住宅ローンと景気はこれからどうなる!?「金利」を知れば、備え方がわかります。超やさしく解説

2023/06/25

ニュースで耳にするお金の単語。なんとなくはわかっていても、説明できるほどには自信がない……そんなあなたに。 この連載では図解も含めてスパッと解説。お金について知ることで、お金とのお付き合いをもっと上手にしませんか?
前回から引き続き「金利」について。気になる住宅ローンに迫ります。

教えてくれる人

モゲチェック塩澤(モゲ澤)さん

本名は塩澤崇さん。オンラインの住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOにして住宅ローンアナリスト。YouTubeチャンネルも人気。SNSではモゲ澤と呼ばれる。

住宅ローンの「変動金利」ってどういうこと?

編集部)
前回はモゲ澤さんに金利とは「お金の値段」のことで、お金の人気が高いか低いか、お金を借りたい人がたくさんいるかどうかで金利が決まると教えてもらいました。さらに今の日本は、お金を借りたいと思う人が少なくて、金利の低い状態が続いているんですよね。

モゲ澤)
そうなんです。4月にはなんと、変動金利の住宅ローンで0.2%台(新規借り入れ・キャンペーン適用金利)というものが登場したんですよ。

編集部)
ひぇ~! モゲ澤さんのお話で言うと、お金の人気が下がりまくりということですね。でも、これから家を買いたいという人には朗報ですよねぇ。ところで「変動金利」とはどういう金利のことでしたっけ……?

モゲ澤)
大きく分けると住宅ローンには「固定金利」と「変動金利」の2タイプがあります。それぞれ金利の決まり方が違うんですよね。

固定金利は10年、20年、35年などと期間を区切り、その間の金利は一定ですよというもの。変動金利は「6カ月の固定金利」と考えてもらえばいいかもしれません。金利が6カ月ごとに更新されていくのが変動金利で、6カ月間は同じ金利、7~12カ月めは次の金利、という形になります。一方で、住宅ローンの毎月返済額は5年ごとに見直す銀行が多いですね。

変動金利の支払い額は5年ごとに見直される
固定金利は、ずーっと一緒

一般的に、固定金利は金利上昇のリスクがなく、ローン契約時に返済総額が決定するので返済計画を立てやすいといわれています。変動金利は固定金利よりも金利がかなり低く、今のような時代には低金利のメリットを享受しやすいといえます。

編集部)
先ほどの住宅ローンのような低金利でお金を貸して、銀行は大丈夫なんでしょうか?

モゲ澤)
前回、私たちの預金をはじめ、いろいろなところからお金を集めてくる「調達コスト」が銀行の金利に反映されることを説明しましたが、この調達コストとはずばり、「短期金利」と「長期金利」と言われるものなんです。聞いたことがあるでしょう? 

編集部)
ニュースで聞いたことがあるけれど、ふだんの生活で意識したことはないかも……。

モゲ澤)
そうですよね。A銀行の普通預金金利やB銀行の住宅ローン金利は、AとBの銀行が独自に決めている金利で、一般の人が日ごろ意識する金利はこちらのことが多いかもしれません。短期金利と長期金利は国の政策に合わせてコントロールされる、各商品の金利を決める際の基準となる金利のことです。

編集部)
金利のボスみたいなものですね。それが2人いると。

モゲ澤)
う~ん(汗)。まぁ、そういうことにしておきましょう。短期金利は普通預金や1年未満の定期預金の金利、変動金利型の住宅ローン、長期金利は1年以上の定期預金や長期固定型の住宅ローンの金利の基準になります。


銀行が資金を集めるときの短期の調達コスト(短期金利)と長期の調達コスト(長期金利)両方とも低く抑えられている今、先ほどのような低金利の住宅ローンを売り出すことができるわけなんですよね。

編集部)
大手銀行の場合は、預金の金利がどこもほぼ一緒だったりしますよね。どの銀行も短期金利と長期金利という同じものを指針にしているから、似たような数字になるんですね。


モゲ澤)
そうですね。でもネットバンクなどでは、大手銀行との差別化のために、戦略的に金利が高めの定期預金や超低金利の住宅ローンを扱っていたりもします。

変動金利で住宅ローンを組んだ人は特に、今後、金利は上がるのか下がるのかということが気になると思うんです。短期金利や長期金利に関するニュースをチェックしていると、大まかにですが今後の動向がうかがえますよ。

編集部)
短期金利と長期金利をコントロールしているのは一体だれなんでしょう?首相ですか?それとも財務大臣?

