嫌いなものでも好きになれる⁉大人になると食の好みが変化する理由とは?
2021/08/28
「子どものころはどうやっても食べられなかったのに、いまはむしろ好き……」という経験をしたことがある人は多いと思いますが、なぜ大人になると食べられるようになるのか理由をご存知でしょうか?
食べ物の好みの変化が起こる理由とは、単に成長したからではなく、あることが関係しているのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、味覚が変化する理由と、大人になったら食べられるものが増えるようになる工夫について紹介してもらいます。
子どもの味覚は大人の3倍!
味覚とは、味を感じる感覚のこと。私たちの舌にある「味蕾(みらい)」という細胞が、口の中に入ってきた成分の情報を脳へ伝えることによって、さまざまな味を認識しています。
塩味、甘味、酸味、苦味、うま味の5つの基本的な味に対し、乳幼児のときにはとくに「甘味」と「うま味」に対する感度が高くなっています。これは、母乳に含まれる味でもあり、エネルギーやタンパク質が多いものの味として本能的に体が求めることに関係があるとされています。
逆に乳幼児期は「酸味」と「苦味」が嫌われる傾向にあります。これは、腐敗や毒の味を避けるための本能といわれており、とても敏感に察知します。
大人が食べて問題ないと思っていた味でも、子どもに食べさせてみると「酸っぱい」「苦い」などと拒否された経験はないでしょうか?その理由は、味蕾の数が関係しています。
味蕾は、おなかの中にいる胎児のころから数が増え、生まれたときに一番多く存在しています。しかし、大人になるとその数は1/3に減ることがわかっています。子どもの味覚は、それだけ大人よりも敏感で、私たちが感じない味まで感じ取ることができるのです。
味覚の変化だけじゃない⁉苦手な味が好きになる理由
大人になると子どものころより味蕾の数が減ることで、必然的に味覚が鈍っていきます。そのため、子どものときに苦手だった酸味や苦味をそこまで強く感じなくなっていくともいえます。
しかし、おいしさを判断するのは味がすべてではありません。
おいしさの要素は、味覚以外にも視覚、聴覚、嗅覚、触覚(口の中の食感や温度など)も関係していて、さらには食べるときの環境(温度・湿度・明るさなど)や精神状況(喜怒哀楽など)、肉体状況(病気、疲れ、空腹など)によっても感じ方が左右されます。
また、食経験や情報によって、意識に変化を受けることもおいしさに影響します。くり返し酸味や苦味のある味を口にする機会があったり、誰かの「おいしい」という感想や「体にいい」などといった話を聞くことによって、慣れていったり、苦手意識が薄れていったりするようになります。
このようなことを積み重ねていくことによって、大人になるにつれて複雑な味や幅広い味を受け入れられるようになっていくのです。
よくある例として、ビールやコーヒーがあります。
初めて飲んだときはとても苦くて飲めたものではないと感じるのに、何度も口にしたり、大人や身近な人が飲む姿を見て好印象を感じることに加え、飲んだあとに「すっきりした」や「心地いい」などの感覚の変化が表れることなどが影響して、いつの間にか苦味を気にせず飲めるようになった人は多いのではないでしょうか?
そうなると、むしろその苦味があるからこそ、おいしいと感じるようになっていきます。
多くの「ポジティブな食経験」を積み重ねよう!
ビールやコーヒー以外にも、苦味のある山菜や野菜、ビターチョコなど、大人になったらおいしく感じるようになった人も多いのでは?
酸味や苦味の成分は食品ごとに異なるので、ビールが飲める=山菜の苦味もOK、というわけではないことを覚えておいてくださいね。それぞれの食品ごとに慣れていく必要があるのです。
幼少期からさまざまな食品を口にして、味の違いを感じること。そして、徐々に酸味や苦味は体に悪いものではなく、安心できる味であることを知っていくことが、大人になったときの食の好みに影響を与えていくといわれています。
食は、人生を豊かにしてくれる大切な要素です。一つでも「おいしい」と感じるものが増えることは、人生の楽しみを増やしてくれることに!今からでも好きなものを増やせるよう、ポジティブな食経験を積み重ねてみてはいかがでしょうか?