悪いのは全部相手、自分は被害者――妻を苦しめる「被害者ぶるパートナー」の実態と対処法
2021/10/24
モラハラ(モラルハラスメント)にもさまざまな種類がありますが、モラハラの一歩手前の行為として「被害者ぶるパートナー」というものがあるそうです。
恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。
「やられっぱなしのかわいそうな人」の立場から攻撃
何かにつけて「自分はかわいそう人」と「被害者側」にすかさず立つ。そして、相手のせいで自分は被害者になってしまった=だから自分を守るために「悪い相手」を攻撃せざるを得ない……と、自分を「やられっぱなしのかわいそうな人」の立場に置き、他人への攻撃を正当化する人がいます。
彼/彼女たちは弱者のふりをしていますが決して弱いわけではありません。むしろ弱さを武器にして相手を翻弄し、コントロールしようとする“ずる賢さ”があります。
私が主宰する「恋人・夫婦仲相談所」には「被害者ぶった加害者夫」の報告が多数寄せられています。それらを見ていると、「被害者ぶった加害者夫」にはいくつかのパターンがあることがわかってきました。以下、筆者なりに分類してみます。
なお、今回は加害者を「夫」に限定していますが、もちろん「妻」が同様の行動で夫を苦しめるケースもあります。
パターン1:妻が原因で俺が辛いんだと言い切る夫
「お前がバカだから俺が教えてやってるんだ」
「お前が冷たいから、浮気をしちゃったんだ」
「お前が俺を怒らせるから悪いんだ」
「なんでお前は俺に文句しか言わせないんだ」
と、自分の行動の原因を妻に押し付けて攻撃するパターン。
パターン2:自虐態度で妻を皮肉る夫
「俺は家に帰ってきてもこき使われて、ほんと、かわいそうすぎるよ」
「俺なりにがんばってるのに、お前のせいで上手くいかない」
「俺は家事を君の倍やっている。なのに買い物まで行かせるのか」
と、ひねくれながら妻をネチネチと責めるパターン。
パターン3:おふざけ言葉で嫌味ったらしい態度をする夫
「またママに怒られちゃったよー。こわいでちゅねー。娘ちゃんもママこわいよねー」
「うわ、またにらんでる。やば~、鬼嫁こわ~」
「はいはい。稼ぐ嫁さんもらって、家族みんな贅沢さしてもらってますよねー」
と、ふざけたり、からかったりしながら妻を貶めるパターン。
パターン4:ドラマチックセリフで自己陶酔する夫
「そんなに俺を悪者にしたいのか」
「どうせ俺なんか必要とされてないよ」
「キミの思うようにすればいい。それで気が済むなら眼をつぶるよ」
と、自身の言葉に酔いしれながら逆切れするパターン。
……これらの言葉、妻は聞いていると嫌な気分になります。心臓をちょっとずつ握り潰されるような。ジワジワと攻められる不快な言動。モラハラ夫一歩手前のやっかいな言動と認識しましょう。
このほかにも、「被害者ぶった加害者夫」には以下のような特徴が見られます。
・喧嘩をすると自分が1ミリも悪くない前提で進める
・自分が明らかに悪いのに、指摘されると「かわいそうな僕」モードに入る
・自分に不利になるとすぐに話をすり替える
・「どうせ……」とすぐに話し合いから逃げる
・現実を受け入れたくなくなると、思考停止してキレちらかす
「被害者ぶった加害者夫」への対処法
このような迷惑パートナーにどう対処をすればいいのか、主な対処法を3つご紹介します。
対処法1:100%そのまま返すブーメラン法
妻に原因を押し付ける論法には、同じ論法で返すのが有効。
例えば「お前が冷たいから俺が浮気しちゃったんだ」という夫には、「あなたが浮気をするから私が怒らなくちゃならないのよ」と、そのまんま、ブーメランのように相手に原因を押し付け返しましょう。
ためらわず、思い切ってこちらも被害者になってしまうのがコツです。とはいえ、これを始めるとループにはまるので両者疲弊するのがネックです。
対処法2:皮肉を全肯定する
「どうせ……」とひねくれる相手はそのまま、肯定する。
例えば「どうせ俺のせいにするんだろう」とひねくれる夫には「そうなの。よくわかってるじゃない。あなたが悪いんだから責任取りなさい」と全肯定して完全にてっぺんを取る。
対処法3:「おふざけ&怒鳴り」は向き合わずに時間を置く
からかってきたり、逆切れする相手は、いったんその場を離れる。真面目に答えれば答えるほどむなしくなるだけですから。
相手がふざけ始めたり、キレ始めたら、何を言われても黙って席を立って、いったん休戦モードにしましょう。そのまま冷静になるまで待つのです。とくにキレる場合は、物を投げる、手を出す行動につながるので危険です。
自分を責めたり卑下したりしてはダメ!
被害者の仮面をかぶったズルい夫は、知らないうちに妻の心をむしばんできます。真っ向から受け取らない。相手の意のままに、自分を責めたり卑下してはいけません。
もし、度重なる「被害者ぶった攻撃」が、対抗できないほど辛いときは、迷わず第三者に相談をしてください。一人で抱え込まないことが一番大切です。今は「ちっちゃいこと」と思えても、長い長い結婚生活、あと70年間、夫のその態度が継続することを心しておきましょう。
◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。