「ポン酢」がないときの代用レシピを検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】
2022/07/21
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「ポン酢」の代用アイデア。
和風料理に使われることが多く、鍋物のつけ汁にしたり、冷奴や焼魚などにかけるだけでなく、和え物から炒め物、サラダにいたるまで幅広い料理に活用できるポン酢。さわやかな酸味でさっぱりとしつつ、はっきりとした味もあっておいしさを高めてくれる調味料です。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、ポン酢の代用アイデアをレシピつきで紹介してもらいます。
「ポン酢」の原材料は?
ポン酢とは、本来は酢と柑橘類の果汁を組み合わせたもののことです。一方、ふだん我々が日常的に使っている黒い液体のものは、ポン酢にしょうゆを加えた「ポン酢しょうゆ(味付けポン酢)」と呼ばれるもの。
商品が手元にある人は、ぜひラベルの食品表示欄をチェックしてみてください。名称が「味付けポン酢」と表記されているはずです。
なお、この記事では、「味付けポン酢」をポン酢として紹介していきます。
酸味のほかに「甘味」や「うま味」もかかせない
ポン酢に必要な柑橘類の果汁には、ゆず・すだち・かぼすなどがよく使われます。商品によって種類や配合が異なるため、それぞれの味わいを楽しむことができるのが魅力です。また、しょうゆ、酢、果汁以外に含まれているものには次のようなものがあります。
・砂糖
・食塩
・だし
・うま味調味料
これらのことから、ポン酢には適度な「甘味」や「うま味」もかかせないといえます。
ポン酢の代用になる調味料は?
ポン酢の代用をする場合、しょうゆ、酢、柑橘類の果汁をベースに「甘味」、「うま味」のある食材を組み合わせれば、理論上は代用することができます。
筆者の自宅にあった食材や調味料のなかでポン酢の代用となりそうな食材は、以下のとおりです。
・濃口しょうゆ
・りんご酢
・レモン果汁
・ゆず果汁
・梅干し
・みりん
・砂糖
・めんつゆ
・粉末だし
これらの組み合わせを変えて、どのようなポン酢の味わいになるのかを検証してみました。
8通りの組み合わせで代用ポン酢を考案
商品によっては、甘味やうま味のための食材を追加しないシンプルなものも存在します。
それも踏まえた上で、まずは以下のように酸味の異なる組み合わせで代用ポン酢を作成してみました。かっこ内は、混ぜ合わせた重量を表しています。
【A】濃口しょうゆ:酢(1g:1g)
【B】濃口しょうゆ:酢:レモン果汁(1g:0.5g:0.5g)
【C】濃口しょうゆ:酢:ゆず果汁(1g:0.5g:0.5g)
【D】濃口しょうゆ:酢:梅干し(1g:0.5g:0.4g)
※ゆず果汁は、レモン果汁のように精製された容器入りのものも同様に使用できます。
※梅干しは塩分濃度18%ものを使用したため、ほかの代用ポン酢と塩味に差が出ないように果汁よりも少ない量を使用しています。また、果汁のみを取りわけることが難しいため、できるだけ刻んで加えています。
果汁で比較した結果……
先述のとおり材料を混ぜたものが、画像のとおりになっています。上段左から【A】、【B】、下段左から【C】、【D】となっています。
見た目について、【A】~【C】は、いずれも濃口しょうゆに対して同じ割合の酢+果汁が使われているため大きな差はありません。【D】のみ、果汁の代わりに固体を加えているため、当然サラッとした見た目ではなくなっています(いわれなければ、かつお節が入っているようにも見えます)。
味については、いずれも酸味を感じますが、微妙な違いがありました。
【A】なじみのある酸味
【B】さっぱり感が一番強い
【C】酸味の中にもわずかに甘味が感じられる
【D】酸味とともにわずかにうま味のようなものも感じられる
酸味については、好きな人もいれば苦手な人もいます。また、口にする機会が多ければ酸味への抵抗感は薄れると考えられます。
筆者個人の好みで選ばせてもらうと、酸味のバランスが取れているように感じた【C】と、うま味のような奥行きが感じられた【D】が好印象でした。
甘味調味料で比較した結果……
続いては、見た目がポン酢に近い【C】をベースとして「甘味」の要素である、みりんと砂糖を使って比較してみました。
【E】濃口しょうゆ:酢:ゆず果汁:みりん(1g:0.5g:0.5g:0.5g)
【F】濃口しょうゆ:酢:ゆず果汁:砂糖(1g:0.5g:0.5g:0.2g)
※みりんの甘さを砂糖で代用する場合、重量比で約1/3になるように調整しています。
