児童扶養手当のほかにもいろいろある!シングルマザー家庭をサポートする「公的手当」

2019/02/14

離婚や死別などの理由でシングルマザー(シングルファーザー 以下略)になったら、この先の子どもとの暮らしにさまざまな不安があると思います。なかでも経済的な不安はとても大きいもの・・・・・・。

そんなシングルマザー家庭を支援するために、国はいくつかの手当を用意しています。実際にどのような手当が受けられるのか、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に詳しく教えていただきました。

シングルマザー家庭の平均収入はどれくらい? 

平成28年度の厚生労働省の調査によると、シングルマザーの家庭は約123万世帯。年間の就労収入(働いて稼いだお金)は約200万円で、月にすると約17万円ということになります。

また、離婚した人のうち、養育費の取り決めをしている人は44.2%と半数にも満たないことが明らかに。さらに、取り決めをしていても、その後なにかしらのトラブルが原因で、途中から養育費をもらえなくなってしまうケースも少なくないようです。

子どもの年齢や人数など家庭の状況にもよりますが、この調査結果を見ると、やはりシングルマザー家庭は経済的に不安定になる傾向が高いといえるでしょう。

このような不安を解消するために、国はシングルマザー家庭を対象にしたさまざまな手当を設けています。すでにシングルマザーとなっている人、今後離婚する可能性がある人は、ぜひチェックして制度を上手に活用してください。

シングルマザー家庭の手当【子ども関連のお金】

家計負担のなかでも大きな割合を占めるのが、子どものためのお金。特に、高校・大学進学の教育資金は子どもが小さいうちからしっかり貯めておきたいものです。

まずは、子どもにかかわる手当について解説しましょう。

「児童手当」

0歳から中学校卒業までの子どもがいる家庭を対象に支給されるお金です。

※子どもを養育している人の所得が一定を超える場合は、「特例給付」として子ども1人につき一律で月額5000円が支給されます。

「児童手当」はシングルマザー家庭にかかわらず、どの家庭も平等に受け取ることができるお金。支給総額は子ども1人につき198万円にもなるので、大学などの進学費用として積み立てておくことをおすすめします。

◎「児童手当」について、もっと詳しく知りたい人はこちらをチェック!

「児童扶養手当」

シングルマザー家庭の家計をサポートするために、国から支給されるのが「児童扶養手当」です。申請前の分は支給されないので、シングルで子育てをしていくことが決まったら、なるべく早めに申請しましょう。

「一部支給」では、所得によって支給額が細かく決められています。
所得制限を超えると減額されたり、手当が受けられないケースもあるので、申請するときに市区町村の役所で確認をしてください。

◎「児童扶養手当」について、もっと詳しく知りたい人はこちらをチェック!

「児童育成手当」

シングルマザーをはじめとする1人親世帯に対して、一部の自治体が独自に行っている支援制度です。
例えば、東京都の新宿区や練馬区、荒川区では、子ども1人につき月額1万3500円(子どもに一定の障害がある場合は月額1万5500円)が支給されます。

「特別児童扶養手当」

子どもの心身に一定の障害がある場合、20歳になる月まで支給される手当です。子どもの状態によって1級または2級に認定され、その等級に応じた額が支給されます。

【支給額】
● 1級認定・・・・・・月額5万1700円
● 2級認定・・・・・・月額3万4430円
※ 平成30年4月より適用

「幼児教育の無償化」

19年10月の消費税引き上げの時期に合わせて、「幼児教育の無償化」がスタートする方向で調整に入りました。
これは1人親世帯に限らず、幼稚園や保育所などに通う3〜5歳の子どもがいるすべての家庭が対象です。また、保育所などに通う0〜2歳の子どもの利用料は、住民税非課税世帯を対象に無償化されます。

「遺族年金」

夫と死別した妻と子どもに対し、生活の支えとして支給されるのが「遺族年金」です。
国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があり、亡くなった人が生前どの年金制度に入っていたかによって受け取る金額が異なります。

