「金利とは何か?」説明できない人は、頑張ってもお金がたまらない。この機会に学びませんか?

2023/06/12

ニュースで耳にするお金の単語。なんとなくはわかっていても、説明できるほどには自信がない……そんなあなたに。 この連載では図解も含めてスパッと解説。お金について知ることで、お金とのお付き合いをもっと上手にしませんか?
第1回目は金利についてです。

教えてくれる人

モゲチェック塩澤(モゲ澤)さん

本名は塩澤崇さん。オンラインの住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOにして住宅ローンアナリスト。YouTubeチャンネルも人気。SNSではモゲ澤と呼ばれる。

そもそも金利って何ですか?

編集部)
モゲ澤さんにこんなことを聞くと怒られそうですが、「金利」ってそもそも何なのでしょう?

モゲ澤さん)※以下敬称略
怒らないので安心してください(笑)。金利というのは「お金の値段」と考えてもらうとわかりやすいかもしれませんね。

編集部)
「お金の値段」ですか? お金に値段って何だか不思議な感じがしますけど……。

モゲ澤)
お店で売っているものにはみんな値段がついていますよね。たとえばりんご。1個100円で売っているとしましょう。ある日突然、りんごが大人気になったとしたらどうなると思いますか?

編集部)
え~と、スーパーで争奪戦が起こる……とかですか?

モゲ澤)
そうです。そしてりんごの値段が上がるんです。1個100円だったのに150円、200円、300円……と、どんどん上がっていきます。いっぽう、りんごの人気がなくなるとどうなるかというと、値崩れが起きて1個50円とか30円になっちゃうかもしれません。

りんごが欲しい人がたくさんいると、値段を上げても売れる
欲しい人が少ないと、値下げしないと売れなくなる

編集部)
それはイメージできるんですけど、「金利」とはどういう関係があるんですか?

モゲ澤)
「人気によって値段が上がったり下がったりする」という現象は、実はお金にも起きているんですよ。じゃあ、「お金の人気はどうやって判断するの?」って思いますよね。それはズバリ、「お金を借りたい人がたくさんいるかどうか」です。

「金利」とは、お金の人気が高いか低いか、つまり、お金を借りたい人がたくさんいるかどうかで決まるんです。たとえば「100万円貸しますよ」という人がいた場合、どうしても今、その100万円が必要という人は、金利(=年利)10%でも借りるかもしれないですよね。金利10%だと1年後に110万円にして返さないといけないということですが、それでも借りたい人がいるということは、「お金の人気が高い=お金の需要が高い」ということになるんです。

編集部)
なるほど~。お金はただでさえ人気者だと思うんですが、高い金利を払ってまで借りたい人がたくさんいたら、確かに大人気!ということになりますね。

モゲ澤)
反対に「お金の人気が低い=お金の需要が低い」と、「100万円を金利1%で貸しますよ」という人がいても、誰も借りてくれないということが起こります。そうすると「0.5%でいいです!」「0.1%でいいです!」と、金利がどんどん下がっていって……。

お金を借りたい人がたくさんいると、金利が高くなる
お金を借りたい人がいないと、金利が低くなる

編集部)
りんごの値崩れと同じですね! 金利が「お金の値段」というのがよくわかりました。私たちにとって身近な金利というと、銀行預金の金利と住宅ローンの金利ですけど、そこでも同じことが起こっているんですか?

モゲ澤)
その前に銀行のビジネスモデル、銀行がどのようにして利益を得ているかを説明しますね。

銀行はまず、「1%の金利(=利息)をつけてあげるから、うちに100万円預けませんか?」といってみんなから預金を集めます。預けた人は年間1万円ずつ金利(=利息)がもらえるわけですが、銀行にとっては毎年1万円を払うだけだと赤字になるので、預かった100万円をどこかに貸し付けて儲けを生み出さないといけないわけです。

編集部)
銀行もボランティアをしているわけじゃないですからねぇ。

モゲ澤)
その貸し付け先はいろいろあるのですが、そのひとつが住宅ローンなんです。家を買いたいけれど3,000万円とか5,000万円という現金を用意できない人が多数派なわけで、そこに目をつけた銀行が住宅ローンという商品をつくったんです。

「3,000万円が用意できないならうちが貸してあげますよ」「その代わり、うちも商売しているので2%の金利をもらいますよ」ということにすれば、金利1%で集めた預金を元手にして、2%の金利が入る商品が売れるわけです。ざっくりですが、差し引き1%が銀行の利益になるということです。

編集部)
ということは、金利が何%なのかによって銀行の利益が増えたり減ったりするってことですよね? 金利ってめちゃくちゃ重要じゃないですかっ!