※みりんは本みりんを使用する場合、アルコールが含まれています。気になるのであれば電子レンジで10秒ほど温めると安心です。みりん風調味料を使うのであれば、その必要はありません。
見た目については、想像していたほど違いが見られませんでした(多くつくった場合、【E】の方が薄くなる可能性あり)。
味については、どちらも最初の代用ポン酢よりも甘みが加わったことで、酸味がまろやかになりました。違いがあるとすれば、【E】は奥行きのある甘味、【F】はわかりやすい甘味を感じました。
そもそも、みりんにはうま味のもととなるアミノ酸、ブドウ糖やオリゴ糖が多く含まれるのに対し、砂糖はほとんどがショ糖で構成されています。そのため、甘みの感じ方に差が生まれるのです。ただし、人によってはあまり違いを感じない可能性があるので、好みで選んでもいいと思います。
うま味調味料で比較した結果……
最後に「うま味」の違いについて、【E】をベースに次のとおり比較してみました。
【G】濃口しょうゆ:酢:ゆず果汁:みりん:粉末だし(1g:0.5g:0.5g:1g:0.3g)
【H】めんつゆ:酢:ゆず果汁(1g:0.5g:0.5g)
※炭水化物量で比較すると、【G】のみりんは半量でちょうどよいという試算でしたが、実際に味見をして増量した方が【H】の甘味に近くなることから、みりんを多めに加えています。
※粉末だしは、減塩タイプで複数のだし食材が混合されているものを使用しました。通常タイプを使用する場合は、今回の評価よりも塩気が強く感じられる可能性があるため、味見をしながら分量を加減してください。
※めんつゆには、甘みが含まれているため、【H】にみりんを使用していません。
見た目は、固形の食材が含まれている【G】よりも【H】の方が一般的なポン酢に近くなりました。
味については、食感の違いによる影響を除いて評価すると、【G】はだしの風味を強く感じたのに対し、【H】はほどよいだしの風味と甘味のバランスの良さを感じることができました。どちらも甘味やうま味は、市販品のポン酢に近くなっていたので、優劣はありません。
どうしても粉末だしの食感が気になるのであれば、混ぜ合わせてからしばらく置いておき、茶こしなどで取り除くようにしてみるといいと思います。
合わせる料理で比較した結果……
筆者がよくポン酢と合わせて食べているメニューの中から、冷奴、チヂミ、かつおのタタキを選び、【A】~【H】をそれぞれ合わせて食べ比べた結果は以下のとおりです。
・冷奴……それ自体が淡白な味のため、代用ポン酢の酸味をはっきりと感じやすかった。よって、甘味が加えられていた方が、酸味が抑えられて食べやすい可能性がある。おすすめは、【E】~【H】。
・チヂミ……それ自体が油やうま味を含んだ味のため、冷奴に比べると代用ポン酢の酸味は感じにくかった。どの代用ポン酢でもおいしく食べられたが、甘味が加えられている方が味に奥行きを感じ、より料理をひきたたせてくれたように思う。そのことから、おすすめは【E】~【H】。
・かつおのタタキ……かつお自体がうま味を多く含む食材であるため、うま味が入っていない代用ポン酢でもおいしく食べられた。酸味がきいていた方が、料理の臭みを軽減していると感じた。どちらかというと【A】・【B】が、料理の味を邪魔しにくいのでおすすめ。
代用ポン酢レシピの結論
合わせる料理によっては、<甘味>や<うま味>が入っていなくてもおいしく感じることができました。そのことから、【A】~【H】のどれもが、代用ポン酢としての使い方が可能といえます。
・合わせる料理によって選ぶ
・各人の好みによって組み合わせや分量を変える(酸味、甘味、うま味のバランスを調整)
・手元にそろっている調味料や食材に合わせる
このような方法で、それぞれの代用ポン酢を活用することをおすすめします。
代用ポン酢の楽しみ方は?
比較に使用した調味料や食材が多かったため、すべての組み合わせは紹介しませんでしたが、示した組み合わせの一部を同じような味のものと置き換えて混ぜることで、さらに多くの種類の代用ポン酢をつくることが可能です(例:【H】のゆず果汁 → レモンなど)。
意外と、ご家庭にある一般的な調味料でもつくりやすいことがわかったのではないでしょうか?また、ポン酢に使われている原材料を知ることで、ドレッシングに近いと感じた人もいるかもしれません。
すりおろしにんにくやオリーブオイルを合わせ、洋風のドレッシングとしてサラダやパスタなどにかけてもいいですし、炒め物料理に少し甘味を増やして加えれば甘酢炒めとしても、代用ポン酢を活用することが可能。
ただし、作り置きには向かないので、その時々でそれぞれの代用ポン酢を試し、使い切りで微妙な味の違いを楽しむのがおすすめです。
ぜひ、紹介した内容を参考に、お好みの代用ポン酢を活用してみてくださいね!