「ナンプラー」がないときの代用レシピを検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】
2022/10/08
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「ナンプラー」の代用アイデア。
ナンプラーは麺類のスープ、煮物、炒め物など、塩代わりとしても幅広い料理に活用される調味料で、特にタイ料理には欠かせないといわれています。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、ナンプラーの代用アイデアをレシピつきで紹介してもらいます。
「ナンプラー」の原材料は?
ナンプラーとは、いわしなどの魚を塩漬けにして発酵させて作られる液体の調味料です。塩味とうま味があり、独特の香りを持っているのが特徴です。
実際に、筆者の手元にあったナンプラーの原材料を確認してみると、
・魚
・食塩
・砂糖
が使われていることがわかります。
ナンプラーの味を決める要素としては、魚の「香り」や「うま味」が欠かせないと言えそうです。
「ナンプラー」、「ニョクマム」、「魚醤」の違いは?
日本では、いしるやしょっつるといったものが、ナンプラーと同じようなつくり方をされています。大豆でつくった醤油が普及するまでは、日本でもよく使われており現在でも一部地域でつくられています。
また、ニョクマム(ヌクマム)と呼ばれるベトナムの調味料も、同じような材料とつくり方になっており、これらは魚醤(ぎょしょう)と呼ばれます。それぞれの違いは、使う魚の種類や発酵期間、塩の割合などにあります。
ちなみに、いしるはいわし以外にもイカの内臓が使われたり、しょっつるにはハタハタという魚が使われるのが一般的。そのため、ナンプラーやニョクマムとは風味に違いがありますが、近いものとして使用することができるでしょう。
独特な香りについては、ナンプラーよりもニョクマムの方が強いことが多いため、あまり強い香りを加えたくない場合はニョクマムの使用量を控えるか、十分に加熱して香りを飛ばすようにするのがおすすめです。なお、同じナンプラーであっても、原産国の違いによって使用する魚の種類の違いで風味が異なることもあります。本記事では、タイ産のナンプラーについて言及しています。
「ナンプラー」の代用になる調味料は?
前述したように、ニョクマムなどのほかの魚醤があれば、ナンプラーの代用にする手間が少ないことがわかりますが、どこの家庭にも常備されているとは限りません。
では、それら以外でナンプラーの代用をしたい場合はどうすればよいでしょうか?
ナンプラーの味を決める要素の「香り」や「うま味」のある食材を組み合わせることができれば、理論上はナンプラーの代用ができます。
筆者の自宅にあった食材や調味料のなかでナンプラーの代用となりそうな食材は、以下のとおりです。
・濃口しょうゆ
・鶏がらスープの素
・オイスターソース
・アンチョビ
・白だし
・塩麹
・しらす干し
・レモン果汁
これらの組み合わせを変えて、どれがいちばんナンプラーとしておすすめできるのかを検証してみました。
【検証1】そのままで代用レシピを比較
濃口しょうゆをベースに、うま味のある鶏がらスープの素、オイスターソース、アンチョビ、白だし、塩麹、しらす干し、さらに発酵した風味を加えるレモン果汁も組み合わせて以下のように5通りの組み合わせを考えました。括弧内は、実際につくった際の分量となっています。
【A】濃口しょうゆ+鶏がらスープの素+レモン果汁(15ml:1.5g:2.5ml)
【B】濃口しょうゆ+鶏がらスープの素+オイスターソース(15ml:1.5g:5ml)
【C】濃口しょうゆ+アンチョビ+レモン果汁(15ml:10g:2.5ml)
【D】濃口しょうゆ+白だし(15ml:15ml)
【E】濃口醤油+塩麹+しらす干し(15ml:6g:10g)
比較するナンプラーの食塩相当量に近くなるよう、代用食材の分量を調整しています。
代用食材のうち、固体であるアンチョビとしらす干しについては刻んだり潰して液体と混合しています。
画像のいちばん左が「ナンプラー」、上段左から順に【A】【B】、下段左から順に【C】、【D】、【E】を混ぜ合わせたものを並べてみました。
ナンプラーには、独特な香りと深いうま味があります。それぞれの代用ナンプラーについて、筆者が感じたことを箇条書きでご紹介します。
【A】塩味を強く感じにくく、和の香りを感じる
【B】塩味とともに甘味がわずかにあり、魚貝類の香りを感じる
【C】塩味を強く感じ、魚の香りも強く感じる
【D】やさしい塩味で、和の香りを感じる
