「牛丼初めて食べたよ」とよろこぶ子どもの姿に反省……「がんばりすぎる妻」になっていませんか?
2021/12/21
家族のためにがんばる……でも、「がんばりすぎる」のは家族にとっても自分にとってもいい結果にはならないかもしれません。恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに解説してもらいます。
「妻が一生懸命なのはわかるんだけど、ちょっとなあ」という夫の本音
家族の健康を守り、毎日の快適な暮らしを支え、さらには家計のやりくりなど……妻のみなさまの日々のがんばりは本当に尊敬に値するものです。しかし、本人が「これがベスト!」と思っていることが、家族からすれば「ちょっとビミョー」だったり「ホントのとこは迷惑」だったりすることって、じつはあるのです。
がんばっている妻からすれば、じつに身勝手な話ではありますが、筆者が夫婦仲相談を受けるなかで夫からそういった“本音”が出てくるのは事実。
そこで今回は、「妻が一生懸命なのはわかるんだけど、ちょっとなあ」という夫の本音を探りながら「妻ががんばりすぎないほうがいい場面」について考えてみましょう。
「牛丼初めて食べたよ」と満面の笑みで話す子どもに怒り、やがて反省
まずご紹介するのは節約をがんばりすぎた家庭のケース。
美菜さん(仮名)の趣味は貯金。食べ盛りの男の子が3人いる家族です。それでも美菜さんは40代のうちに1,500万を貯めるのが目標だそうです。
しかし悩みの種は毎月かさむ食費。ネットの節約レシピを参考にしながら、1食3人で1,000円を目標に、買い物や献立に日々工夫を凝らしています。
スーパーに行けばまず向かうのは「見切り品」「おつとめ品」のコーナー。そこにある食材をベースに、節約かさ増しの強い味方たち――もやし、とうふ、こんにゃく、きのこ――をフル活用。食卓に登場する肉類は基本的に鶏むね肉か豚小間。牛肉は年に一度、ふるさと納税の返礼品が来ただけのスペシャルアイテム。ポイ活にも徹底して取り組んでいます。
そんな節約レシピでも「ママのごはんはおいしいー」と食べてくれる家族に満足していた美菜さんですが、最近、ある出来事をきっかけに、節約至上主義に変化があったと言います。
「部屋のゴミ箱に私が購入していないスイーツの空き容器やレトルトの袋などがこっそり捨てられていることに気がついたんです。どれも私が絶対に手に取らないようなプチ贅沢品。しばらく観察していると、そのようなゴミが出るのは私が夜勤に行った日の翌日なんです。夫には聞きにくかったので、こっそり末の息子に聞いてみたところ……『ママがお仕事でお留守番のときにパパが買ってくれるんだよ。チョコレートケーキとかビーフシチューがおいしかった。牛丼も初めて食べたよ。今度ママも買ってきてよ』と満面の笑みで答えてくれました」
節約をがんばっている自分の横で、どんどんお金を使っている夫に腹が立った美菜さんは、ある日見つけたレトルト空き容器を手に夫に文句を言いました。すると夫はこう反論したのです。
「お留守番をがんばっている子どもたちへのご褒美も必要だと思うんだ」
美菜さんが夜勤で夜いないときは、次男がお風呂を掃除して子どもたちだけでお風呂に入ったり、長男が弟たちの宿題を見てあげたりするなど、兄弟3人で力を合わせて留守番をしている。だから夫が会社から帰るときに、ふだんは食卓に上がらないプチ贅沢な料理やスイーツをお土産に買って、ご褒美として一緒に食べているということでした。
「お金を貯めることももちろん大事だよ。いつも節約を考えてくれてる美菜はすごいと思う。だけどメリハリが必要だよね。がんばってるときにご褒美があれば、次にもっとがんばれるでしょ。プレゼントみたいなことは必要だと思うよ。子どもたちにも、美菜にも」
という夫の言葉に、思わず涙がこぼれました。
そのときから、美菜さんは今までの方針を変換。毎月の目標額を実際の出費が下回った場合は、家族へのご褒美を買うことにしました。ホールケーキを買って5人で切り分けるときは、「クリスマスじゃないのにまあるいケーキ!」と歓声が上がります。
この方針転換には思わぬ副産物もありました。子どもたちが節約に積極的に協力してくれるようになり、さらに出費を抑えることができるようになったのです。
「家族の安心」がじつは「自分の安心」になっていない?
続いてはこれまたこだわっている人が多いであろう掃除・片づけの問題について。
絢美さん(仮名)の長女は幼いころからアレルギー体質で、体調が悪く学校を休むこともしばしば。特にハウスダストやスギ花粉がアレルゲンのため、絢美さんは家の中の片づけや掃除には人一倍気を付けていました。
花粉の時期には外から帰ってくると、上着を玄関で脱いで家の中には花粉を持ち込まない。部屋の中は空気清浄機を24時間動かす。毎日3度掃除機をかける。ダニよけのためにラグやクッションは置かないなど、家の中の環境を清潔に保つためにいろいろな努力をしてきました。
そんな中、コロナ禍が始まり、絢美さんはますます忙しく、気が休まらない毎日。
「私はしっかり対策をとっているのに、夫は無頓着。上着を着たままリビングまで来て靴下を脱ぎ散らかして、そのままソファーに寝転ぶときもあります。本当にやめてほしいです。あとは長男も、まだ小学生だから仕方がないのかもしれませんが、帰宅後手を洗わずに家の中をいろいろ触るのでイライラします」
そんな絢美さんにある日夫が声を掛けたそうです。
「いつも俺の触った後を除菌シートで拭いて回ってるけど、俺ってそんなに汚いかな?子どもにも、手の洗い方や服の脱ぎ方をうるさく注意しているけど、あいつの様子をちゃんと見てる?最近は名前を呼ばれるだけで、何か怒られるのかとびくびくしてるよ。
家の中をきれいにするのは、家の中でみんなが安心していられるようにするためのはず。でも、今のままでは家の中は清潔かもしれないけれど、家族が安心して過ごせる状態じゃないよ」
この言葉で、「家族の安心のために」と思っていたことが「自分だけの安心」になっていたことに気づかされたという絢美さん。
「清潔」の基準は人それぞれですので、誰が正しい/間違っているという正解はありません。それだけに、「どこまでを求めるか」は難しいところです。難しいからこそ、まずは家族で話し合って、お互いの考え方や感じ方を受け止めて、納得できるやり方を探すことが大切です。
たとえ完全に無菌状態の家がつくれたとしても、その中に暮らす人が笑顔でなかったら意味がないですよね。
コロナ禍は、各家庭で衛生概念の違いからプチ夫婦喧嘩が勃発しました。「きれい、汚い」の言い争いがきっかけで他のいざこざに発展して、私が運営する夫婦仲相談所を訪れたご夫婦もいます。
ご紹介した2例とも、1人でまじめにがんばりすぎてしまった妻のお話です。家庭は家族の共同生活の場。あまり1人でがんばりすぎず、パートナーや家族と話し合い、役割をシェアしながら、みんなが笑顔でいられる落とし所を見つけるのが平和的解決です。
「私だけがんばっている」と少しでも思ったことがあるかたは、ゆっくり「ホントかな」と自問自答してみてください。
◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。