紅葉する山と空

「小春日和」はじつは要注意な天気!?なぜ春には小春って言わないの?気象予報士が解説

2023/11/17

晩秋から初冬にかけての穏やかな晴れの日を「小春日和(こはるびより)」と言い、季節のあいさつや手紙などでよく使われます。

小春日和は春ではなく秋冬に使う言葉だというのは、近年ネットなどで話題になったことからかなり知られるようになってきましたが、そういえば、なぜこの言葉を今の時期に使うのでしょうか。

また、専門家によると小春日和はその響きの雰囲気とは裏腹に、注意が必要な天気だというのです。

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、誰かに教えたくなる「小春日和」の豆知識を解説してもらいます。

サンキュ!STYLE 取材班メンバー。気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を...

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旧暦10月の名前

黄色いイチョウの葉と青空

小春日和の「小春」は、旧暦10月(現在の11月頃)の別名のひとつです。

もともと日本では古くから、12カ月それぞれの月について様々な別名がつけられてきました。

10月のことを「神無月(かんなづき)」と表現するのを目にしたことがある人は多いかもしれませんが、ほかにも「初霜月(はつしもづき)」や「開冬(かいとう)」など、数えきれないくらいの別名があります。

その多くが「霜」や「冬」といった、いかにも寒そうな漢字が使われていて、昔の人が冬の入り口である陰暦10月に抱いていたイメージが窺えます。

一方で、まだ完全に冬になったわけではないため、時々やや暖かい日もやってきて、それを「ちょっとした春のよう」と感じて「小春」という別名も加えたのかもしれません。

時代とともに「小春」という呼び名はあまり使われなくなっていき、「ちょっとした春のような日」を表す「小春日和」という言葉だけが現代まで残ったようです。

「小春日和」と言っていいのはいつからいつまで?

巻雲と青空

「小春」は旧暦10月ですから、今年2023年のカレンダーに合わせると11月13日から12月12日にあたります。

この期間であれば手紙のあいさつなどに「小春日和」を使ってもよいことになるわけですが…、そもそも旧暦の何月何日が今の暦の何月何日にあたるかは、毎年少しずつ変わります。

それに合わせて毎年、「今年はいつから小春日和って言っていいんだっけ?」とわざわざ確認するのも、ちょっと風情のない話に感じますよね。

現在では小春日和のことを「晩秋から初冬にかけての穏やかな晴れの日」と説明する辞書も多いので、あまり細かい日付にとらわれず、「最近冷える日が多くなってきたけど、今日は久しぶりに穏やかで暖かい!」と感じるのであれば「今日は小春日和」と言ってもさしつかえなさそうです。

小春日和の注意点は?

黄色いイチョウの梢と青空

小春日和は穏やかな晴れの日ですから、日中は上着がなくても過ごしやすく、快適な陽気の日です。

ところが、「穏やか」――つまり風が弱くて、かつ「晴れ」というのはこの時期、朝晩に注意が必要になってきます。

少し専門的な話にはなりますが、地球は日々、昼間に太陽からもらった熱を、夜から朝までの間に宇宙へと放出するというサイクルをくり返しています。この放出される熱の量は、風が弱ければ弱いほど、そして晴れていればいるほど、多くなるのです。

つまり、小春日和は朝晩冷えやすい条件がちょうどそろった日。

昼間は薄着で過ごせても、朝晩はしっかり着込まないといけない日なのです。

「小春」が終わると…

枯れ枝と青空

小春つまり旧暦10月が終わると、旧暦11月(現在の12月頃)はもう本格的な冬です。

旧暦11月の別名は「雪見月(ゆきみづき)」や「広寒(こうかん)」、そして「風冬(ふうとう)」など、冬の厳しさを連想させるものばかり。

寒さはもちろん、雪や路面凍結など様々なものに対策が必要な季節になります。

昔の人はもしかしたら、いつ何に準備すべきか忘れないように、それぞれの月にいろんな呼び名をつけていたのかもしれません。

現代に生きる私たちも、冬に向けて準備が必要なことに変わりはありません。

小春のうちに冬支度をしっかりしておいて、少しでも快適に冬を迎えましょう。


■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

 
 

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