「落花生」を食べすぎるとどうなる?知っておきたい落花生のメリット&デメリット
2024/09/20
落花生の食べすぎはカラダによくない……というのはよく聞く話ですが、なぜ悪いのか理由をご存知でしょうか?
落花生に含まれる栄養素には、役立つ作用を多く持つ反面、とり方を間違えてしまうと体調をくずす危険性もあるのだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、落花生の食べ方によって体にどのような悪影響が及ぶのかと、1日に食べてもいい量の目安について紹介してもらいます。
健康増進やダイエットに!落花生を食べる「メリット」
落花生は、南米が原産とされるマメ科の植物の種子で、ゆでたり炒るなどして食べられています。豆菓子に使われる大粒の品種と、植物油などの原料になる小粒の品種があります。
花が咲いたあとに地面に落ち、地中に実ができることから「落花生」という名前がつけられたとされ、ピーナッツや南京豆とも呼ばれています。木の実ではないため本来はナッツの仲間ではありませんが、脂質を多く含むことから完熟した落花生はナッツ(種実類)に分類されています。(※)
ちなみに、ピーナッツという呼び方は豆科植物からとれるナッツ、というのが語源なのだとか。
脂質というと高カロリーで太るイメージが強いかもしれませんが、脂質は体にとってのエネルギー源であり、三大栄養素のうちの一つでもあるのです。また、脂質には主につぎのような働きがあります。
・細胞膜、ホルモンなどをつくる材料となる
・皮下脂肪として臓器を保護したり、寒さから体を守る
・ビタミンA、D、E、Kなどの栄養素の吸収率を高める
なお、落花生は脂質のなかでも不飽和脂肪酸の割合が高く、血圧を下げたり、LDLコレステロールを減らす働きによって動脈硬化や血栓の予防に役立ちます。
また、落花生の殻をむいた後の茶色い薄皮には、ポリフェノールの一種であるレスベラトロールが含まれています。これはワインに含まれているものと同じ成分で、ほんのりとした渋みのもとでもあるのです。非常に強い抗酸化作用があり、老化や生活習慣病の予防効果が期待できるでしょう。
このほかにも、ふつうの食生活では不足しがちな栄養素であるたんぱく質、食物繊維、ビタミンE、ナイアシン、銅、マグネシウムなど多く含まれています。これらには、おもに次のような働きがあります。
・筋肉、臓器、酵素、ホルモン、免疫物質の材料になる
・腸内環境を調え、便通を改善する
・抗酸化作用で細胞を老化から守る
・糖質、脂質、タンパク質をエネルギーに変える
・貧血や動脈硬化の予防、免疫力を向上させる
このように上手に落花生をとり入れることで、生活習慣病を予防したり、美容に役立てることができますよ。
※……未熟なうちに収穫してゆでて食べる場合(ゆで落花生)は、水分の割合が多く栄養価が異なるため、野菜類に分類されます。混乱を招くのを防ぐため、この記事では種実類の落花生について言及しています。
アレルギーや肌荒れの原因に?落花生を食べすぎる「デメリット」
多くのメリットが得られる落花生ですが、過剰に摂取したり体質によっては思わぬデメリットが生じることもあります……。
炎症が起こりやすくなる
落花生の脂質に含まれている不飽和脂肪酸の一つに、リノール酸があります。
リノール酸は適量の摂取であればメリットが多いのですが、過剰に摂取してしまうと体内で炎症を起こす成分へ変わり、肌荒れやアレルギー反応が起こりやすくなるとされています。そのため、アレルギー体質の人は、とくに食べ過ぎに気をつけることをおすすめします。
また、バターなどの油脂を加えて加工されたり、長時間空気にさらされるなど保管状態の悪い落花生の場合、油が酸化してそれが炎症を引き起こすことに関わることも考えられます。入手したら早めに消費することも意識してみましょう。
ちなみに、落花生の食べ過ぎによって「ニキビができやすくなる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは医学的に因果関係が証明されておらず、迷信といわれています。
下痢や便秘などの不快な症状を招く
健康に役立つイメージのある食物繊維ですが、こちらもとりすぎによっては逆効果を生むことに……。
食物繊維は、性質の違いによって水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。落花生の食物繊維は、9割ほどが不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸に刺激を与える働きがある反面、水溶性食物繊維が不足していたり不溶性食物繊維の割合が多すぎると、便の水分量が減って硬くなることで便秘や腹痛などの原因となることも。
一方で、落花生の半分ほどを占める脂質によって消化に時間がかかるため、体調や体質によっては消化不良を起こすことも考えられます。これによって、下痢や胃もたれなどの症状が現れることもあるため、食べる量には注意しましょう。
落花生を楽しむ量とタイミングは?
上記のとおり、落花生に含まれる栄養素にはメリットとデメリットの両方があります。
そこでここからは、日本人の食事摂取基準(2020年版)の数値を参考に、落花生を楽しむ量とタイミングについて解説していきます。
健康な成人は1日にどれくらい食べても大丈夫?
まずは、リノール酸を基準に1日に十分とされる不飽和脂肪酸(n-6系)の目安量とから、適量を算出してみました。
リノール酸の摂取基準から算出した上限量は、
・男性……約63g(※1)
・女性……約51g(※2)
となりますが、落花生以外の食品(植物油など)からもリノール酸を摂取することを考えると、理想的な目安とはいえません。仮に、ここから目安として割り出すのであれば、この数値の半分程度が妥当といえるのではないでしょうか。
次に、1日の間食の適量(200kcalくらい)から算出した上限量は、
・33g(=約196kcalに相当)
となり、リノール酸を基準とした上限量よりもこちらが少ないため、1日に落花生を食べる際の目安量はこの数値としてもよいでしょう(ただし、ほかにも間食をするのであればもっと少なくするように)。
殻をむいた落花生1粒あたりの重さは、品種によって0.5~1gと差があるため、小粒であれば66粒、大粒であれば33粒が個数の目安になります。
もし、この範囲で落花生を取り入れたとすると、1日の適正脂質摂取量のうち男性ではおよそ20%、女性ではおよそ30%を摂取することに(補足:動脈硬化などを促進させる飽和脂肪酸は、1日の摂取上限量の半分近くを占めます)。
そのため、3食の食事の中で油を使った料理や脂身を多く含む食品を避け、あっさりした料理を中心にするなど、調整の必要があることも覚えておくようにしましょう。
※1……30~64歳男性の場合。
※2……18~74歳女性の場合。
どのタイミングで食べるのがいい?
落花生には脂質が多いため、消化に時間がかかることから就寝前は避けることをおすすめします。消化活動が就寝中に活発になると、睡眠の質を下げる可能性があることがその理由です。
間食で食べてもいいですが、おすすめするタイミングは、食前30分~1時間前。
このタイミングで落花生を食べると、よく噛むことによって満腹中枢が刺激されやすくなり、食事のときの空腹感を和らげて食べ過ぎ予防に役立ちます。
また、落花生を少しでもヘルシーに食べたいのであれば、バターや植物油脂、食塩などを使っていないシンプルなものを選ぶようにしてみましょう。味や風味がたされていないことで、食欲が進んで食べすぎるのを防ぐことに役立ちますよ。
正しい量さえ把握できていれば、落花生はメリットが多い食品です。落花生のメリット・デメッリトを理解し、上手にとり入れてみてくださいね。