「貯蓄より投資」って、本当のところどうなの?損をしないためには、どんなニュースを見たらいい?

2023/07/01

ニュースで耳にするお金の単語。なんとなくはわかっていても、説明できるほどには自信がない……そんなあなたに。この連載では図解も含めてスパッと解説。お金について知ることで、お金とのお付き合いをもっと上手にしませんか?
「金利」については今回がいったん最終回。話題の「投資」について聞いていきましょう。

教えてくれる人

モゲチェック塩澤(モゲ澤)さん

本名は塩澤崇さん。オンラインの住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOにして住宅ローンアナリスト。YouTubeチャンネルも人気。SNSではモゲ澤と呼ばれる。

投資を考えるなら「金利」のことも知っておくべき

編集部)
前回はモゲ澤さんに普通預金金利などの指標になる「短期金利」と、1年以上の定期預金金利などの指標になる「長期金利」について教えてもらいました。また、金利を上げるということはお金が借りにくくなることなので、経済にブレーキをかけるということなんですね。

モゲ澤)
はい。そして生産活動も消費活動も小さくなってきている昨今の日本は、経済がストップしないように金利が低く抑えられている状態なんです。

編集部)
そんな日本では、少し前から「貯蓄より投資」と言われるようになりましたよね。先日100万円を定期預金にしようとして、0.002%という金利にドン引きしちゃいました。1年預けて受け取れる利息がたったの20円(税引き前)って……(涙)。

モゲ澤)
バブルの頃ですが、定期預金金利が6%という時代もあったんですよね。同じ100万円を預けて、1年後に受け取れる利息は6万円(税引き前)。今とは大違いです。

編集部)
定期預金に預ければお得という時代は、とっくの昔に終わってしまったんですねぇ。

モゲ澤)
先ほどのバブル期の定期預金は、複利型なら10年後に100万円がおよそ179万円にもなったんですよ(税引き前)。金融商品の運用方法には「単利」と「複利」の2種類あり、単利型は当初の元本に利息がつくだけの運用、複利型はそれまでについた利息も含めて再運用し、利息が計算されるもののことです。複利型はよく、“利息に利息がつく”とか“雪だるま式に増える”と表現されますよね。

最初に預けた「元本」に対して毎年利息が上乗せされます
利息がそのまま元本として上乗せされていきます

編集部)
金利が高いと複利のパワーもハンパないんですね~。でも今は、そんな高金利の定期預金はどこを探しても見つからないですから、預金以外の金融商品に目を向ける人も多いと思います。やはりそれらも金利が高ければ高いほど有利と考えていいのでしょうか?

モゲ澤)
自分がいかにたくさん儲けられるかという観点で見れば、「金利は高いほうがいい」というのが一般的な考え方です。ただ忘れてならないのは、金利が高ければ高いほどリスクも大きいということなんですよ。

編集部)
リスクというのは具体的にどういうものですか?

モゲ澤)
元本割れをするリスク、つまり100万円分の金融商品が95万円とか90万円とか、それ以下になってしまう危険性があるということです。金利が高い商品は得られる利益(=リターン)も大きいのですが、リスクも大きいんですよね。リスクとリターンは表裏一体。リスクはとても小さいのにリターンが異常に大きいとうたう商品があったら、詐欺の可能性があるので注意が必要です。

編集部)
なるほど~。高金利だからと安易に飛びついてしまうのはダメということですね。でも、そうなると「リスクが怖いから私は銀行の定期預金だけでいい」という考え方もありますよね。

モゲ澤)
投資については、その人のこれまでの経験や、どれくらい家計に余裕があるのかを踏まえなくてはならないので一概にはいえません。でも、リスクをとらないとリターンも得られないので、それだと今の時代は自分の資産を増やせないんですよ。もちろん過度にリスクをとる必要はありませんが、慎重になりすぎると「収益機会損を逃してしまう失」も大きいように思うんです。

編集部)
100万円を投資して1年後に2万円のリターンを得るチャンスがあっても、結局は定期預金を選んで20円の利息しか受け取らないということですね。確かにありがちな気が……。

モゲ澤)
さらに、この先ずっと日本円の資産だけを持っていることがリスクになる可能性もあるんです。’22年の10月には円安が進んで1ドル149円をつけたこともありました。円安はドルなどの外貨に対して円の価値が下がることですから、今後、日本円の定期預金しか持っていないということは、リスクを避けていると言いながら、逆にリスクになるかもしれませんよ。

同じ100万円を持っていても、為替相場によって買えるものが変わってしまうことも

編集部)
本当にそうですね。今まで定期預金一択だったような投資初心者は、まず何から始めるのがいいでしょう?

モゲ澤)
僕がよくおすすめするのは、インデックス型の投資信託ですね。インデックスとは「指標」のことで、日経平均株価など、代表的な指標に連動するように運用される投資信託です。

編集部)
どうしてインデックス型の投資信託がいいんでしょう?モゲ澤さんの推しポイントが知りたいです!