【E】Bとは異なる甘味がわずかにあり、魚の香りを感じる
このことから、ナンプラーをそのままつけ汁などに使うのであれば、魚(貝類)の香りを感じる【B】【C】【E】がおすすめできそうです。
【検証2】「炒め物」で代用レシピを比較
ナンプラーの使い方としては、そのまま使う以外に加熱調理にも使われます。加熱することで香りが飛びやすいとされていることから、今度は炒め物に使用して比較することにしました。
今回は、油少々で炒めたキャベツに代用ナンプラーを回しかけ、サッと炒め合わせたもので食べ比べをしてみました。その結果は次のとおりです。
【A】あっさりとしている
【B】うま味が強く、魚(貝類)の香りはあまり気にならない
【C】そのままよりも塩味がまろやか、魚の香りは一番感じる
【D】Aよりもさらにあっさりしている
【E】優しい塩気で、少し魚の香りを感じる
以上のことから炒め物に使用する際は、魚の香りを感じる【C】【E】がおすすめといえます。ナンプラーの香りは食べてすぐよりも後から口の中にフワッと香る感じなので、同じようなことは期待しにくいですが【C】【E】では食べたときにナンプラーに近い魚の香りを感じることができるでしょう。
【検証3】「スープ」で代用レシピを比較
ナンプラーはスープの味付けとしても使われることがあります。今度はスープに使用して比較してみました。
スープは豚ひき肉を酒と水とともに温め、アクを取り除いて塩こしょうで薄く味を調えたものを用意し、そこへそれぞれの代用ナンプラーを同量ずつ加えていきました。加熱後のスープに加えたため、炒め物よりは香りが残っていることが考えられます。その結果は以下のとおりです。
【A】うま味とともにわずかに酸味を感じる
【B】魚(貝類)の香りを強く感じる
【C】うま味とともにわずかに酸味を感じる
【D】和風の香りを強く感じる
【E】香りのバランスがよい
以上のことから、レモン果汁を加えた【A】【C】はスープに使用するのが不向きであると感じました。温められたスープによって魚の香りを感じやすくなると同時に、レモン果汁の酸味も感じやすくなったことが原因と考えられます。この場合、レモン果汁だけを抜けばスープにも違和感なく使うことができるかもしれません。
また、より香りの違いがはっきりわかるため、かつお節が使われている【D】は和風の印象が強くなるため、スープに使用する場合は代用ナンプラーに向かなそうです。
【B】【E】であれば、香りはナンプラーほど強くありませんが、代用としてスープに使えるといえます。
【検証結果】決め手は「魚の香り」の有無!
今回の比較からは、【E】が総合的に代用としておすすめできるといえます。
【E】のしらす干しはナンプラーと同じいわし(稚魚)が使われているので、ナンプラーに近い感じに仕上がったのだと思います。
ただし、しらす干しは商品によって塩分濃度や水分量に差がある場合がありますので、仕上がりにムラが出やすいことが考えられます。あくまでも、この記事で紹介した分量は目安として参考にし、味見をしながら食材の分量を増減してもらえたらと思います。
(【C】のアンチョビも、しらす干し同様にいわしが使われているため、レモン果汁を加えなければ同じく総合評価としては高くなった可能性があります。【C】については、使う料理に応じてアレンジすれば使い勝手が良くなると思います。)
代用ナンプラーの楽しみ方は?
代用ナンプラーのメリットとしては、使いたいけれど購入しても使い切れるか不安なときでも、少量を用意しやすいこと。代用食材があればほぼ混ぜるだけで簡単につくることができるので、手間が少なく残る不安もないというメリットがあります。
また、商品によっては香りや風味がかなり強いものもあるため、それらを抑えてナンプラーを使った料理を楽しみたい場合にも代用ナンプラーをおすすめすることができます。
タイでは日本の醤油のようにさまざまな料理に使われているナンプラー。たっぷり使えば、一気にエスニック料理に仕上げることができますが、じつはメインの調味料としてだけではなく、隠し味として活用する方法もあるのです。使い方は、醤油や麺つゆを使う料理の一部をナンプラーに置き換えて使うだけ。そのため、和風の炊き込みご飯や炒め物、煮物などにも使うことができ、塩味とうま味が加わった料理に仕上げることができます。独特の香りを和らげるために、加熱すると和風に仕上げやすくなります。
なお、今回の代用レシピの検証では優劣をつけましたが、隠し味として少量使うのであれば、いずれの組み合わせでも代用ナンプラーとして使うことができるでしょう。
ぜひ、さまざまな料理のおいしさアップに、代用ナンプラーを活用してみてくださいね!