失明、視力が低下するリスクも!?じつは怖い「ビタミンA」不足
2024/05/13
健康を維持したり、病気の予防に欠かせない栄養素。その中でも、「ビタミンA」にはどういった働きがあるのかご存じでしょうか?
必要量が足りているからこそ、わたしたちは当たり前に毎日を過ごせるのですが、不足してしまうといくつものデメリットが出てくることに……。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、ビタミンAが不足することでどのようなことが起きるのかと、効率よくとるための食べ方について紹介してもらいます。
ビタミンAの働きとは?
ビタミンAとは、油に溶けやすい性質(脂溶性)を持つビタミンの一種です。肉、魚、乳製品などの動物性食品に含まれるレチノールや、野菜などの植物性食品に含まれるβ(ベータ)-カロテンなどがあります。
β-カロテンについては、体内に吸収されて必要な分だけがビタミンAに変化し、ビタミンAとしての効果を発揮できるようになります。(※)
そんなビタミンAの働きは、おもにつぎのとおり。
・目の網膜を保護したり、薄暗い所で視力を保つ
・粘膜(のど、鼻など)や皮膚を健康に保ち、免疫機能を高める
・細胞の増殖や分化を調整する
全身の細胞に関わる働きもあるため、視力に限らず、聴覚、味覚、生殖機能などの正常維持にも役立つ栄養素となっているのです。
※……これをプロビタミンAと呼びますが、β-カロテン以外にも50種類ほど存在しています。その中で一番効率よくビタミンAに変換されやすいのがβ-カロテンです。そのため、この記事ではβ-カロテンを取り上げて紹介しています。
ビタミンA不足になると起きることとは?
ビタミンAが不足すると乳幼児では角膜乾燥症や最悪の場合には失明、成長期には骨や神経などの発達が不十分となる成長障害、大人では夜盲症(夜間視力の低下)が起こりやすくなります。
そのほか、胎児の奇形、皮膚や粘膜の乾燥・肥厚・角質化、免疫力の低下から感染症にかかりやすくなることも……。
令和元年国民健康・栄養調査におけるデータを見てみると、食品からのビタミンAの1日の摂取量はどの年代にも不足している傾向にあることがわかっていますが、ビタミンAは肝臓などに蓄積される栄養素なので、よほど長期に不足が続かなければこのような欠乏症は起こりにくいといわれています。
ただし、ビタミンAを含む食品をほとんどとらない食生活が続いている場合には注意が必要です。
ビタミンAを多く含む代表的な食材や、おすすめの食材
ここからはビタミンAを多く含む食品について、動物性食品と植物性食品に分けてご紹介します。(※)
・豚、鶏、牛レバー
・あん肝(生)
・うなぎ肝(生)
・ほたるいか
・ぎんだら
・うなぎ(白焼き、かば焼き)
・クロマグロ
・焼きのり
・青のり
・にんじん
・しそ
・青汁(ケール)
・モロヘイヤ
・乾燥わかめ
・ほうれん草
・パセリ
なお、動物性食品のレチノールは、多くとりすぎてしまうと頭痛や脱毛などの悪影響が起こる可能性があります。とくに、高濃度に含んでいるレバーの場合は食べる量に気を付けないと、あっという間にとりすぎてしまうので注意が必要です。
レバーに限らず、動物性食品に偏った食生活をしていると同様のリスクがあるため、とりすぎても影響のない植物性食品のβ-カロテンを意識してとりいれることをおすすめします。
また、β-カロテンは上述した以外にも、色の濃い野菜(緑黄色野菜)全般に多く含まれています。そのため、食事に何種類ものそういった野菜を組み合わせるようにすると、カロリーの摂取を抑えつつ、β-カロテンだけでなくそのほかの栄養素もバランスよくとりいれやすくなるでしょう。
※……レチノールやβ-カロテンを含む食品をビタミンAが多い食品として述べています。また、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年における、レチノール活性当量の多い順から常食しやすい食品を紹介しています。
効率よく摂取するための組み合わせや食べ方
レチノールもβ-カロテンも、油に溶けやすいという性質があります。
少しでも無駄なくとりいれたい場合には、油脂を含んだ食材を選んだり、油を使った料理に加えることで体への吸収率を高めることができるのです。
また、β-カロテンについては、細かく食材を粉砕したり加熱することによっても吸収率を向上させられることが分かっています。たとえば、生のままにんじんを丸かじりするよりも、すりおろしてから加熱してジュースやポタージュにしたほうが効果的にとりやすくなると言えるのです。
ただし、特定の栄養素のことばかりに目を向けて、基本の食事がおろそかになっては元も子もありません。
主食・主菜・副菜をそろえ、炭水化物・脂質・たんぱく質が偏らないような食事を意識し、その上でご紹介した栄養豊富な食品をとりいれるようにしてみてはいかがでしょうか。