「トマト」を食べすぎるとどうなる?知っておきたいトマトのメリット&デメリット
2024/12/26
トマトに含まれる栄養素には、健康によい作用を持つものが多い反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、トマトの食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。
健康増進やストレスに負けない体に!トマトを食べるメリット
トマトは赤などに色づいた実を食べるナス科の野菜です。
大きく分けると、皮が透明で薄く酸味や香りが少ない生食に適したピンク系と、皮が赤くて厚く酸味やうま味が強い調理向きの赤系のトマトがあります。
トマトは加工されてケチャップ、缶詰、トマトジュースなどとしても日常的に利用されています。
そんなトマトには、おもに次のような栄養素が多く含まれています。
・ビタミンC
・ビタミンE
・カリウム
・葉酸
これらには、日焼けを防ぐ、ストレスや風邪などの抵抗力を高める、血管を健康に保つ、老化を防ぐ、血圧を下げる、貧血や動脈硬化を防ぐ、などといった働きが期待できますよ。
このほかにも、リコピン(リコペン)、クエン酸、GABA(ギャバ)なども含まれています。
リコピンはトマトの赤い色のもとであり、強い抗酸化作用によって老化防止、高血圧や脂質異常症の改善などに期待ができます。また、クエン酸は酸味のもとで、疲労回復や筋肉痛の防止、ミネラルの吸収を促進するなどの働きがあります。GABAはγ(ガンマ)-アミノ酪酸というアミノ酸の一種で、ストレスを低減したり睡眠の質を向上させるのに役立ちます。
ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざががあるほど、高い栄養価が評価されているトマト。上手に取り入れることで健康増進や美容に役立てることができるでしょう。
冷えやアレルギーも?トマトを食べすぎるデメリット
多くのメリットを得られるトマトですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります…。
体が冷えやすくなる
トマトは9割以上が水分で占められています。その水分とカリウムの多さから、食べすぎると利尿作用によって体熱が放出されやすくなり体を冷やすことが考えられます。
暑い時期に適度に食べるのであればほてりを鎮めるのに役立ちますが、冷えた場所で食べたり、ほかの冷たいものといっしょに食べる場合は作用が強まりやすくなる可能性があるため注意が必要です。
冷えは自律神経の働きを乱したり、内臓機能や睡眠の質を低下させてしまいます。
とくに、冷房に当たると体調をくずしやすいかたや、夏場でも手足やお腹が冷えているかたは食べすぎを控えるようにしましょう。
下痢や便秘などの不快な症状を招く
トマトには食物繊維も含まれていて、とくに皮や種などに多く含まれています。そのため、トマトを丸ごと多く食べてしまうと、胃腸が弱っているかたは下痢や便秘の原因になることがあります。
また、胃腸症状がなくても、消化・吸収が不十分で便に赤い皮や色素のリコピンなどが混じって出てくることもあり、血便と勘違いしてしまうケースも考えられます。たくさんトマトを食べた後は、そういった変化もあることを覚えておきましょう。
アレルギー症状が起こる
トマトには、スギ、ヒノキ、イネ科植物の花粉に似た構造のたんぱく質が含まれているといわれており、花粉症を発症している人が食べると15分以内に口・のど・皮膚を中心にアレルギー症状(イガイガ感、腫れ、かゆみなど)が起きることがあります。
これは口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)と呼ばれ、腹痛や下痢などの胃腸症状、鼻水、くしゃみ、咳、喘息、呼吸困難、まれにアナフィラキシーショックを伴うこともあるため、花粉症のかたはとても注意が必要です。すでに何らかの症状が出ているかたが食べ続けてしまうことで、重症化するともいわれています。
ただし、生のトマトを避けて加熱したものや加工されたものを選んだり、花粉症の治療をすることが有効とされているので、心配なかたはこのような対処をすると安心でしょう。
また、同じような症状が見られるため間違えやすい、仮性アレルゲンというものもあります。これは、トマトに含まれるヒスタミンなどのいくつかの成分によって引き起こされるため、食べすぎた場合には花粉症ではないすべての人にも起こりえます。
肌が黄色くなる
トマトに含まれているリコピンやβ-カロテンは、とりすぎることで手のひらや足の裏などが黄色くなる柑皮症(かんぴしょう)の原因になることもあります。
これはカロテン血症と呼ばれることもあり、一時的に角質や脂肪組織などにリコピンなどの色素成分が沈着され、部分的に黄色く見えてしまうのです。症状が強くなると、顔などの全身の皮膚が黄色く染まることも…。
白目まで染まる黄疸という病気と間違われやすいですが、柑皮症自体は健康に害はありません。ただし、症状が収まるまでには食べすぎを止めてから1カ月以上かかるといわれています。
体にいいからといって、毎日極端に多くのトマトを食べないようにすることが大切です。
尿路結石の原因になる?
