入れておくだけでも、イザという時に助けになりますよ。
取材・文/かきの木のりみ