モゲ澤)
そうなんです。だから今回はその重要な金利がテーマなんですよ(笑)。少しむずかしい表現でいうと、銀行が預金者に支払う金利(=利息)は、銀行にとってお金の「調達コスト」になるんです。預金金利というコストを払って住宅ローン金利という利益を得ることが、銀行の基本的なビジネスモデルというわけです。

コストを払って預金を集め、貸し出すことで利益を得ている

編集部)
金利の何%という数字は、銀行が自由に決められるんですか?

モゲ澤)
先ほどのりんごの話と同じで、金利も「需要と供給のバランス」で決まるんです。銀行のビジネスモデルには、お金を調達する場面とお金を貸し付ける場面の2つがあるので、この2つを分けて説明しましょう。

まず「調達」の場面ですが、先ほど説明したように、銀行は定期預金などの形でお金を調達します。そしてもう1つ、金融機関同士がお金を貸し借りするマーケットがあって、そこからもお金を調達しているんですね。

世の中にお金がザクザクあまっている状態だと、お金の人気が低いということですから、金利は下がり、預金やマーケットでお金を調達するコストは低く抑えられますし、お金が足りないという場合は、お金の人気が高まって金利がガンと上がるので、調達コスト(=仕入れ値)も上がってしまいます。りんごの仕入れ値が高いと価格も高くなるのと一緒です。

編集部)
金利には、銀行にとってのお金の調達コストが反映されるんですね。

モゲ澤)
「貸し付け」の場面においても基本は「需要と供給」で、住宅ローンを借りたいという人と、貸してあげるよという銀行の数のバランスで金利が決まります。

たとえば供給サイドである銀行の数のほうが多いと値崩れしますし、銀行の数が少ないと値段(=金利)は高くなるってことですね。今の日本は銀行の数のほうが圧倒的に多いので、値崩れしている状態なんです。住宅ローンの金利は今、とても低いですよね。

編集部)
確かに。少し前に家を購入した友人が、1%台後半の金利で住宅ローンを組んだと言っていました。でも、年がバレちゃいますが、昔は金利ってもっと高かった気がするんですけど……。

モゲ澤)
そうなんですよね。今からの日本は、人口がどんどん増えていましたし、自動車とか家電とか、世界的に強い産業があったんです。人も増えて産業も伸びていたので、みんながどんどんお金借りて投資をしたいっていう時代でした。だから、お金の人気、つまり需要がすごく高い時代だったので、金利も非常に高かったんですよね。

編集部)
景気がいいと金利が上がるということなんですね。

モゲ澤)
そういうことです。それが今はどうなっているかというと、20年前と現在で日本は別の国?というくらい状況が違うんです。

編集部)
えっ? なんだか不穏な感じですが、それってどういうことですか?

モゲ澤)
日本の人口は2000年くらいまでは増えていたんですよ。でも今は減っています。人口が減っていくと、生産活動も消費活動もどんどん小さくなってしまいますよね。

それに、今の日本には産業も昔ほど強いものがないんです。物づくりは中国や東南アジアが強いですし、世界的に強いIT産業で覇権を握っているのも、アメリカや中国ですよね。

編集部)
金利の観点から見ると令和の日本はどういう状況なんでしょう?

モゲ澤)
令和の日本は、バブル時代までがんばって蓄えてきた“遺産”はあるんです。お金はあるんですが、それを使う先がないんですよ。もし今の日本に成長産業がたくさんあったら、人を雇ったり研究開発をするための資金を大量に必要とするので、お金の需要が高まって金利も高くなるはずなんですが、今、この国には強烈にお金を必要としている人たちがいないんです。

編集部)
なんだかさみしいですねぇ(遠い目)。

モゲ澤)
令和の今は銀行にお金がだぶついていて、預金は集まるけども運用先がないという状態なんですよね。先ほど説明したように、銀行にとっては預金が集まるとコストになってしまうので、金利を下げてでも貸し出し先を見つけたいというのが実情なんです。

編集部)
金利の仕組みと日本の現状がよくわかりました! 次回、さらにくわしく金利についてうかがいます。

次回へつづく

イラスト/ネコポンギポンギ 取材・文/志賀朝子 企画/サンキュ!コメつぶ

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