「納豆」を食べすぎるとどうなる?納豆を安全に食べられる量について管理栄養士が解説
2024/07/31
栄養が豊富で、「日本のスーパーフード」とも称される納豆。健康効果が高いから毎日食べよう……という人もいると思いますが、食べすぎるとどうなるかご存知でしょうか?
納豆の食べすぎは栄養のとりすぎになり、中毒症状を引き起こす可能性もあるんだとか!
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに納豆の食べすぎによって起きるリスクと、どれくらいまで安心して食べられるのかについて紹介してもらいます。
納豆に含まれる栄養と効果とは?
納豆は一般的に糸引き納豆のことをさし、蒸し煮した大豆に納豆菌を加え、適度な温度や湿度を保って発酵させた食品です。
原材料となる大豆が、高たんぱくで、ビタミンやミネラルを多く含んでいますが、発酵によってさらに栄養価が高まることが知られています。
なかでも、骨を強化する効果がある「ビタミンK」、血栓を予防してくれる「酵素(ナットウキナーゼ)」が増加して、健康維持に役立つことから、健康食品として世界からも注目を浴びています。
ほかにも、
・カリウム
・鉄
・ビタミンB2
・ビタミンB6
・ナイアシン
・葉酸
などが大豆よりも多く含まれています。これらは、血圧の調整、妊娠時や発育時の成長促進、エネルギー代謝の促進などに役立つ栄養素です。納豆には、多くの栄養素が含まれることから、「日本のスーパーフード」といえますね。
納豆をとりすぎるとどうなる?
そんな納豆ですが、栄養豊富なために食べすぎることで過剰症の心配も……
本来は、体の健康を維持するために必要なビタミンやミネラルですが、大量にとりすぎてしまうと、体に悪影響を及ぼして「過剰症」を引き起こすという一面があります。
たとえば、レバーやうなぎなどに多く含まれているビタミンAの過剰症には、頭痛・脱毛・筋肉痛などのほか、胎児への影響も報告されていることから、とくに妊娠中の過剰摂取に注意が呼びかけられています。
ここからは、日本食品標準成分表(2020年版)の数値を基に、1日の摂取基準に対して含有量が多い栄養素を中心にみていきますね。
ビタミンK
納豆にいちばん多く含まれる栄養素は、ビタミンK。骨の強化以外にも、動脈硬化の進行を抑えたり、傷口などの血を固める成分をつくる働きがあります。ナットウキナーゼと反対の働きもありますが、血栓ができる原因にはなりません。ただし、ワーファリンなどの一部の薬の働きを弱めてしまうので、服薬している場合は注意が必要です。
【1パック(50g)】で成人男女のビタミンKの1日摂取目安量の2倍を満たします。納豆に含まれるビタミンKには過剰症の心配がなく、耐用上限量(※)が設定されていないので食べすぎは問題ないといえます。
※耐用上限量…過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量のこと。
銅
銅は、鉄といっしょに血液をつくったり、エネルギー生成、活性酸素の除去などの働きがあります。
納豆1パックで、1/2~1/3日分の推奨量(※)に当たります。健康維持に必要な量として、納豆だけであれば【2~3パック】が適量ということに。
過剰症には、肝機能障害や関節障害などがあります。耐用上限量に達するためには納豆20パック以上となるので、通常の食生活では銅のとりすぎの心配はないでしょう。
※推奨量…ほとんどの人が必要量を満たす量のこと。
モリブデン
モリブデンは、体に必要なミネラルの1つで、穀類や豆類などに多く含まれています。鉄の働きを高めたり、糖質や脂質の代謝、体外への銅の排泄などに関わっています。
1日の推奨量に対し、納豆1パックで約5倍に相当。耐用上限量に対しては、【3~4パック】で達する計算に。過剰症として、血中の尿酸値濃度を高めて痛風症状を引き起こしたり、貧血などの銅の欠乏症になる可能性があります。
しかし、体外へ排泄される時間が早いことから、体内に貯蔵されている銅の量が極端に少ない場合以外は、問題になることはないといわれています。
セレン
セレンもミネラルの1つで、肉類・魚介類などに特に多く含まれています。細胞の老化や動脈硬化を予防する抗酸化作用があり、甲状腺ホルモンの代謝に関わっています。
