「天ぷら粉」がないときに代用できる調味料を検証!おすすめの組み合わせも紹介【管理栄養士が解説】
2024/09/04
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な調味料が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。でもその調味料、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「天ぷら粉」の代用アイデア。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、てんぷら粉の代用アイデアをレシピつきで紹介してもらいます。
「天ぷら粉」の原材料は?
一般的な市販の天ぷら粉は
・小麦粉(薄力粉)
・でんぷん
・乾燥卵
・膨張剤(ベーキングパウダー、重曹など)
などが原材料となっています。商品によってはこれに加えて
・乳化剤
・着色料(カロチノイド、クチナシなど)
などが使われることもあります。この天ぷら粉に水を加えて混ぜ合わせることで、天ぷらの衣ができあがります。
卵を加えることで衣の具材へのからみをよくしたり、膨張剤を加えることで気泡を発生させてふんわりとした衣のボリュームがつくられていると考えられます。
また、乳化剤は水を加えた際に粉類を溶けやすくしたり、着色料は仕上がりの色をよくして食欲をそそる見た目にすることに役立っていると考えられます。
天ぷら粉の代用になる調味料は?
代用天ぷら粉をつくるための食材の組み合わせは、いくつか考えられます。
今回、代用レシピのために筆者が用意したものは以下のとおり。膨張剤に関しては、ベーキングパウダーと重曹はほぼ同じ成分となっているため前者だけを用意しました。
■ベース
・薄力粉
・米粉
・きな粉
・パン粉
■つなぎ
・卵
・マヨネーズ
■膨張剤
・ベーキングパウダー
■でんぷん
・片栗粉
・コーンスターチ
これらの中から、それぞれ組み合わせて代用てんぷら粉をつくってみることにしました。
8通りの組み合わせで代用天ぷら粉を考案
ここでは、ベースやつなぎなどの組み合わせを変え、8通りの組み合わせを厳選しました。
括弧内は、実際につくった際の分量(g)となっています。ベースは基本的に大さじ1杯分としましたが、パン粉のみ大さじ2杯分をミキサーで粉砕後のものがちょうど大さじ1杯分に相当しています。
【1】薄力粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水(9:6:1.5:1:10)
【2】米粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水(9:6:1.5:1:10)
【3】きな粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水(7:6:1.5:1:10)
【4】パン粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水(7:6:1.5:1:10)
【5】薄力粉:マヨネーズ:水(9:6:10)
【6】薄力粉:卵:水(9:6:10)
【7】薄力粉:卵:炭酸水(9:6:10)
【8】薄力粉:卵:ベーキングパウダー:コーンスターチ:水(9:6:1.5:1:10)
【1】~【4】はベースの種類、【5】はつなぎの種類、【6】はシンプルな組み合わせ、【7】は【6】との比較、【8】はでんぷんの種類について、それぞれ検証してみました。
つくり方は、揚げる直前にすべてを合わせて加えて軽く混ぜ、具材にからめて180℃の油で表面がカリッとするまで揚げました。油を切り、温かいうちに塩を少々つけて食べ比べました。
代用天ぷら粉の調理時のポイント
・混ぜすぎない
薄力粉はかき混ぜ過ぎるとグルテンという、粘りが生まれます。これにより、サクッとした軽い仕上がりにならなくなるため、薄力粉を使用したものはダマが少し残るくらいの混ぜ加減に抑えています。
・揚げる直前に液体の材料を混ぜ合せる
卵や水などの液体加える場合、薄力粉と合わせてから時間が経過するとグルテンがつくられやすくなります。そのため、混ぜてすぐに具材をからめて揚げるようにしています。
・冷水を使う
薄力粉を含む場合、材料を混ぜ合わせてから温度が高いとグルテンがつくられやすくなります。それを防ぐために、衣に使う水は冷やした水や氷水を使っています。
・一度に多く揚げない
揚げ油の中に多くの材料を入れてしまうと、油の温度が下がりやすくなります。適温よりも低い温度で揚げると、べチャッとした仕上がりになります。一度に入れる目安は、油の表面積の半分くらいまでとしています。
代用天ぷら粉が完成!