モゲ澤)
日本銀行(日銀)の総裁です。最近、黒田さんから植田さんに変わったんですよね。日銀とは、お札を発行したり、“銀行の銀行”として民間の金融機関からお金を預かったり、貸し出しをしたりする日本の中央銀行です。中央銀行はその国の唯一の存在で、各国に1つしかありません。ちなみにアメリカの中央銀行に当たるものはFRB(エフアールビー/連邦準備制度)と呼ばれていて、これもよくニュースで耳にしますよね。


編集部)
新しい総裁が「金利、どんどん上げてくぞー!」という人だったらどうなるんでしょう。

モゲ澤)
特に短期金利は日銀の総裁の一存で決まります。日銀の総裁がこうすると言ったらそうなりますし、変えないと言ったら変えません。ただ、今の社会情勢からすると、新しく就任した植田総裁が金利を上げると言い出すことは、ほぼないでしょうね。

編集部)
それはどうしてですか?

モゲ澤)
人口減少や他の国の勢いの影響もあって、今の日本は生産活動も消費活動も小さくなっていると前回説明しました。かつての自動車のような強い産業もなく、大量の資金を借りたいと思う人がいないという、お金の需要が下がっているのが今の日本です。そのため金利もずっと低い状態なのですが、日本は他国と比較しても異例の低金利政策を取り続けています。

編集部)
先ほどモゲ澤さんが、「短期金利と長期金利は国の政策に合わせてコントロールされる」と言っていましたね。

モゲ澤)
はい。本来、日銀がコントロールするのは短期金利のみで、長期金利はマーケットの需要と供給によって決まるものです。ですが、現在は短期金利だけでなく、長期金利も日銀が低く抑える方策をとっています。長期金利までコントロールするというのは、日本だけの異例の状態なんですよね。

金利が低いというのはお金が借りやすくなるということで、企業にとっては人の採用や設備投資がしやすくなるということになります。いっぽう金利を上げれば上げるほどお金は借りにくくなるので、お金を借りて何かに投資するということがどんどん縮小されてしまいます。

つまり、金利を上げるということは経済に対してブレーキをかける行為なんです。人口が減って強い産業もない今の日本で金利をバンバン上げていくと、ただでさえ弱い状況なのにさらにブレーキをかけることになって、経済は止まってしまいます。だから当面は、金利を上げる方向に舵を切ることはないと考えられるんです。

編集部)
住宅ローンの金利が急上昇するリスクが低いのなら安心ですけど、預けた預金にチョロッとしか金利がつかないのはむなしいなぁ。

モゲ澤)
金利って、その国の経済の本質的な強さに連動するものなんですよね。たとえばアメリカ。アメリカは今の日本と正反対の状態なんですよ。

編集部)
正反対ということは、アメリカ経済は今、アゲアゲな状態ということですか?

モゲ澤)
アゲア……そ、そうですね(汗)。アメリカは今、景気が過熱している状態で、わかりやすく言うと熱中症のような状態なんです。景気がよくなりすぎて、このままだと体温が40度とか42度になってしまうので、「冷や水をぶっかける」という意味で利上げをしているんです。経済にブレーキをかけるってことですね。

いっぽう日本は、長らく風邪をひいている状態です。低金利政策によってやさしくやさしく体を温めてあげて、回復をうながしているんです。

景気が過熱したときは、金利を上げて抑えようとする
景気が冷え込んだときは金利を下げて活性化を促す

編集部)
ブレーキをかけなきゃいけないほど景気がいいって、すごいですね。そういえば投資好きの同僚が、アメリカの国債だ、株だと騒いでいたような気が……。

モゲ澤)
次回は、投資の観点から金利について説明しますね。貯蓄より投資が推奨されるようになった今、金利は重要なポイントですから。

編集部)
今回のお話で、短期金利と長期金利、そして日銀の役割について理解できました。次回もよろしくお願いします!

次回へ続く

イラスト/ネコポンギポンギ 取材・文/志賀朝子 企画/サンキュ!コメつぶ

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