ぶどうを食べ過ぎるとどうなる?優れたエネルギー源だけど、食べるときは気をつけたほうがいい点も
2023/12/11
ぶどうの歴史はとても古く、古代エジプトの壁画にも栽培風景が描かれていたとか。時は経ち、奈良時代にシルクロードを通って日本にやってきたと言われています。
本来、日本のような雨の多い気候は、ぶどうの栽培には向いていないと言われています。しかし、研究者が品種改良を重ねたおかげで、日本でも高品質のぶどうが続々と登場しているのです。
そこで今回は、ぶどうの栄養成分と効能について解説します。どうぞ最後までお付き合いください!
教えてくれたのは: シンクヘルスブログ編集部
糖尿病に強みを持つ健康管理アプリを展開するシンクヘルス社のオウンドメディア。ダイエット、糖尿病の食事、マイン...
ぶどうの栄養と効果効能
ぶどうに含まれる特筆すべき栄養素について詳しく解説します。それでは見ていきましょう。
●体のエネルギー源「糖質」
ぶどうには糖質が豊富です。
糖質は体のエネルギー源の1つです(糖質の他にはたんぱく質と脂質もエネルギー源となり、これら3つを合わせて「エネルギー産生栄養素」と呼びます)。
食べ物から摂取した糖質は、体内で消化吸収されて最終的にグルコース(糖質の最小単位)になります。特別な場合を除いて、脳が利用できる唯一の物質がグルコースです。
スポーツ選手が、試合の前後や休憩中に果物を頬張る様子を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
それもそのはず、グルコースはすぐにエネルギー源となる成分だからです。
以下は、ぶどうとその他の簡単に食べられる果物のグルコース量(可食部100gあたり)を比べたものです。
<グルコース(ぶどう糖)>
ぶどう(皮なし):7.3g
いちご:1.6g
バナナ:2.6g
ぶどうにはグルコースが豊富だとおわかりいただけるでしょう。
つまり、ぶどうは素早くエネルギー補給が必要となる運動前後や、勉強中のおやつなどにはもってこいの食材と言えますね。余談ですが、グルコースは日本ではぶどうから初めて発見されたので、ぶどう糖と呼ばれています。
●糖質と肥満について
近年では、糖質制限ダイエットという言葉があるくらい、「糖質は太る」とのイメージが浸透していますが、これは誤解です。
なぜならば、糖質は適量を摂るのであれば太る原因にはならないからです。
しかし、摂取量に比べて消費量が少ないと、糖質は使われずに中性脂肪として蓄えられるため、肥満の原因となります。
さて、糖質の摂りすぎだけが問題視されていますが、一方で摂取不足にもリスクがあります。
糖質の摂取不足は、疲れやすくなったり集中力が低下するなどの影響や、重症になると低血糖を起こし意識障害となる場合も。
そのため、極端な糖質制限は控えるべきです。
●炭水化物について
ところで、「糖質」と同じ意味合いで「炭水化物」という言葉が使われることがありますが、正確にはちがいます。
糖質はエネルギー源となる成分のことで、炭水化物は糖質にエネルギー源とはならない食物繊維を合わせたものを表します。
なお食物繊維はエネルギー源にはなりませんが、食後の血糖値の急上昇を抑えるなど健康な体を作るためには重要な栄養素です。
●高血圧を予防する「カリウム」
ぶどうにはカリウムも豊富です。カリウムはミネラルの1つで、血圧を正常に保つ働きがあります。
その理由は、カリウムには高血圧の原因となるナトリウム(塩分)を排出する効果があるからです。またカリウムには血圧を正常に保つほかに、筋肉や神経の働きをサポートする役目があります。そのためカリウムが不足すると、けいれん、筋力低下や不整脈などが現れます。
したがって、足がつったときは100%のぶどうジュースが活用できますよ。
一方で、カリウムを大量に摂った場合でも、体内で調節機構が働くため過剰のリスクはほとんどありません。ただし腎臓が機能しなくなった場合は、カリウムを尿中に排出できなくなるため、カリウム制限が必要です。
●動脈硬化を予防する「ポリフェノール」
ぶどうにはポリフェノールが豊富です。ポリフェノールは、植物に含まれている苦味や色素の成分で、抗酸化作用があります。ポリフェノールの抗酸化作用は、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立ちます。
ぶどうに含まれるポリフェノール全体の約30%が皮に、残りの約70%が種にあり、果汁にはほとんど入っていません。つまり、ぶどうの実を食べただけではポリフェノールは摂取できないのです。
さらに残念なことに皮や種ごと食べたとしても、ぶどうのポリフェノールは水に溶けにくいためそのまま排出され、効果は期待できません。
そこで、ぶどうのポリフェノールを存分に摂取するために、赤ワインを料理に使うことをオススメします。というのも、ワインは発酵・熟成の工程があるため、その期間中に皮や種からポリフェノールが溶けだすのです。
赤ワインを煮込み料理などに使うと、ぶどうのポリフェノールを摂取できるだけではなく、味に深みが出てとても美味しくなりますよ。
ポリフェノールの効果が得られるのは赤ワインからだけで、白ワインからは得られません。その理由はワインの製造方法の違いにあります。赤ワインは皮ごと発酵したものを使いますが、一般的な白ワインは果汁だけを発酵して作られるからです。
ちなみに、赤ワインの底に沈殿している黒っぽいものは「おり」と呼ばれていて、ポリフェノールやたんぱく質が固まったものです。
舌触りはよくないですが、ぶどうの成分ですので飲んでも差し支えないですよ。
干しぶどう(レーズン)の栄養価
干しぶどうは、名前の通りぶどうを干したもので、レーズンとも呼ばれています。近年では健康・美容志向の高まりから、ドライフルーツが人気となり、専門店も登場しています。
以下は、生のぶどうと干しぶどうの栄養価を比べたものです。
■カロリー(kcal)
ぶどう(皮なし・生):58
干しぶどう:324
■糖質(g)
ぶどう(皮なし・生):14.4
干しぶどう:60.3
■カリウム(mg)
ぶどう(皮なし・生):130
干しぶどう:740
■食物繊維(g)
ぶどう(皮なし・生):0.5
干しぶどう:4.1
※糖質は単糖当量の値を使用
※100gあたりの数値
上の表の通り、干しぶどうは水分が抜けて成分が凝縮しているため、おのずと重量あたりの栄養価が上がります。さて注目すべきは食物繊維の量です。
干しぶどうは皮つきのまま乾燥させてあるため、皮に含まれる食物繊維が摂取できます。生のぶどうを皮ごと食べるのは口当たりなどの面から難しいですが、干しぶどうになると違和感なく食べられるので良いですね。
一方で、干しぶどうは砂糖や油が添加されているものも多く出回っています。砂糖や油が付いていると、おのずと糖質やカロリーが増えます。その結果、糖尿病や体重増加につながる恐れがあるため、できる限り無添加のものを選びましょう。
ただし、ドライフルーツは果物であるものの、菓子類や菓子パンなどと同じように糖質がとても多い食品です。そのため糖尿病の方が食べるときは、事前に主治医の指導を受けましょう。
ぶどうの皮には栄養がない?
