「柿」を食べすぎるとどうなる?知っておきたい柿のメリット&デメリット
2024/11/01
柿に含まれる栄養素には、健康によい作用を持つものが多い反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、柿の食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。
抵抗力アップや二日酔い予防に!柿を食べる「メリット」
柿は東アジア原産で、日本では奈良時代頃から食べられているやさしい甘味のある果物です。
各地で栽培されており、大きく分けると甘柿と渋柿に分けられ、品種によって甘味、やわらかさ、なめらかさなどに違いがみられます。
そんな柿には、おもに次のような栄養素が多く含まれています。
・ビタミンC
・マンガン
・食物繊維
・葉酸
・カリウム
これらには、ストレスや風邪などの抵抗力を高める、体内の酵素反応を助ける、骨の発育を促す、腸内環境を調える、動脈硬化を防ぐ、血圧を下げる、などといった働きが期待できますよ。
そのほかにも、柿には「シブオール」や「アルコールデヒドロゲナーゼ」などの成分も含まれています。
シブオールは柿の渋みのもとであり、熟したり渋抜きを行ったりすることで渋みを感じない不溶性へと変化します。タンニン(ポリフェノール)の一種であり、体を酸化から守る抗酸化作用を持っています。さらに、血管を強くしたり血圧を下げたりする効果も期待できるでしょう。
アルコールデヒドロゲナーゼは、お酒の成分であるアルコールを分解する酵素です。シブオールとともに、二日酔いの予防や解消に役立つとされています。
このように、柿を上手にとり入れることで健康増進に役立てることができるのです。
結石ができたり、貧血になることも?柿を食べすぎる「デメリット」
多くのメリットを得られる柿ですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じたりすることもあります……。
胃の中に結石ができる
食べ物や異物などが胃の中の消化液と合わさって変化し、消化されずに固まって結石となったものを「胃石(いせき)」と呼びます。
これは子どもから大人まで誰にでも起こりうるもので、通常は胃石があるだけでは症状を起こしません。ただし、胃石が胃の出口をふさいだ場合などには、食後に強い満腹感が現れたり、吐き気や痛み、食欲不振などが起こったりすることもあるのだとか……。
また、胃石が腸のほうへ流れていくと腸閉塞(ちょうへいそく)や腸重積(ちょうじゅうせき)といった重大な病気の原因となることも。
国内の胃石の中では、柿の食べ過ぎによって起こる「柿胃石(かきいせき)」の報告がもっとも多くなっています。この柿胃石は、柿のシブオールと胃酸が反応することなどが原因で起こります。
体が冷えやすくなる
柿は8割以上が水分で占められ、カリウムも多く含まれています。このことから、食べすぎると利尿作用が促進されて体熱が放出されやすくなり、体を冷やしてしまうことが考えられます。
また、柿を冷やして食べる場合には、作用が強まりやすくなる可能性があるため注意しましょう。
体が冷えると、下痢や腹痛をはじめとした体調不良の原因となることも。
普段から手足やお腹が冷えている人はとくに、食べすぎないようにすることをおすすめします。
便秘しやすくなる
健康に役立つイメージのある食物繊維ですが、こちらもとりすぎによっては逆効果を生むことに……。
食物繊維は、性質の違いによって水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。柿の食物繊維のうち、8割以上が不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸に刺激を与える働きがある一方で、水溶性食物繊維の摂取量が不足していたり不溶性食物繊維の割合が多すぎたりする場合には、便の水分量が減って硬くなり便秘や腹痛などの原因となることもあるのです。
また、タンニンをとりすぎてしまうと腸の運動が抑えられてしまい、それも便秘の一因になると考えられるでしょう。
貧血になりやすい
渋みのもとであるタンニンですが、水に溶けやすい状態で存在すると渋さを感じますが、熟した甘柿や渋抜きした柿の中では水に溶けなくなり渋みを感じなくなります。しかし、渋みを感じることはなくてもタンニンは含まれたままなのです。
このタンニンは、鉄と結びつくと鉄の体への吸収を抑えてしまう働きがあります。そのため、柿を食べ過ぎると体内の鉄が不足して赤血球中のヘモグロビンが少なくなり、鉄欠乏性貧血の原因となることも。
貧血になると全身の細胞に酸素が行き届かず、熱の産生が低下します。このことも、冷えを悪化させるといわれています。
柿を楽しむ量とタイミングは?
上記のとおり、柿に含まれる栄養素や成分には、メリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、安心して柿を楽しめる量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
とりすぎることでデメリットの多いタンニンですが、柿の種類によって含有量が異なり、どれだけの量でデメリットが出やすくなるかといったことが明らかになっていません。
そのため、まずはカリウムの量からデメリットが出にくいであろう柿の量を算出してみました。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日のカリウムの摂取目標量は成人以上の男性で3,000mg、女性で2,600mg以上とされています。そのうち、ほかの食品からもカリウムを摂取することを考慮し、半分を柿で摂取すると仮定すると3~4個に相当することに。
続いて、食物繊維の量から安心できる量を算出してみました。
1日の食物繊維の摂取目標量は、18~64歳男性で21g以上、女性で18g以上とされています。カリウムと同じように、その半分を柿で摂取するのであれば2~3個に相当。
いずれも1個あたり200gの柿の場合なので、大きさによって個数は前後することを参考にしてください。
このように、気になる栄養素からとりすぎになりにくい個数を計算しましたが、一般的には果物類の1日摂取目安量は200gとされています。これは、ほかの食事とのバランスを損なわず、体に必要なビタミン、ミネラル食物繊維をとれるとされる量です。
結論としては、毎日食べるのであれば1日1個に、多く食べる日があれば提示した個数の範囲に収めて、連続して食べないようにするといった工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。
どのタイミングで食べるのがいい?
甘味のある柿は、デザートや間食として食べられることが多いのではないでしょうか。
基本的には、いつ食べてもよいと思いますが、夕食後や寝る前は避けることをおすすめします。
なぜならば、食物繊維が多く含まれることで消化に時間がかかるためです。消化活動が就寝中に活発になると、睡眠の質を下げる可能性が考えられます。
また、わたしたちの体内では夜中にかけて脂肪をためこむ働きを持つたんぱく質が増え、遅い時間に食べるほど太りやすくなるのです。柿1個につき、およそ120kcalのエネルギーと28gほどの糖質が含まれているため、注意しましょう。
なお、貧血が気になる場合は、食後2時間ほど空けてから食べることで鉄の吸収への影響を抑えるといわれているので、間食で楽しむのがおすすめです。
正しい量を把握できていれば、柿はメリットが多い食品です。柿のメリット・デメッリトを理解し、上手にとり入れていきましょう。