1パックで1/3~1/4日分の推奨量に当たり、納豆だけであれば【3~4パック】が適量。耐用上限量は40パック以上となるため、納豆によるセレンのとりすぎは心配がないといえます。
ただし、セレンを多く含むほかの食品の食べる量によっては、過剰摂取になる可能性があります。過剰症には、慢性中毒として胃腸障害・爪の変形・脱毛・息がニンニク臭くなることなどがあり、急性中毒では呼吸不全・心筋梗塞・腎不全などがあります。
これらの栄養素については、あまり過剰摂取の心配がないことがわかりました。
これ以外に、日本食品標準成分表には記載されていませんが、納豆の原材料である大豆の特有成分やプリン体の摂取量についてもふれておきますね。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをする成分で、骨粗しょう症の予防や更年期症状の緩和に効果があるとされています。
大豆イソフラボンは、納豆1パックに約35mg含まれています。食品安全委員会が定める1日の摂取目安量の上限値は70~75mgとなっているので、納豆【2パック】に相当。
過剰症としては、乳がん発症や再発のリスクを高める可能性があるといわれています。このほかにも、人間に対しての有効性と安全性が確立していないことも、上限値を設定している理由となっています。
上限値については、各国の研究報告を検討したうえで、安全性を見込んでかなり幅を取った数値が設定されています。上限値を超えた量を毎日長期間摂取し続けるのでなければ、大豆食品の食経験が長い日本人の場合、リスクは低いと考えられています。たまに2パックを超えて食べる程度であれば、大丈夫かもしれませんね。
プリン体
プリン体は細胞を構成している成分で、あらゆる食品に含まれています。細胞がたくさん詰まっているレバー・タラコなどにとくに多く、ビールなどのアルコール飲料にも含まれています。
プリン体は吸収されると尿酸という成分に分解され、汗や尿などで排泄されながら、体内でもつくられて一定量が体内に存在します。肥満、過食、運動不足、ストレスなどが重なることで血液中の濃度が高まり、関節に溜まると激しい痛みを引き起こす“痛風”を発症することで有名です。
日本痛風・尿酸核酸学会の治療ガイドラインでは、プリン体の摂取量を1日400mgにすることが推奨されています。納豆1パックには約55mg含まれることから、納豆【7パック】までが痛風予防には適量といえます。ただし、プリン体の多い肉類・魚介類などを食べる量によっては、これより少なくする必要があるので注意しましょう。
結局、納豆を食べてもいい量は?
納豆を含む大豆製品の摂取目安量については、厚生労働省が生活習慣病予防のために推進する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の中に定義されています。
1日の摂取目安量は100gなので、納豆だけで換算すると【2パック】に相当。
いくつもの栄養素や成分から、納豆の1日の摂取目安量を検証してきましたが、この量であれば、どの過剰症も心配がなくなるといえそうですね!
納豆の栄養価に期待する人だけでなく、納豆の味が好みでたくさん食べたい人もいるでしょう。毎日安心して食べ続けたいのであれば、【1日2パック/100g相当】までを上限として取り入れていくことをおすすめします。
2パック以上食べるとしても、毎日ではなくときどき多く食べるにとどめたり、納豆に野菜やそのほかの食材を混ぜて増量した料理にアレンジしたりして、2パックでも満足感を得られるように工夫してはいかがでしょうか?ただし、体調に応じて減らすようにしたり、同じ大豆製品である豆腐や豆乳などを食べるのであれば、その分、納豆の量を調整するようにしてみてくださいね。
メリットを期待するあまり、その成分をたくさんとろうとするとリスクも伴う可能性があります。どの栄養素についてもいえることですが、同じ栄養素は納豆以外にも含まれていることを忘れてはいけません。特定の食品や成分に偏ることなく、幅広い食品を取り入れることを心がけましょう。
ぜひ、ご紹介した内容を参考に、納豆を含めた食事のバランスを見直してみてくださいね!