ぶどうの皮には食物繊維が含まれているので、栄養があるといえます。なお、実の部分には食物繊維がほとんど含まれません。
しかし、巨峰やデラウエアのように皮が硬い品種の場合は、食べるのが難しいです。
近年は皮ごと食べられる品種が続々と登場しています。皮が硬いものを頑張って食べるよりも、皮ごと食べられるタイプのほうが食感もよいのでオススメですよ。
●便秘に効果的な食べ方をご紹介
便秘解消のためには食物繊維の摂取が効果的です。
食物繊維には水に溶けない不溶性と、水に溶けやすい水溶性がありますが、ぶどうにはどちらも含まれています。
不溶性食物繊維には腸内で水分を吸収することで便のカサを増やし、腸を刺激し便通を促す働きがあります。
一方で、水溶性食物繊維の働きは腸内をゆっくり移動することで、糖質の吸収をおだやかにし食後の血糖値の急上昇を抑えるのです。
そこで効率的に食物繊維を摂るため、干しぶどうを活用することをオススメします
さて、厚生労働省の「食事バランスガイド」によると、1日の間食は200kcal程度とされています。干しぶどう60g(100粒程度)がおおよそ200kcalとなり、含まれる食物繊維は2.5gです。
しかしながら干しぶどうには糖質が多いので30g程度(100kcal)に抑え、残りをぶどうに不足しているたんぱく質やカルシウムが補える牛乳などにすると理想的です。
100kcal分の牛乳(コップ1杯弱、170ml)を飲むことで、
・便秘解消に効果的な不溶性食物繊維が働くために必要な水分が摂取できる
・日本人が不足しがちなカルシウムを190mg摂取できる(30~74歳の1日あたりのカルシウム推奨量は男性750mg、女性650mg)
となります。
ぜひ参考にしてくださいね。
ぶどうを食べ過ぎると糖尿病になるの?
ぶどうを一度にたくさん食べ過ぎると、血糖値を乱す原因となります。
その理由は、ぶどうには吸収スピードの速い糖(グルコースや果糖)が多いため、血糖値が急上昇しやすいからです。
厚生労働省の「食事バランスガイド」によると、1日の果物摂取目標量は200gですが、血糖値を気にする方は150g程度に抑えるとよいでしょう。
●ダイエット中に食べても大丈夫なのか
もちろん大丈夫です。
しかしぶどうには糖質が多いので、食べる量と時間には注意しましょう。
くり返しになりますが、1日の果物摂取目標量は200gです。小粒のぶどう(デラウェアなど)は1房がおおよそ200g、大粒のぶどう(巨峰など)は1粒がおおよそ10gですので、覚えておくと役に立ちますよ。
さらにダイエット中は食べる時間にも気を付けましょう。夕方以降は活動量が少なくなるため、食事で摂ったエネルギーが使われずに中性脂肪として貯蔵されてしまいます。よって活動量の多い朝や昼間に食べることがオススメです。
●毎日食べると体に悪いって本当?
答えは、毎日食べても大丈夫です。
しかしすでにお伝えしました通り、ぶどうは糖質が多いため1日に食べる量には気を付けましょう。ところで、ぶどうは輸入品も多いので1年中店頭に並んでいますが、日本のぶどうの旬は品種にもよりますが8月から10月頃です。
ぶどうを毎日食べるのもよいですが、その季節にしか食べられない旬の果物も栄養価が高いのでオススメですよ。
まとめ
ぶどうにはエネルギー源となる糖質や、血圧や筋肉を正常に保つカリウムが豊富だとわかりましたね。
そして皮や種に豊富に含まれるポリフェノールを摂取するためには、赤ワインを活用するとよいでしょう。便秘が気になる方は、食物繊維の豊富な干しぶどうを間食として取り入れるのがオススメです。
それでは当記事が参考となり、日々の生活にぶどうを取り入れていただけたら嬉しいです。
参考文献
農林水産省 奥深いぶどうの世界
JAグループ ブドウ(葡萄)
ぶどう入門 ぶどうポリフェノールライフ
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター ブドウとワインに含まれるポリフェノール類の健康効果
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
日本糖尿病学会 糖尿病食事療法のための食品交換表