骨がもろくなったり、免疫力が低下するリスクも!?じつは怖い「ビタミンD」不足
2024/11/07
健康を維持したり、病気の予防に欠かせない栄養素。そのなかでも、「ビタミンD」にはどういった働きがあるのかご存じでしょうか?
必要量が足りているからこそ、わたしたちは当たり前に毎日をすごせるのですが、不足してしまうといくつものデメリットが出てくることに…。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、「ビタミンD」が不足することでどのようなことが起きるのかと、効率よくとるための食べ方について紹介してもらいます。
「ビタミンD」の働きとは?
「ビタミンD」とは、油に溶けやすい性質(脂溶性)を持つビタミンの一種です。
私たちの皮膚に紫外線が当たることでも、体内で「ビタミンD」を合成することができます。しかし、加齢にともなって「ビタミンD」が合成されにくくなることに加え、外出する機会が少なかったり、頻繁に日焼け止めを使用していたりすると不足しやすくなってしまいます。そのため、食品からもとり入れる必要があるのです。
そんな「ビタミンD」には、おもにつぎのような働きがあります。
・カルシウムとリンの体内への吸収率を高め、丈夫な骨や歯の発育をうながす
・血液中のカルシウム濃度を一定に保ち、神経や筋肉の働きを正常に保つ
・筋力を維持し、転倒しにくくする
・免疫機能を調節し、炎症を防ぐ
このように、「ビタミンD」は老若男女問わず、健康を維持するためにとても重要な栄養素となっているのです。
「ビタミンD」不足になると起きることとは?
「ビタミンD」が不足すると、低カルシウム血症が起こります。
子どもでは骨の成長障害が起こる「くる病(姿勢の悪化、足の変形、低身長など)」、大人では骨がもろくなる「骨軟化症」や「骨粗鬆症」になることがあります。骨の密度が低下する「骨粗鬆症」の状態では、転倒による骨折から、寝たきりなどの介護が必要な状態になるリスクが上昇することが知られています。
令和元年国民健康・栄養調査におけるデータを見てみると、食品からの「ビタミンD」の1日の摂取量は、男女ともにほとんどの年代で不足していることがわかっています。しかも、若い世代ほど1日の必要量に大きく届いていないのが現状です…。
なお、目安量は適度に紫外線を浴びることを前提とした数値が設定されています。
そのことから、外出の機会が少ない人や紫外線対策を行っている人は、より「ビタミンD」を積極的にとる必要があることを覚えておきましょう。
「ビタミンD」を多く含む代表的な食材や、おすすめの食材
ここからは「ビタミンD」を多く含む食品について、ご紹介します。
・卵黄(生のほうがゆでたものより1.7倍多い)
・マーガリン
・鮭(とくに、しろさけと紅ざけに多い)
・あらげきくらげ(乾燥)
・いわし
・ちりめんじゃこ
・あん肝(生)
・いかなご(煮干し)
・身欠きにしん、くん製にしん
・すじこ、いくら
・かわはぎ
「ビタミンD」は、穀類、豆類、野菜、いも類などにはほとんど含まれず、きのこ、脂肪を多く含んだ魚、卵黄などを中心に豊富に含まれています。
なお、きのこのなかでは、きくらげが圧倒的な含有量を誇りますが、乾燥しいたけやまいたけにも比較的多くなっていることを補足しておきます。
ちなみに、「ビタミンD」は脂溶性のため、多くとりすぎると高カルシウム血症を起こすことがあります。
高カルシウム血症では、血管壁や内臓などに多量のカルシウムが沈着し、だるさ、食欲不振、集中力の低下、脱水が見られたり、悪化すると嘔吐、情緒不安定、意識消失などの症状が現れることもあるのだとか。
そうはいっても、数カ月に渡ってサプリメントや高濃度に「ビタミンD」を含む食品などで毎日大量に摂取しなければ、心配は少ないといわれています。
※……日本食品標準成分表(八訂)増補2023年における、「ビタミンD」含有量の多い順から常食しやすいであろう食品を抜粋して紹介しています。
効率よく摂取するための組み合わせや食べ方
「ビタミンD」は、油に溶けやすいという性質があります。
少しでもムダなくとり入れたい場合には、油脂も多く含んだ食材を選ぶか、油を使った料理に加えていっしょに食べるようにしましょう。こうすることで、体への吸収率を高めることが可能です。
また、きのこに含まれる「ビタミンD」は、食べる前に日光に当てるのがおすすめ。日光に含まれる紫外線にさらされることで、きのこの「ビタミンD」含有量をさらに増やすことができますよ(最低でも30分ほど、きのこの内側が日光に当たるように広げておけばOK)。
すでに乾燥している干ししいたけなどにも効果的といわれているので、ぜひ日常的に活用してみてくださいね。
ただし、特定の栄養素のことばかりに目を向けて、基本の食事がおろそかになっては元も子もありません。
主食・主菜・副菜をそろえ、炭水化物・脂質・たんぱく質が偏らないような食事を意識し、その上でご紹介した「ビタミンD」が豊富な食品や食べ方をとり入れるようにしていきましょう。