完成した代用天ぷら粉(+水など)を並べてみました。画像上段左から順に【1】【2】【3】【4】、下段左から【5】【6】【7】【8】となっています。
それらを揚げたものが、こちらです。
色の違い、衣をつけたとき、食べたときの違いなどは次のとおりです。
焦げにくかったものは【1】【2】【6】【7】【8】
薄力粉+卵を組み合わせた【1】【2】【6】【7】【8】が、揚げたときに一般的な天ぷらのような淡黄色に仕上がりました。
逆に、ほかと同じくらいの揚げ時間でも焦げたような茶色に仕上がったきな粉については、タンパク質が多かったり元の色が濃いことが原因と考えられます。また、同様の仕上がりとなったパン粉については、加熱済みの小麦粉であったりほかの原材料が含まれていることが原因かもしれません。
マヨネーズについては、1度目にほかよりも短い揚げ時間で濃い色となりましたが、注意して早めに裏返すことで焦げにくくすることはできました。(画像は2度目のもの)
衣をからめやすかったものは【3】
いずれも混ぜてすぐ具材をからめた場合、つきにくいことはありませんでした。ただし、時間が経つと、【2】【4】のからみが非常に悪くなりました。
粉末の粒子や吸収性などの違いと思われますが、きな粉を含む【3】は液体を加えるとすぐに混ざり合い、粘度の濃い状態となりました。それによって、具材へのからみがいちばんよかったと考えられます。
食感がよかったものは【1】【2】【5】
実際に食べてみると、一般的な天ぷらに近いサクサク感があったのは【1】【2】、カリッとした歯応えを感じたのは【1】【5】という結果でした。
【1】については、てんぷら粉に含まれている原材料に近いことが理由と考えられます。サクッとした【2】は、どちらかというとフワッとした軽い食感を感じたので、米粉の油切れのよさがわずかに違いとなって感じられたのだと思います。
【5】については、【1】よりも強くカリッと感がありました。マヨネーズ自体にも卵が含まれることと、マヨネーズの原材料である酢を加えることでも、グルテンの形成を抑えてカリッとさせる効果があることが理由と思われます。
代用天ぷら粉の結論
以上のことから、おすすめできる代用天ぷら粉の組み合わせは、
【1】薄力粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水
【2】米粉:卵:ベーキングパウダー:片栗粉:水
【5】薄力粉:マヨネーズ:水
ということができます。焦がさずにつくりたい場合は【1】【2】、慎重に揚げる余裕があるのであれば【5】をおすすめします。
この検証では、膨張剤やでんぷんなしでもおいしく天ぷらをつくることができるということがわかりました。
レシピご利用時の注意点
なお、今回の分量では水の分量を一般的な比率よりもやや多めにしています。水分が多くゆるい衣を使う場合、具材へのからみが抑えられるので油っぽさを抑えた仕上がりにすることが期待できます。
ただし、カリっとした食感をしっかりと味わいたい場合は、分量よりも水を少し減らすことで、具材への衣のからみがよくなることが期待できるでしょう。マヨネーズについても、メーカー推奨の比率よりも多いために焦げやすかったことが考えられるので、使用する際はここでのレシピの分量よりも減らすことで失敗を減らすことができるかもしれません。
天ぷらの衣をサクサクにするコツ
天ぷらのおいしさといえば、衣のサクサク感が重要になります。
サクサクに仕上げるためには、いくつかのコツがあるのでご紹介しますね。
低温の衣を使う
衣の材料となる小麦粉(薄力粉)に含まれるたんぱく質は、水と混ざり合うことでグルテンという物質になります。このグルテンが、調理中に多くできてしてしまうと天ぷらがベチャっとした仕上がりに……。
グルテンが増えるのを抑えるためには、揚げる直前まで衣を低温にすることがポイントです。
小麦粉と合わせる水を冷蔵庫で冷やしておいたり氷を加えるなどして、冷水を使用するようにしましょう。
また、衣をつくった後に、氷を入れたボウルの上で冷やし続けることもおすすめです。
衣はかき混ぜすぎない
衣をつくる際、小麦粉のダマがなくなるまで混ぜたくなるかもしれません。
ですが、ここで混ぜすぎるとグルテンが発生しやすくなることに。