いくつかのサイトでは、トマトに含まれている「シュウ酸」というアクのもとによって、尿路結石の原因になると指摘されていることがあります。
しかし、シュウ酸が多いとされるほうれん草と比べるとわずかに含んでいる程度であるため、トマトのみでシュウ酸のとりすぎにはなりにくいと筆者は考えているため、ここでは指摘しておりません。
トマトを楽しむ量とタイミングは?
上記のとおり、トマトに含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、トマトを楽しむ量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
トマトの食べすぎによって冷えや下痢・便秘などの胃腸障害を起こすのは、そのときの体調や体質によって量が異なります。そのため、それらを予防するためには、体調が優れないときは控えめにしておくのが安心です。
なお、カリウムの摂取量については、サプリメントなどで極端にとるようなことがなければ過剰摂取の心配はないとされています(1日の摂取目標量である成人男性3,000mg以上、成人女性2,500mg以上は、トマト1.2~1.4kgに相当。ミニトマトはもっと多く含まれるため、0.9~1kgに相当。缶詰やトマトジュースは、両者の中間に相当。人によっては摂取できてしまう量である)。
ただし、腎機能が低下している人や高齢者の場合、余分なカリウムが尿へ排泄されにくくなります。こういったかたは、カリウムのとりすぎが健康に影響を及ぼすことがあるので、ほかの食品からもカリウムを摂取することを考慮し、上記括弧内で示した半量以下の摂取に留めたほうががいいでしょう。
また、リコピンの効果を期待する場合、生のトマトであれば1日22.5mg以上、トマトの加工品であれば15mg以上を継続的に摂取するのが望ましいとされています。(※1)
一般的なトマト100gには3~5mg、ミニトマトは8mg、トマトジュースは10mg程度といわれていることから計算すると、それぞれを満たすためには450~700g(3~4個分相当)、280g(19個分相当)、150g(コップ1杯程度)摂取すればいいことがわかります。(※2)
これを超えて飲食する場合は、とりすぎといえるでしょう。
ただし、リコピンはトマトだけではなく、金時にんじん、スイカ、ピンクグレープフルーツ、柿、マンゴーなどにも含まれているため、これらも食べるのであればトマトの量は減らしてもいいでしょう。
なお、品種改良された高リコピン含有トマトや、それを使ったり濃縮して作られたトマトジュースの場合は、示した数量よりも少なくても十分なリコピンを摂取することが期待できます。
※1…多くのサイトでは「15mg」の数値のみ取り上げられていることが多いですが、ここでは根拠となるデータをもとに「22.5mg」という数値も提示しています。
※2…ここでは、生で食べる場合を想定して算出しています。また、トマトは1個200g、ミニトマトは15gで算出しています。括弧内の個数は、実際の1個あたりの重さによって変動します。
どのタイミングで食べるのがいい?
トマトやその加工品を多く扱うメーカーが調べた研究データでは、朝昼夕のうち朝の時間帯に摂取したものが一番リコピンの吸収率が高かったと報告されています。
そのため、おすすめのタイミングは「朝食」にとり入れることです。
なお、リコピンは食べ方によっても吸収率を高めることができます。
サラダなどに生のまま使われることが多いですが、より効率的にとりたいのであれば次のような調理法を取り入れてみましょう。
・ミキサーなどで滑らかにし、ポタージュ、ガスパチョなどのスープのベースに使用する
・脂質を多く含む食材(肉、魚など)、油脂類、牛乳や乳製品と組み合わせる
・にんにくや玉ねぎと組み合わせる
・長時間加熱する(煮込み、オーブン料理など)
ただし、トマトだけに主眼を置き、ほかの野菜をほとんどとらない、ということがないように。なぜなら、トマトだけでは体に必要な多くの栄養素を十分にとるのはむずかしく、さまざまな野菜を組み合わせることで不足を避けてバランスよくとりやすくなるからです。
このように、メリットばかりでなくデメリットがあることも認識し、ご自身の体調や好みに合わせて賢くトマトを食生活に取り入れてみてくださいね。