ふるさと納税はもうお得じゃない!?制度改正で何が変わったのか、お金の専門家が解説
2024/09/02
ふるさと納税の制度が2023年、2024年と改正され、お得度が減ったという声が多く聞かれます。節約アドバイザーの丸山晴美さんは「今後ふるさと納税をどう活用するか、改めて考えるタイミングに来ているのでは」と言います。制度改正で変わるポイントと、私たちが考えるべきことについて聞きました。
なお、今回ご紹介する情報はすべて2024年8月時点の取材情報を基にしています。
監修: 節約アドバイザー 丸山晴美
22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て...
みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。
お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。今回のテーマは「ふるさと納税はどう変わる?」!
2023年10月以降、返礼品は「都道府県内産に限る」ことに
2024年6月、総務省がふるさと納税の制度改正を発表しました。内容の一部は、2023年の改正をさらに厳格にしたもの。そこで、2023年の改正の内容をおさらいしつつ、制度改正の内容を見ていきましょう。
ふるさと納税は注目を引く返礼品を出そうとする自治体と、それを規制しようとする総務省との間で、いたちごっこのような攻防が繰り広げられてきました。その理由は後ほど解説しますが、そのため昨年の2023年10月、以下の2点の制度改正が行われました。
1つは「熟成肉や精米は、都道府県内産に限る」というもの。例えば、オーストラリアから輸入した牛肉は、県内の工場で熟成させたものだとしても返礼品にするのはNG、ということです。
同時に「ドカ盛り」「コスパ最強」「お得」「圧倒的なボリューム」などのうたい文句をつけることも、「適切な寄附先の選択を阻害するような表現」として禁止されました。
もう1つの変更点は「寄附額に占める経費の割合」です。返礼品の原価は寄付額の3割以内、郵送費などの事務手数料を含めた場合は5割以内におさめることが決められました。
2024年10月からは広告もNG。2025年にはポイント付与もなくなる!?
2024年10月からの制度改正では、再び「ドカ盛り」「コスパ最強」など返礼品を強調した宣伝広告の禁止が盛り込まれており、今回はそれに加えて、新聞・テレビ・Webなどでの返礼品を強調した広告やメルマガも禁止に。寄付金額の引き下げや個数の増量といったキャンペーンもNGなど、ルールが厳格化されました。
他にも、1人1泊5万円を超える宿泊施設の利用券を返礼品にする場合は、原則、同じ都道府県内で営業している施設に限るよう見直されます。
中でも今回騒がれているのが、2025年10月に予定をされているポイントに関する改正です。
現在は「さとふる」や「楽天ふるさと納税」などのふるさと納税サイトを通して寄付をすると、サイト独自のポイントが付与されますが、来年10月以降は寄付者に独自のポイントを付与する仲介サイトを通じた寄付募集を禁止することが発表されたのです。
理由は、各自治体がふるさと納税サイトに仲介手数料を支払っているため。総務省は「各サイトがポイント付与をしなければ仲介手数料が減り、各自治体で使える資金が増えるのではないか」との見解を出しています。
これに対し、楽天ふるさと納税では「各地域の自律的努力を無力化するもの」として撤回を求め、現在ネットで反対署名運動をしています。
ふるさと納税のお得が減ったわけでなく、本来の目的に戻っただけ
制度が改正されることで「ふるさと納税のお得度が減る」と感じた人は多いのではないでしょうか。
しかし、ポイントに関しては、ふるさと納税サイトのポイント付与はなくなる予定ですが、クレジットカード払いで付与されるポイントはこれまで同様付与されるため、ふるさと納税をしながらポイ活は可能です。
また、ふるさと納税の本来の意義は、以下のような点です。
・納税者が寄附先を選択できることで、税について考える貴重な機会となる
・寄附を通して「ふるさと」に恩返しをすることで、ふるさと意識の醸成につながる
・各自治体が積極的に魅力を発信することで、地域のあり方を考える貴重な機会となる
返礼品はもともとはおまけ的なもの。それが徐々に返礼品が主役になり、各自治体で返礼品競争が加熱したため、総務省が本来の主旨に戻そうとさまざまな通達・改正をしてきた経緯があります。
「ふるさと納税は節税になる」と思っている人もいますが、それも違います。たしかにふるさと納税をすると寄附金控除適用され、所得税・住民税が控除されます。しかし自分が払う予定だった住民税の一部(自己負担2,000円を引いた残りの金額の3割ぐらい)が返礼品としてもらえるというだけ。
所得税・住民税そのものは減らないため、返礼品分がお得なだけで節税や減税にはなりません。むしろ2,000円払っているとも言えるのです。
つまり、1万円分の寄付をし、2,000円の自己負担分で3,000円相当の返礼品がもらえた場合、差額1,000円分がお得と考えることはできるということです。
これまでは返礼品競争が加熱したことで、還元率が注目され、ふるさと納税がやりくりテクの1つになっていました。しかし、度重なる制度改正で、普通に買った方が安いものも増えてきています。
また、自治体によっては税収入が減ってしまい、行政サービスに影響が出るおそれがある点にも注意が必要でしょう。
年末が近づくと、習慣で「ふるさと納税しなきゃ」と考える人も多いと思います。でも、今年は一旦立ち止まり、ふるさと納税をするのが本当にお得なのか、自分はふるさと納税をどのように活用していくのがいいのかを、改めて考えてみてはどうでしょう?
取材・文/かきの木のりみ