グルテンが増えると衣の粘度が増し、揚げるとベチャっとした仕上がりになるため、菜箸などで数回軽く混ぜるに留めておきましょう。
多少ダマが残り、粉っぽいくらいでも大丈夫です。
衣を混ぜたあとの時間経過によってもグルテンができるので、混ぜたら早めに使うようにしてくださいね。
衣づけの前に打ち粉をする
食材に直接衣をからめ、すぐに揚げることもできますが、よりサクサクと仕上げたいのであれば打ち粉をすることをおすすめします。
打ち粉には、衣に使ったのと同じ小麦粉で構いません。
衣をつける前に薄く小麦粉をまぶすことにより、その後に衣がつきすぎるのを抑え、きれいな仕上がりにしてくれますよ。
油の温度が下がり過ぎないようにする
油を適温まで熱しても、衣をつけた食材を入れることで温度が下がりやすくなってしまいます。
そのため、一度に入るだけ食材を入れるようなことはせず、天ぷら鍋の半分までにしておくとよいでしょう。
このとき、油がたっぷりあることも急激な温度の低下を抑えることに役立ちます。食材が底につかないくらい、油を注ぎ入れるようにしてみてくださいね。
揚げた後はしっかりと油を切る
揚げた後、油切りができていないと時間が経ってベチャっとする原因に。
それを避けるためには、網の上にのせて余分な表面の油を落とすことが大切です。
キッチンペーパーなどで油を吸い取りたくなるかもしれませんが、揚げてすぐに直接ふれてしまうと蒸れてしまい、サクサク感が失われてしまいます。
天ぷら同士が重なることも油切れが悪くなってしまうので、バットのふちなどを利用し、重ねずに立てて並べることを意識しましょう。
天ぷらを上手に揚げるためのポイント
手順
天ぷらをつくるためには、食材と衣の準備の順番が重要です。サクサクと揚げるために、つぎのような手順を参考にしてみてくださいね。
・食材と調理器具の準備
・食材の下ごしらえ
・衣をつくる
・油を温める
・揚げる
天ぷらづくりでは、手際よく揚げていくこともおいしさに影響していきます。
そのため、途中で慌てなくてもよいように、必要なものをそろえておいて順番に進めていくようにしましょう。
食材の水分をしっかり拭き取る
揚げ物をする際は、食材の水分をできるだけ拭き取るようにしましょう。
なぜならば、高温の油に水滴が入ってしまうと、油の飛びはねが起こり火傷の危険性が高まるからです。
食材を下ごしらえをしたら、衣をつける前にキッチンペーパーなどで食材の表面を抑え、しっかりと水分を拭き取るようにしてくださいね。
適温
天ぷらをサクサクに揚げるのであれば、油の温度は食材によって調整してみましょう。
葉物野菜、きのこなどは160~170℃の温度が最適。
この温度であれば、火が通りやすい食材は色よく揚げることができますよ。
なすや玉ねぎの野菜については、油を吸い過ぎてしまうため、170~180℃の少し高い温度で揚げるのがおすすめ。
かぼちゃやさつまいもなどの根菜類も、この温度のほうがおいしく仕上がります。
肉や魚介類を揚げる場合は、高温で手早く揚げるとうま味を閉じ込めておいしく仕上がるでしょう。
180~190℃を目安に揚げてみてくださいね。
揚げる時間
食材の厚みや火の通りやすさによって、揚げ時間には差が出ます。
いずれも表面全体がきつね色に変わり、カリっとした硬さになっているのが引き上げるタイミング。
食材ごとの適温で揚げた場合、早いもので30秒ほどでもよい状態に仕上がるでしょう。
また、厚みのあるものであれば2分前後、肉などのしっかりと加熱が必要なものでも3分ほどで十分とされていますよ。
代用天ぷら粉の楽しみ方は?
今回の検証で余った代用天ぷら粉。天ぷらばかり食べるのは、さずがに……ということで、チヂミやパンケーキの材料として利用してみました。どちらの料理も、てんぷら粉そのものの原材料に近いため、うま味や甘味を加えてそれらの生地として使うことができるのです。
そのほか、同じように薄力粉を使ってつくるクッキー、ドーナツ、ケーキや、たこ焼き、お好み焼きなどにも向いています。
なお、卵を使って代用天ぷら粉とする場合、割ってからしばらく置いておいたものは食中毒予防の観点から、余った場合はその日のうちに使い切ってしまうようにしてください。
使い道の多い代用天ぷら粉で、サクサクの天ぷらをつくってみてはいかがでしょうか。