モゲ澤)
ずばりそれは「再現性」が高いからなんです。短いスパンで見ると上がり下がりはありますが、長期的に見るとこの20年ほど、日経平均株価は右肩上がりで伸びています。日経平均株価に連動する投資信託も同じ動きをしますから、長期・積立・分散投資という安全な投資の基本にのっとれば、その恩恵に預かれる可能性は非常に高いといえます。

いっぽう、個別の会社の株取引の場合は、それぞれの会社の業績の分析などが必要です。A社で利益を出し続けているからといってB社でも利益を出せるとは限りません。

編集部)
個別の株取引は投資信託にくらべると再現性が低い分、初心者にはむずかしいということですね。ところで投資信託にも定期預金の金利のような、事前に受け取れる利益が分かる数値はあるんですか?

モゲ澤)
「平均利回り」や「リターン」というのがそれにあたります。投資信託の収益は預金ではなく株式の運用成績から得られるもののため、金利という言葉は使われません。

利回りももちろん大事ですが、「つみたてNISA(2024年以降は新NISAがスタート)」のように国が後押ししている制度の場合、利益に対しての税金がかからないというのも大きいんですよね。初心者のかたは、まずそれに“乗っかってみる”のがいいんじゃないかと思います。

編集部)
さらにもっと投資をしてみたいという人は、次にどんなステップへ進むのがいいでしょう?

モゲ澤)
先ほどのインデックス投資は、つまるところ「その国に投資する」ということなんです。日経平均株価に連動する投資信託を購入することは、日本の代表的な会社の株をまんべんなく買うということなので、「日本の経済成長を信じる」ともいえるわけです。

でも、人口減少や強い産業がないということから、今後の日本の経済成長は予想しづらいところがありますよね。もし今後20年30年と手をつける予定のないお金ならば、そのスパンでぐっと伸びる国はどこだろう?と考えて、その国に投資するという考え方もありますよ。

編集部)
それは何だかワクワクしますね!日本にいながら簡単にどこかの国に投資できますか?

モゲ澤)
たとえば、先ほどのインデックス型の投資信託には、S&P500など、アメリカの代表的な株価指数に連動するものもあって、「つみたてNISA」の対象商品にもなっています。

アメリカは移民の国なので、現在も人口が増え続けています。どんどん人がやって来て、いろいろな産業が生まれる新陳代謝が活発な国は、基本的に“強い”んです。銀行が経営破綻するなど不調はありますが立ち直りも早いので、アメリカに投資するというのはひとつの選択肢だと私は思います。

編集部)
投資に少し慣れてきた人たちが、ほかに注目すべきものはありますか?

モゲ澤)
それこそ「金利」です。金利が分かると、投資で大きく失敗することはないと思います。

編集部)
まさに今回のメインテーマじゃないですか!

モゲ澤)
世の中のお金は、みなさんの預金などの形で大量に金融機関に集まって来ますが、その大量のお金が運用先として何に割り振られるかというのが金融商品の値上がり値下がりに大きな影響を与えるんです。

その割り振られる先というのは大きく2つしかなくて、1つは「株」で、もう1つは「債券」です。債券とは、国や企業などが、投資家などから資金を借り入れるために発行する借用証書のようなもので、期限までに元本の返済と金利の支払いを約束するものです。代表的なものに、国が発行元の国債があります。

金融機関が持つ大量の資金が株に向かうとどうなるかというと、株価が上がります。そして債券は人気が落ちて価格が下がります。低金利の今、債券で儲けることはむずかしいので、大量の資金は「こっちのほうが儲けられそう」と株に行くんですね。

編集部)
低金利時代の今、日経平均株価は上昇傾向にあるということでしたよね。

モゲ澤)
金利が低いということは株高につながるんです。いっぽう金利が上がると債券で運用しようと考える投資家が増えるので、大量の資金が株から債券に移ります。そうすると株価は下落します。金利が上がると株価は下がり、金利が下がると株価は上がる。金利と株はシーソーのような関係です。金利が下がっていく局面は株の買い時ですし、金利が上がっていく局面では、株は買わないほうがいいということになるんです。

株価と金利はシーソーの関係

編集部)
ということは、今後、利上げや利下げというニュースは見逃さないようにしないといけないですね。

モゲ澤)
そうですね。日銀だけでなく、アメリカの中央銀行であるFRB(エフアールビー/連邦準備制度)の動向にもぜひ注目してみてください。

編集部)
金利がこんなに世の中に影響を与えるものだと知って驚きました。これからニュースの見方も変わりそうです。モゲ澤さん、ありがとうございました!

*掲載している情報は23年4月現在のものです。内容は考察のひとつであり、将来を保証するものではありません。運用・投資はご自身の責任で判断ください。

イラスト/ネコポンギポンギ 取材・文/志賀朝子 企画/サンキュ!コメつぶ

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