雪の上の温度計

「北ほど寒い」わけじゃない!日本一寒い場所が"寒い理由"から学ぶ生活の知恵を気象予報士が解説

2024/01/18

日本で一番寒い場所は?と聞かれたら「そんなの北海道の北の先っぽのほうでしょ?」と思うかもしれません。
しかし実際の気温データを調べてみると、「北ほど寒い」という状況にはなっていないようです。

今回は、1年でもっと冷え込む時期を迎えるにあたり、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、寒さに備えるための豆知識を教えてもらいます。

サンキュ!STYLE 取材班メンバー。気象予報士として講演・執筆を行うかたわら、野菜たっぷりの作り置き料理を...

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一番寒い場所は「一番北」ではない

北海道の地図

日本のなかでもっとも寒い都道府県と言えばもちろん北海道なのですが、北海道のなかで一番寒い場所は、じつはその北端にはありません。

北端どころか、北海道のほぼど真ん中、旭川でかつて観測されたマイナス41.0度というのが、日本の歴代最低気温なのです。

ちなみに、旭川を含む、北海道の中央あたりのエリアは「上川(かみかわ)地方」と呼ばれますが、じつは日本の"低い気温ランキング"の1位~20位のうち半分以上が上川地方に含まれています。

つまり、旭川だけが特殊なわけではなく、全体の傾向として「北」にある地方よりも「真ん中」にある地方のほうが寒いということなのです。

なぜ「真ん中」は寒い?

海

「真ん中」つまり内陸地域が寒い理由は、なぜ「真ん中でない地域」が寒くなりにくいかを考えるとわかります。

「真ん中でない地域」は、「真ん中」と比べ圧倒的に海に近い場所です。

そして、水には温まりにくく冷めにくいという性質があり、冬の冷え込む日でもなかなか温度が下がりません。そのためまるで緩衝材のように、空気の温度変化を和らげてくれるのです。

つまり海に近ければ近いほど、真冬でも空気が冷えにくくなります。

逆に、海岸線から離れて「真ん中」に近づくほど、効率的に冷えやすくなってしまうのです。

北海道だけじゃない!「真ん中」は冷えやすい

沿岸部より内陸部のほうが効率的に冷えやすいという性質は、もちろん北海道以外の都府県でもあてはまります。

また、水の性質は「温まりにくく冷めにくい」ということですから、じつは夏の場合は沿岸部ほど気温が低く内陸部ほど気温が高い、ということ。つまり内陸地域は沿岸と比べ、夏暑く冬寒いという傾向にあるのです。

「暑さも寒さも沿岸より厳しいなんて損な気候だなぁ」と思うかもしれませんが、寒暖差が大きいことで野菜や果物が甘くおいしく育つという利点もあり、本州のほぼ「真ん中」に位置する長野県がフルーツ王国として知られている一因にもなっています。

1年でもっとも冷え込む時期に備えよう

英国の新しく建てられた住宅団地の長い私道から見た霜の生け垣の浅い焦点。
Nickbeer/gettyimages

たとえば最近引っ越して以前よりも内陸側に住むようになった人は、これからの時期は要注意。

1月後半から2月前半にかけては例年、1年でもっとも冷え込む時期ですから、今までは経験しなかった路面凍結や水道管の凍結に見舞われるおそれもあります。

また、旅行で知らない土地に泊まるときも、「自分の住んでいる地域より少し南にあるからさほど寒くないだろう」と思っていると、たとえそこが南側にあったとしてももし内陸側だった場合は、自分の地域より冷え込むことがあります。

かつて旭川でマイナス41.0度という気温が観測されたのは1月25日。まさに1年でもっとも冷え込む時期のさなかでした。

想定外の冷え込みにあせることがないよう、「真ん中は冷えやすい」と覚えて過ごしてください。

参考データ

気象庁HP「歴代全国ランキング」

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

 
 

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