「貧乏クジ」を引いた40代世代、やりくりがきつい理由とは
2019/07/09
年を重ねていき、気づいたらあっという間に40代。銀行口座の残高を見ながら「家計がきつくて全然たまらないのは私だけなのかも」と焦っている人も多いのでは?実はその原因は、自分のやりくりのせいだけではないかもしれません。
<教えてくれた人>
牛窪恵さん
世代・トレンド評論家。インフィニティ代表取締役。「草食系(男子)」「年の差婚」などの流行語を広め、各メディアで活躍中。『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』 (毎日新聞出版)など著書多数。
畠中雅子さん
ファイナンシャル・プランナー。生活者の心と暮らしに寄り添う的確なアドバイスが『サンキュ!』読者にも大人気!新聞、雑誌、講演など幅広く活躍中。『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。
40代の家計がきつい理由は?
家を手に入れ子どももスクスク成長して、人生真っ盛りの40代。
「一方で教育費は湯水のごとく出ていき、住宅ローンの返済もまだまだ続く。なのに、2008年のリーマンショックで一気に不況になったきり夫の給料はほぼ頭打ちという厳しい状況です」(牛窪さん)。
住宅ローン、教育費、低収入、このトリプルピンチこそ40代の家計がきつい理由。
「年齢的にも自分の老後がちらつき始め、不安はふくらむ一方です。それでプチパニックになり、貯めなきゃと思っていても現状維持で精いっぱいで、やりくりが自転車操業になりがち。貯蓄まで手が回らず、先送りにしてしまうんです」(畠中さん)。
住宅ローン
20~30代で家を買った当時は、貯まったら繰り上げ返済して負担を軽くするつもりだったはず。が!思うように返せず、40代の今もローン残高がズッシリ。このままでは定年退職まで完済できるか危うい⁉
教育費
学費や塾代など、子どもが成長するにつれ出費が増大。家計が苦しくても子どもの将来を考えると削れず……。今の40代は中高生がいて今まさに大変な人と、晩婚・晩産でこれから貯めなきゃと焦る人が混在。
増えない収入
不況のあおりで就活に苦戦し、涙をのんで非正規雇用で働き始めた人も多い世代。たとえ正社員でも昔のような右肩上がりの給与は夢のまた夢。課長以上の役職は残業手当がない会社が多いのも40代には厳しい現実。
お金が貯まらないのは時代のせい!?
人金銭感覚は時代の影響を強く受けるもの。20〜50代の消費傾向とその背景を、日本の経済史とともに振り返ってみると、40代がなかなか貯まらないのは時代のせいでもあったんです!
20~30代「コスパ世代」
大不況期に子ども時代を過ごしたため金銭感覚が養われ、コスパを追求する世代。欲しい物にも安易に飛びつかず、ネットで価格を比べ維持費も考えて買う賢い消費者。SNSでお得情報をキャッチするのも得意。
40代「貧乏クジ世代」
ウハウハの好景気は子ども時代に終わり、大人になったら就職難。親は人口が最も多い団塊の世代で国の対策が追いつかず自宅介護が増えるとの予想。つまり、子育て真っ最中に親の介護も担う可能性大で、まさに貧乏クジを引いた世代。結婚後、家計を預かるころに100円ショップなど安くていい物が次々に登場。それらを活用するのが上手な半面、ちょこちょこお金を使う傾向が!
バブル開始当時、40代は小・中・高校生。「大人が消費しまくる姿を見て育ったので、お金を使うことに罪悪感は薄め。特に45~48歳は、生活はつつましくてもイベントやこだわる物にはど~んと出費する。『隠れバブラー』が多いんです」(牛窪さん)。
でも、社会人になったら大不況の真っただ中。結婚後もやりくりに四苦八苦……。
50代「THEバブル世代」
今や幻のタクシー券が飛び交い、日本中が浮かれた時代と青春時代がドンピシャで重なった世代。今も自分磨きや美しくあるための出費は惜しまない!子どもが手を離れ始めて、教育費のゴールが見えてきた人も。
日本の経済がわかるミニ年表
40代の人の親世代が生まれた戦後から現在まで、日本経済が歩んだ道をダイジェスト版でわかりやすく紹介します。
1945(S20):終戦後の第一次ベビーブーム到来
復員兵の結婚・出産ラッシュで誕生した団塊の世代を親に持つのが40代。
1972(S47):今年49歳の人が誕生
1981(S56):今年40歳の人が誕生
1986(S61):バブル期に突入
89年末に日経平均株価が3万8957円の史上最高値を記録。
1989(H1):平成時代がスタート
1990(H2):「オヤジギャル」が流行語に
1991(H3):バブル崩壊
膨らみ続けた土地や株の価格がはじけて景気が急降下。経済に大打撃。
1993(H5):第一次就職氷河期
1994(H6):「同情するなら金をくれ」が流行語に
1997(H9):山一証券が破綻
日本有数の大企業が経営破綻で突然廃業。平成の大不況を象徴する大事件。
2006(H18):「格差社会」が流行語に
2008(H20):リーマンショック
米国の投資銀行の経営破綻から世界規模の金融危機に発展。日本株価も大暴落して景気が悪化。
2009(H21):「草食系男子」が流行
2019(R1):令和時代がスタート
すべての原因が「時代」にあるとはいえませんが、人の金銭感覚は時代の影響を強く受けるもの。バブルの恩恵を受けられなかったのに、「お金はつかっていいもの」という感覚のまま大不況時代に突入したことも、貯まらない理由のひとつかもしれませんね。
参照:『サンキュ!』7月号「『もう40代なのに貯金がない!』ーーと思ったら読む本です」より。掲載している情報は19年5月現在のものです。イラスト/髙栁浩太郎 構成/竹下美穂子 取材・文/神坐陽子 編集/サンキュ!編集部
『サンキュ!』最新号の詳細はこちら!