【保存版】38歳で東大に入学した元国税局芸人に、税金について超わかりやすく解説してもらった!

2023/10/30

ニュースで耳にするお金の単語。なんとなくはわかっていても、説明できるほどには自信がない……そんなことありませんか?この連載では、図解も含めてスパッと解説。もやもやとお金の不安を、少しでも減らしたいと思います。
第2回目は税金についてです。

<教えてくれる人>
さんきゅう倉田さん
元東京国税局職員という異色の吉本芸人。税金やお金に関する情報発信が話題になり、執筆や講演などをこなす。最新刊は『元国税局芸人が教える わかる、得する! 超やさしい税金の教科書』(Gakken)。’23年に東京大学文科二類に合格し、東京大学に在学中。1985年神奈川県生まれ。

編集部)
給与明細を見て「こんなに税金が引かれている~」と毎月がっくり。元国税局職員の倉田さんに聞くのもなんですが、税金ってやっぱり必要なものですよね……。

さんきゅう倉田さん)※以下敬称略
税金を納めることは、勤労・教育とともに、国民の三大義務のひとつということはもちろん知っていますよね?

編集部)
はい(小声)……。

倉田)
怒っているわけじゃないですよ(笑)。自分たちが暮らしている地域をちょっと想像してみてください、道路や橋、学校や図書館など、身の回りには税金でつくられたものがたくさんありますよね。「あって当然」という感覚の人が多いかもしれませんが、そういうものは、みんなで出し合ったお金でつくられているんです。

編集部)
みんなで出し合ったお金=税金ということですね。

倉田)
はい。税金のおかげで立派な施設が使えたり、さまざまなサービスが受けられたりするわけで、税金が「生活していくための会費」と言われているのはそのためなんです。

編集部)
「会費」と言われると、なんだかスッと腑に落ちますね。

倉田)
自治体が運営するプールやテニスコートなどの利用料がとても安いのも税金のおかげ。自治体はわざわざ「安く使えていますよ」と言ったりしないですけどね。今の私たちがこういう恩恵に預かれるのは、自治体のおかげというより、上の世代の人たちが長年、税金を納めてきてくれたからです。

編集部)
今の便利な暮らしは、私たちの両親、祖父母、曾祖父母たちが一生懸命働いて税金を納めてくれたから……か。給与明細を見て、ささくれ立っていた気持ちが少しやわらぎました。

倉田)
税金がきちんと徴収できないと、救急車を利用するのに高額な費用が必要になったり、ゴミの収集になかなか来てもらえなかったりと、毎日の暮らしのさまざまな場面で弊害が起こってしまいます。

編集部)
それは困ります~!!そう考えると税金の大切さが実感できますね。ちなみに税金には、「生活していくための会費」という以外の役割とか目的があったりするんでしょうか?

倉田)
よくぞ聞いてくれました。ふだん私たちはあまり意識していませんが、税金には以下のような役割もあるんですよ。

(1)富の再分配

所得や資産などが多い人により多くの税金を納めてもらい、それらが少ない人の税金は少なくすることで、国民の間の富の格差を縮めて、社会の安定化や公平な社会秩序を維持する。

(2)景気調整

景気がよいときは所得が増え、それにともなって税収が増加。不況になると所得が減り、税収も減少。これによって民間需要(国民の消費支出や企業の設備投資など)が自動的に調整されるという、景気の調整弁としての役割を担っている。

(3)経済政策の推進

「条件に当てはまる人の税金を免除する」といった税額控除や、「(消費税10%のところ)食料品の消費税は8%」といった減税措置によって、経済政策を補充する。

(4)国内産業の保護

輸出に対して補助金を出したり、外国からの輸入に関税をかけたりすることで、輸出を促進し海外産業から国内産業を保護する。

編集部)
思った以上に税金が担う役割が多くてびっくりです。倉田さんってもしかして、子どものころから税金とかお金とかが大好きだったとか?

倉田)
いや、そんなことは全然なくていたって普通でしたよ。国税局に入ったのも、公務員試験をいろいろ受けて、受かったなかで興味が持てそうだなと思ったのが国家公務員の国税専門官だったんです。

編集部)
その後、退職されてからお笑いの養成所に入ったんですよね。どうして芸人になろうと思ったのですか?

倉田)
国税局での仕事は、専門性もやりがいもあって面白かったんです。でも、もっと面白い仕事がないかなって考えたときに、それが芸人だった。在職中はただ仕事をこなすだけだったのですが、芸人になってから税金について熱心に勉強するようになりました。

編集部)
現役の職員のときではなく、芸人になってからですか?

倉田)
ほかにたくさん芸人がいるなかで、他の人と同じようなことをしていたら先がないなって思って、ネタの中に税金の知識を入れることにしたんです。間違ったことは言えないから、ネタづくりのために猛烈に勉強したっていう(笑)。

編集部)
おぉ~。元国税局職員の倉田さんがさらに知識をつけたら鬼に金棒ですね!さっそくですが、私たちが知っておくべき税金にはどんなものがありますか?

倉田)
税金には、国に納める「国税」と地方自治体に納める「地方税」があって、それぞれ「直接税」(納税者が直接納める)と「間接税」(納税者が負担した税金を事業者が納める)に分かれます。全部は紹介しきれませんが、代表的な税金には以下のようなものがあります。

【国税/国に納める税金】

●直接税
所得税:所得にかかる税金
復興特別所得税:東日本大震災の復興のための特別税
相続税:亡くなった人から財産を受け継いだときにかかる税金
贈与税:生前に財産を譲り受けたときにかかる税金
法人税:会社などの法人にかかる税金
●間接税
消費税:物の購入やサービスの利用などにかかる税金
酒税:お酒にかかる税金
揮発油税(ガソリン税):ガソリンにかかる税金
たばこ税:たばこにかかる税金
登録免許税:土地や建物を登記するときにかかる税金
印紙税:特定の文書作成にかかる税金

【地方税/地方自治体に納める税金】

●直接税
住民税(県民税・市町村税):前年の所得にかかる税金
自動車税・自動車重量税:自動車を所有または登録したときに排気量や重量に応じてかかる税金
不動産取得税:土地や建物を購入したときにかかる税金
固定資産税:個人や法人などが所有する固定資産(土地、建物、機械設備など)にかかる税金
法人事業税:会社などの法人が行う事業にかかる税金
●間接税
地方消費税:消費税を支払うときにあわせて課税される都道府県税
ゴルフ場利用税:ゴルフ場のコースでプレイするときにかかる税金
入湯税:温泉施設などで入浴したときにかかる税金

編集部)
税金の種類、たくさんありますがこれが全部ではないんですね~(汗)。

倉田)
自治体が独自に導入している税金もあるので、これが全部ではないんです。たとえば東京都、大阪府、京都市、金沢市などには、観光振興のための「宿泊税」というものがあって、宿泊者から宿泊料金と一緒に徴収して、後日、宿泊施設の経営者が地方自治体に申告・納付します。

編集部)
「納めた記憶がない……」とアセりましたが、間接税だからですね。

倉田)
東京都豊島区では、「狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)」というものが導入されています。豊島区は全世帯数における単身世帯の割合も、全住宅数におけるワンルームマンションの割合も東京23区でもっとも高い自治体で、ファミリー向けの住宅が少ないんです。偏った住宅事情を改善するために、建築主に課税するこんな税金が生まれました。

編集部)
税金ってまだまだ奥が深そうですね!倉田さん、ありがとうございました。次回、さらにくわしく私たちの身近な税金についてうかがいます。

次回へつづく

イラスト/オガワナホ 構成・文/志賀朝子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

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