【支給額の例】
「18歳未満の子どもが2人いるシングルマザー家庭」を条件とすると、亡くなった夫が自営業の場合・会社員の場合で、それぞれ下記の金額がもらえます。

● 自営業世帯(遺族基礎年金)・・・・・・年額 約123万円
※亡くなった夫の年収の額は関係しません。

● 会社員世帯(遺族基礎年金+遺族厚生年金)・・・・・・・年額 約175万円
※ 年収500万円の場合。

シングルマザー家庭の手当【生活支援のお金】

続いては、住まいや生活費に関連する手当を紹介しましょう。

「1人親世帯の住宅手当」

20歳未満の子どもを養育している1人親世帯では、家賃補助などの手当を受けられることがあります。
手当の内容や支給の条件は自治体によって異なるので、市区町村の役所で確認をしてください。

「寡婦控除(かふこうじょ)」

「寡婦控除」とは、離婚や死別、生死不明などの理由で夫がおらず、その後再婚をしていない女性に対して所得税の負担を軽減するもの。控除額は「一般の寡婦」または「特別の寡婦」で次のように異なります。

【控除金額】
・ 一般の寡婦・・・・・・27万円
・ 特別の寡婦・・・・・・35万円

多くのシングルマザーは「特定の寡婦」に該当し、35万円の控除が受けられます。
ただし、一度も婚姻歴のないシングルマザーは「寡婦」とはみなされず、「寡婦控除」は適用されません。

「未婚の1人親支援(住民税軽減・給付金)」

婚姻歴のないシングルマザーは、先にご紹介した「寡婦控除」を受けることができません。これでは同じ1人親世帯でも税負担に大きな差が生じてしまいますね。
そこで、19年度の税制改正では、未婚の1人親を対象に住民税の負担を軽減する見通しとなりました。さらに、低所得の1人親に対しては年に1万7500円の給付を行うことも予定されています。

「生活保護」

生活に困窮している世帯を対象に、国が支援と自立のための援助を行うのが「生活保護」。対象は1人親世帯に限らず、世帯全員の収入や貯蓄など、国が決めた基準を下回る世帯に支給されます。
「生活保護」を受けるためにはかなり厳しい条件がありますが、生活費に本当に困ったときは、1人で悩まず役所などに相談しましょう。

シングルマザー家庭の手当【就業支援のお金】

シングルマザーの就業に関連する手当もあります。
上手に利用すれば就職先の選択肢が広がり、収入アップも見込めるかもしれません。

「自立支援教育訓練給付金」

20歳未満の子どもがいるシングルマザーが就職のために教育訓練講座を受講し、修了した場合に受講料の一部が支給される制度です。
教育訓練講座とは、厚生労働大臣が指定するもので、さまざまな資格やスキルアップのための講座があります。

「高等職業訓練促進給付金」

看護師や介護福祉士、保育士といった専門性の高い資格を取得するために、1年以上養成機関で学ぶ場合、3年間を上限に給付金がもらえます。
また、養成機関でカリキュラムを修了した人には「高等職業訓練修了支援給付金」の支給もあります。

「高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」

高校を卒業していないシングルマザーが、高等学校卒業認定試験の合格を目的とした講座を受けた場合、受講料の一部が支給される制度です。
シングルマザーに学び直しの機会を与え、よりよい条件での就職・転職につなげることがねらいです。

まとめ

今や夫婦の3組に1組は離婚している時代。シングルマザーとして子育てしている人は決して珍しくありませんが、やはり経済的な不安はつきものです。
子どもと安心して生活を送るためにも、シングルマザーのための公的な手当や助成制度をきちんと理解し、必要に応じて利用するようにしてください。

教えてくれたのは・・・

井戸美枝さん

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、経済エッセイスト。講演やテレビ、ラジオなど多数のメディアを通じて、ライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など。

取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

関連するキーワード

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND